ヴラド三世 (EXTRA)

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ランサー (EXTRA・黒)

  • 真名:ヴラド三世
  • 誕生日:11月10日 / 血液型:不明
  • 身長:191cm / 体重:90kg
  • 属性:秩序・善
  • 性別:男性
  • 出典:史実
  • 地域:ルーマニア
  • イメージカラー:赤茶
  • 特技:焦土作戦
  • 好きなもの:鉄の規律、信仰 / 嫌いなもの:不道徳、不覚悟
  • 天敵:エルドラゴ
  • CV:江川央生

槍兵」のサーヴァント

略歴
Fate/EXTRA』ではムーンセルの聖杯戦争において、ランルーくんによって召喚された。
主人公の第四回戦の対戦相手。第一〜第三回戦の相手とは違い、猶予期間中は積極的に主人公と関係を持とうとしてはこない。
例外は、監督役である言峰神父が仕掛けた追加の試練(タスク)『狩猟数勝負(ハンティング)』時のみ。「凛ルート」にて登場。
Fate/Grand Order』ではイベント「超極☆大かぼちゃ村 ~そして冒険へ……~」にて登場。クレオパトラが乗っ取ったチェイテ城の門番として勇者エリザベートと主人公一行の前に立ちはだかる。
人物
黒い甲冑に血塗れのマントを羽織った、血に飢えた狂気の騎士。
信仰者であるが、そこから得た高ランクの「信仰の加護」スキルにより精神が変調をきたしており、マスター以外の人物とほぼ会話を成立することはできない。
マスターであるランルーくんのことを「妻」と呼び、彼女の「愛したものしか口にすることが出来ない」という在り方に、「同じヒトとして、吐き気をもよおさずにはいられない」と言いつつも、人としての矜持を保つ彼女の理解者として全肯定している。
月の聖杯戦争でサーヴァントとして現界した彼は自らの非業への怒りと人々の欲深さへの嘆きしかなかったが、彼女と言うマスターを得た彼は、そこに真実の愛を見たからこそ、嘆きは癒された。
狂信的なまでの信心からバーサーカー一歩手前と思われがちだが、優れた戦術感と厳格さを持ち、道徳を重んじる武人である。
能力
スキル「信仰の加護」により自己の信心から生まれる精神・肉体の絶対性を持っている。ただ、前述のとおり、人格の変調を来たしている。
四回戦までに戦ったどの相手よりも攻撃力が高く、その上マスターのコードキャストと連動し、呪縛の槍を使うなど連携能力も高い。
「槍兵」としては敏捷性が極端に低いが、高い耐久力を備えた上に『戦闘続行』スキルを持ち、全体的に隙が無いため、「オスマン帝国を退けた串刺し公」の名が伊達ではない事を思い知らされる。
『Grand Order』では「軍略」も高ランクで保有していることが判明しており、武人としての戦術力の高さは健在である模様。

ステータス

クラス マスター 筋力 耐久 敏捷 魔力 幸運 宝具 クラス別能力 保有スキル 備考
ランサー ランルーくん B A E A D C 対魔力:C 信仰の加護:A+++
戦闘続行:A
無辜の怪物:A
主人公 (Grand Order) B A E A D C 対魔力:C 信仰の加護:A+++
軍略:B
無辜の怪物:A

スキル

Fate/EXTRA』で使用するスキル。

反逆耐性
3ターンの間、自身の耐久が上昇し、GUARD時の攻撃力が3倍になる。
粛清の儀
自身に槍を突き刺し、相手に魔力ダメージを与えるスキル。
残りHPが少ないほど与える魔力ダメージが増える。
呪縛の槍
空中に飛翔し、空からの落下と同時に頭上に振りかぶった槍の鉄槌を相手に振り下ろし、相手に筋力ダメージと呪いのバッドステータスを与える。

宝具

串刺城塞(カズィクル・ベイ)
ランク:C
種別:対軍宝具
レンジ:0〜50
最大捕捉:三百人
由来:生前自国の貴族などに粛正として行い代名詞となった「串刺し刑」。
周囲の地面から無数の槍を生やし敵を処断する、魔槍から放たれる呪いと鉄槌の拷問魔城(ドラクリヤ)。敵対する敵兵全てを対象とするため、一対多で真価を発揮する宝具。
その由来からか相手が持つ不義・堕落の罪に応じて痛みを増すという特性を持つ。粛正の対象、『逃走』『不道徳』『暴力』を犯している相手ほど破壊力が増加する。しかし犯罪経歴のない主人公 (EXTRA)にその効果はなかった。
ゲーム的には、ランサーの持っていた槍が上空に浮かんでいくと同時に周囲に無数の槍を生やし、敵の足元に出現した巨大な刃とランサーの持っていた槍による同時攻撃を行う。通常ダメージに加えて、生贄効果による防御不可能の追加ダメージを与え、与えたダメージに応じて自身のHPを回復させる。
『Grand Order』では自身に無敵貫通状態を1ターンに付与した上で、敵単体に超強力な〔悪〕特攻攻撃を行う。その名の通り属性「悪」に対する特攻効果であり、悪属性が多いバーサーカーアヴェンジャーに対して威力を発揮しやすい。有利属性のアーチャーには悪属性は少ないものの、回避スキル持ちが多いため無敵(回避含む)貫通効果が効いてくる。

真名:ヴラド三世

ヴラド三世。串刺し公。ヴラド・ツェペシュ。
ルーマニアに名高い英雄。ワラキアの独立をトルコの侵攻から保った、キリスト教世界の盾とまで言われる高潔な武人。
国土を荒廃させた元凶である貴族を粛清、敵対するトルコ軍2万を串刺し刑とする。だがその厳罰主義を貫いた事で配下に背かれ、ワラキア貴族により暗殺される。享年46歳。
ブラム・ストーカーの小説「ドラキュラ」のモデルとされる人物で、現代における「怪物」の代名詞と言えるまでになった、創作が現実を捻じ曲げてしまった最大のサンプルケースと言えるもの。
ただし、その全てが創作者の傲慢とは言い切れない。
ルーマニア人にとっては英雄だが、敵対するトルコ側からは悪魔の如く嫌われた。
1462年、トルコの侵略に対する防衛戦において、ヴラド三世最大の串刺しが行われる。
トルコ軍15万に対し、ルーマニア軍1万。ヴラド三世は徹底した焦土作戦とゲリラ戦を指示。民衆をカルパチア山脈へと逃がし、首都ブカレストを空にしてトルコ軍を迎え撃つ。
その際、ブカレストの周囲に築かれたのが、トルコ兵の2万を越える串刺しの野原である。
長さ3キロ、幅1キロに及ぶこの串刺しの野原の異様さと、死体から漂う異臭は、勇猛であったはずのトルコ軍の士気を完全に挫く。「征服者」と呼ばれたメフメト二世すら、
「私はどんな人間も恐ろしくないが、悪魔だけは別だ」
と残し、軍を引き上げたという。
残忍にして合理的。目的のためには手段を選ばない。普通の人間以上の視野の広さを持った天才的な武人。
だがしかし、理解者には恵まれなかった。
もともと、串刺し刑自体は当時において珍しい刑罰ではなかった。だがそれは、対象が一般庶民に限られていた。
ヴラド三世がルーマニア公に即位した際、堕落と腐敗をほしいままにしていた貴族のあまりの姿に彼は憤慨し、大粛清を行う。その際、本来貴族には適用されなかったはずの串刺し刑を、貴族にも容赦なく用いた。
これは、貴族と庶民が厳しく分かれていた当時のワラキアの民に、相当のショックを与えたと言われる。
これ以後、串刺し刑は彼の十八番となる。法王庁に届け出のあった記録によれば、彼の生涯における串刺し刑の刑死者は、のべ10万人に達するという。
ちなみにこの数字に、ワラキア統治における刑罰とは関係のない、戦争における敵国人の串刺し刑は、含まれていない。
ヴラド公は主への愛を信じ、不正をただす事で貴族の責務を果たそうとした。しかし特権階級の豊かさにおぼれた領主たちは彼の清貧さを嫌い、キリスト教世界を救った武人を策謀によって処罰したのである。

関連

ドラキュラ
ヴラド三世の別名とされる「ドラキュラ」とは、彼が愛用した通称のこと。厳密には、「ヴラディスラウス・ドラクリヤ」。ローマ式の署名。「竜(ドラクル)の息子」の意。彼の父、ヴラド二世が神聖ローマ帝国のドラゴン騎士団の一員であり、「ドラクル(竜公)」を名乗っていたことに由来する。「ドラクル」の末尾に、「子」を意味するaの発音をつけ、「ドラキュラ」となる。
ドラゴン騎士団の目的はイスラム勢力からキリスト教世界を防衛することであり、ヴラド三世がドラキュラを名乗ったのは、父の意志を引き継ぐという意思表示だった可能性もある。
ゲリラ戦術
ヴラド三世がキリスト教世界における初めてのゲリラ戦術(パルチザン)の組織者だとの意見もある。
無辜の怪物
生前の行いから生まれたイメージによって、過去や在り方をねじ曲げられた怪物の名。能力・姿が変貌してしまう。
今やヴラド三世は世界的に有名な怪物『ドラキュラ』という名称の方が世に広まってしまった。
精神に異常を抱えながらも武人としての誇りと人としての矜持を持つランサーだが戦闘後の浮遊や魔力や呪いによる攻撃を見る限り、このスキルの影響で確実に人外に近づいてしまっている。

登場作品と役柄

Fate/EXTRA
第四回戦の対戦相手(いわゆる凛ルートにて登場。ラニルートには登場しない)。
ちびちゅき!
ハンバーガーショップ「レンレンバーガー」の店員。ちゃんとエプロンも付けているが、出される料理が何だか怖い。
Fate/Grand Order
  • 〔ランサー〕キャラクターデザイン:ワダアルコ / 設定作成:??? / レア度:☆4
『超極☆大かぼちゃ村 ~そして冒険へ……~』の開催に伴い実装。

人間関係

Fate/EXTRA

ランルーくん
マスター。「妻」と呼び、彼女が望むままに殺戮を行うこととなる。
セイバー (EXTRA・赤)
彼女から「貴様ら共に、バーサーカーなんじゃないか?」と評される。また彼女の生前の行いから互いに相容れない存在と認めている。
ランサー (CCC・赤)
彼が召喚されなかった時のランルーくんのサーヴァント。クラスやスキルにこそ共通点はあるが、容姿からマスターとの仲まで似ても似つかない。
また、おかしくなってはいてもれっきとした英雄であるこちらに対し、彼女は反英雄である。
また、ランルーくんを殺害した事もあってか、彼女を憎んでおり、『Fate/Grand Order』のマイルーム会話では憤怒を抱いている。

Fate/Grand Order

主人公 (Grand Order)
マスター。「友」と呼ぶ。

その他

ヴラド三世 (Apocrypha)
「故国を守った君主」としての側面を抽出して召喚されたヴラド三世。
彼と比較すると裁縫の腕では一歩譲るが、料理の腕では勝っているとか。

名台詞

Fate/EXTRA

「――――奇跡だ。
 奇跡だろう。奇跡である。奇跡でなくてなんと口にすればいい!
 そうであろう、我が宿敵よ! なんという運命、なんという試練なのか!
 我が生涯を捧げた伴侶には初夜にして裏切られ!
 我が魂を捧げた信仰には、斬首をもって報いられ!
 そう、かようにも我が信仰は砕かれた! 神の愛を見失い、神の愛を否定され、残されたのは堕ちるばかりの我が名声!
 だが――! 無辜の怪物と創作されながらも、この手は、ついに真実の愛を得た!
 そうであろう、妻よ! 過食にして拒食のマスター。"真に愛したモノしか口にできぬ"哀しき女(ひと)よ!
 貴女に出会えただけでも、我が槍は滾り狂うというのに、おお……!
 見ろ、あの極上の供物たちを! 神はさらに稀なる機会を与えてくださった!
 気高き眼差しに空に浮かぶ月さえ霞む。そなたこそオレが求めてきたミューズ!
 そのしなやかな肢体をこの槍で貫く! 貫かずばおられぬ! 何故なら――
 そう、何故なら。――おまえたちは、美しい。
 真理を教えよう、好敵手よ。葬儀において神父は語る。故人は神様に愛されすぎて天国に召し上げられた、と。
 然り。愛とは死だ。死こそが愛だ。俺は愛するが故に――おまえたちを殺したくて仕方がない!
 今ここで、血祭りを繰り広げてもよかろう? 我が妻よ!」
初登場。途中、ランルーくんが茶々を入れたりもするが、一気にまくし立てる。
尚、「ミューズ」の部分は無銘をパートナーに選んでいると「アポロン」になる。…そして一気に怪しい雰囲気になる。
「おお……なんと惨たらしい。このような運命、このような非業を、なぜ主は許したのか。
 そう思わぬか△△のマスターよ。世は根本からねじれている。愛するものしか口にできぬなど――
 なんと。なんと純粋な在り方である事か!
 この女は真実、その信仰を守っている! この世の誰に! 誰が! この愛を笑えようか!
 その気高さの前では、我が受けし信仰の加護の全てを賭けても惜しくなどあろうか!
 ふはは、待っているがいい妻よ! そなたの満たされぬ胎内はらに、ようやく肉が戻るのだ!」
聖杯戦争参加の目的を問われたランルーくんが、主人公に答えたのを受けての発言。
「……なんと。この美しさを前にして、怪物という貴様は何者か。
 人はみなおぞましいものだ。弱く、汚く、裏切りを知らない人間は、そも人間ではない。
 その事実を踏まえた上で、なお我が妻を怪物というのなら。その証をたてるがいい、戦士よ」
「おお……! なんと痛々しい! 貴様らの批評こえ蝿音なばえのようだ! 時空を越えてすら、我らを怪物ドラキュラと蔑むか!
 我が信仰の真実も! 我が妻の過食あいの真実も! とうてい理解されぬこの結末!
 然り! 然り! 然り! 世は根本よりねじれておる!
 まっとうな良識なぞ、所詮、人には余る品物よ!」
「怪物」というキーワードに反応して。今までとは違い、暗く沈んだ声音で。
「そうであろうよ。愛するものしか口にできぬ女よ。その姿にこそ、オレはかつて失った愛を見た。
 望むままに愛をむさぼるがいい、拒食の君よ。
 生きるために食う獣などとは悲哀が違う。
 生きる余興に愛する人間とは濃度が違う。
 アナタに虚飾はない。獰猛な欲求。偽りない求愛。――あまりにも幼い、破綻したその恋慕。
 同じヒトとして、吐き気をもよおさずにはいられない。ああ、だからこそ――
 ――愛に狂え。
   その姿は、美しい」
決戦直前。全ては「愛」のために。
「然り。獣の数字、愛を知らぬ暴君よ、我が槍を以て煉獄に逝くがよい!」
対セイバー決戦開始時台詞。彼女の真名をに見抜いた上で槍を向ける。
「不義不徳のヤツバラどもよ! 無実無根の自覚はあるか!?」
「妻よ! これなる生贄の血潮をもってその喉を潤したまえ! 串刺城塞カズィクル・ベイ!」
宝具解放。「串刺城塞」。魔槍から放つ、正義の一撃。
「いえ、それには及びません。この身は貴女に愛される資格がない。怪物はこのまま消え去るのみ。
 ……ふふ。食べる食べると望みながら、その実、倒した相手を一口もしなかった哀しい女よ。
 これだから―――人間というものは、美しい。正気を失いながらも、まだ、そなたは人間だった。
 その魂にはまだ救いの余地があるのです。はは……故に、あなたは煉獄へ。我が体は、地獄に落ちるが定め。
 それでは、しばしのおいとまをいただこう……」
敗北後。その最期は武人らしく。

Fate/Grand Order

「地獄の具現こそ、不徳の報いに相応しい! 『串刺城塞カズィクル・ベイ』!」
宝具開放。不徳を犯した者を裁く、地獄の具現。
「嫌いなものだと? 語るまでもなかろう! 欲に溺れ、尊厳を嗤い、欺瞞すら無自覚となった、恥知らず共が我が獲物である!」
マイルーム会話「嫌いなもの」。マイルーム会話では穏やかなものが多いが、コレに関しては怒りに満ちた声色で言い放っている。
「聖杯は唯一無二のもの。たとえ奇跡を宿そうと、贋作に価値はない。……友よ、そなたに真心あらば、我が身に捧げる愚は犯すな?」
マイルーム会話「聖杯について」。その信仰心ゆえに、偽なる聖杯は認めない。
「何? 以前と姿が違う? では、確かに別の英霊なのだろうよ。
 そなたが知っている男は、君主として国を守った男。そして私は……武人として敵を殺戮したものだ」
マイルーム会話「絆Lv2」。「王としてのヴラド三世」と「武人としてのヴラド三世」は別の存在であると語る。
「私が吸血鬼だと? フッハッハッハッハツ……それは愉快、愉快なことだ、友よ!
 だが間違いではないぞ?贖いに血を求めた以上、我が身は紛れもなく人ではない何かであろうよ」
マイルーム会話「絆Lv3」。 もう一人の彼であれば激昂するであろう問いに、高笑いを上げながら肯定する。
「怪物」であることを否定しないこの台詞に、両者の精神性の違いを感じられる。
またこれにより、『EXTRA』では「怪物」のキーワードに厳しく反応していたのは、自分ではなく自分のマスターを蔑まされたからということも分かる。
「私は人の愛を見失った男だ。串刺し公とは人を弾劾する獣の名だ。
 だが、一度ここではない彼方で、美しいものを見た気がする。あれは……深い……海の底の記憶だったか……」
マイルーム会話「絆Lv4」。月の海での記憶。かすかに脳裏に残る、愛した人の姿。
「正しさを求め、裁きを求め血を求めた。我が人生はこの夜のようなもの。あらゆる罪科を飲み込み、夜明けとともに消えゆかねばならない。
 友よ、そなたの戦いに罪はない。それらはすべて、私が地獄に持ってゆこう」
マイルーム会話「絆Lv5」。地獄に行くべきは自分のみと、『EXTRA』での最期を彷彿とさせる言葉を語る。
「我が側面、我が真実とすら契約していたか。
 フッ……確かに、アレは静かに狂っているな。我が事ながら融通の利かぬ男よ。苦労を掛けるな、友よ」
もう一人のヴラド三世所持時。自分の側面である姿を見て、冷静な判断を下す。
「あの女は気に喰わぬ……カーミラと言ったか。
 生きるために血が必要だと語りながら、その中身は不老への渇望のみ。我が妻の前に立てば、恥辱から灰になろうよ」
カーミラ所持時。
ここでいう「妻」が誰であるかは定かではないが、とある世界で自分が仕えたマスターは『生きるために「愛」を求めた人』であった。それと比較すれば、彼女の在り方を軽蔑するのもやむなしか。
「エリザベート・バートリー……何故か、あ奴を見ると我が槍が怒りで震える。
 だが同時に「許せ」と、響く女の声がある。この声は……誰のものだったか」
エリザベート・バートリー所持時。
とある平行世界での出来事が彼の霊基たましいを震わすのか、怒りを露わにする。しかしどこかで聞いた彼女の声が竜の少女を許してほしいと訴えかけている。
あの顛末は少女の裏切りによるものだったが、彼女自身は少女を恨んでいないことが伺える。
「だが。この姿のおれは貴様には特に厳しい。貴様が犯した罪は数多い。
 その中の一つに、英霊となった吾にとっては決して見過ごせぬ罪がある。
 ―――死をもって償え、とは言わん。償いの場など与えぬからな。」
「王たる吾は鷹揚にして苦悩する人間であるが、武人たる吾には一切の邪悪を赦しはしない。
 不義不徳、民を玩弄し、無知である事を当然だと考えた殺人鬼よ。
 貴様の罪は百年経っても醒めぬ悪夢、貴様の悪は歴史に刻まれし罪科である。
 何人も訪れぬ暗闇に還る時だ。では―――徹頭徹尾、みなごろしである。」
ハロウィン・カムバックにて。門番として立ちはだかるヴラド三世は、エリザベートの罪を糾弾する。
『CCC』で突き付けられた「永遠に救われない」という事実。どれだけ善行を積もうが、どれほど時が経とうが、犯した罪科の重みは決して消えることはない。
何より、彼にとって許せぬ罪をエリザベートは犯した。それゆえに、彼は断罪の槍を掲げる。
「そうだ。貴様は罪を犯した。世界は貴様のあの罪を数えぬだろう。
 貴様の霊基にも、あの罪は刻まれてはいないだろう。何もかもが無かった事になった世界での話だからな。
 ……だが、吾は忘れる訳にはいかぬ。
 我が妻。我が愛。我が光の最後の理性を、貴様は否定したのだ。
 あの美しい女のために、吾は貴様を赦さぬ。たとえ、あの女が貴様を赦すと言ってもな―――」
同イベントにて。ヴラド三世にとって許せぬことを、自分がしてしまったのかもしれないとエリザベートが自問した際の言葉。
何もかもが無くなった出来事であったとしても。全てが忘れ去られた世界のことであっても。
ただ、己がマスターの『愛』を『愛した』が故に。彼の魂は決してそれを忘れない。

メモ

  • 「ワラキアの夜」の別名で呼ばれるタタリが最初に顕現したのはルーマニアであり、彼の地に根付いていた「ヴラド三世」の伝説を依り代にしたという。
  • 武内氏の描いた初期デザインでは、足元近くまである長いマントを羽織っている。
    しかしながら、PSPというハードの限界か、3Dモデル製作の都合上「揺れ物」禁止になってしまい、現在のようなストール風の短いマントになってしまった。他に、作画のワダアルコ氏が武内氏デザインの鎧を気に入り、良く見えるようにしたかったという理由もある。
  • 敏捷が高いことが基本的な要素であるランサークラスにおいて、その敏捷はまさかのE。その代わり耐久はAという頑丈さを誇る異端者。国防戦を生涯の大半に費やした人物なのである意味妥当といえる。
  • また、それまでのクー・フーリンディルムッド・オディナによる「ランサークラスは幸運E」というジンクスを打ち破りDであった点や、マスターとは基本険悪な関係で自害を命令され聖杯戦争から脱落した前述二名と打って変わり、自ら槍(杭)を身体に刺して自害する技を持っている、マスターのランルーくんとは常軌を逸脱しているが和気藹々な様子から「言われずとも自害する方のランサー」「ランサー一の幸せ者」等と言われたりしている。
    • 小説版『Fate/Apocrypha』では同名のヴラド三世があまりにも悲惨な最期を遂げてしまったため、こちらのランサーの幸福さがより際立っている。
  • コミックス版ではなんと序盤で登場。マスターのランルーくんと共に予選突破後にあえて予選会場に戻り、残っているマスター達を狩りはじめた。その際シンジに言われた「化け物」という言葉に激怒し、宝具まで発動している。
  • ドラマCD版についても序盤で登場し、ガウェインと交戦を果たすも流石に相手が悪かったのか、何とか斬り合うも宝具も通用せず、転輪する勝利の剣の一撃で敗北した。
    • こちらでは予選時点で自身のマスターがユリウスによって殺されており、そのために暴走してしまっている。なお、マスターからの魔力供給が途絶えているにも関わらず宝具を幾度も使用し、さらにはガウェインと打ち合うことができたのは、マスターの死に際の祈りが令呪として発動したことが原因と推測される。
  • ランサーというクラス、ランルーくんをマスターに持つ、後に有名な吸血鬼のモデルとなった、竜の息子(娘)でありスキル「無辜の怪物」により容姿を歪められている、などなどエリザベートとの共通点は驚くほど多い。
    • しかし片やマスターの信念に殉じ、片やマスターを裏切って切り捨てたという決定的な違いがある。両者が初対峙した『Grand Order』ではエリザベートに対して激しい憤怒を向けている。
  • 生前は領主としては落ち着きのない性格だったようで、料理・裁縫・家畜の世話を自らこなしたと言う。サーヴァントとして現界した場合、裁縫の腕ではヴラド三世 (Apocrypha)が上回るが、料理の腕はこちらの領分とのこと。
    • これは2017年のバレンタインイベントで本人が語ったことだが、チョコレートのお返しにくれたハンバーガーを見る分にその腕前は確か。実際美味しい。「謝肉祭」と名付けられた概念礼装から、ランルーくんを思い浮かべたプレイヤーも多かった様子。
      それにしても、金星料理としか呼べないようなテロい料理スキルであるエリちゃんとはどこまでも正反対である。
  • 属性はまさかの秩序・善。性格がぶっとんでいるのは「信仰の加護」と「無辜の怪物」のスキルのせいであろう。また意図的にマスターに合わせた口調にしている節も見られる。
    • 戦いとなると鬼人の如き苛烈さを見せる彼だが、『Grand Order』でのマイルーム会話ではマスターに対して落ち着いた話し方をしている。
      『EXTRA material』にも記述があった彼の穏やかさが感じられる一面である。
  • A+++ランクの「信仰の加護」を持つほどの高い信仰心ゆえか、偽なる聖杯を認めないサーヴァントの一人。王としての側面を持つヴラド三世には「吸血鬼ドラキュラとしての汚名を雪ぐ」という聖杯にかける願いが存在したが、こちらのヴラド三世は贋作の聖杯を使用することすら拒んでいるのが対照的である。
  • 『Grand Order』での会話では「妻」という言葉が度々出てくるが、ここで言う「妻」が生前の妻であるか、元マスターであるランルーくんであるかは定かではない。カルデアでは並行世界の記憶が薄れているケースが多いこともあり、彼自身も元マスターの記憶が定かではない状況もあってか、「妻」と明言されている部分は生前の妻のことを指しているのではないかと推測されることがある。ただし台詞の中にはランルーくんを意識していると思われる発言もあるため、確実なことは分かっていない。なお特異点においては並行世界の記憶が戻ることがあるらしく、明らかにランルーくんを指して「妻」と呼んでいる場面が存在する。

話題まとめ

月の記憶
  • 『Grand Order』のイベントにて、ヴラド三世がエリザベートの犯した罪を糾弾するシーンがある。
    マスターを巡る二人の因縁は以前よりファンの間でも話題に挙がることが多かっただけに、公式で取り上げてくれたことに喜ぶユーザーの声は多かった。
    しかしそれと同時に、一つの疑問点が浮上することになる、それは「なぜヴラド三世は月の裏側のことを知っているのか」ということだ。
    • ヴラド三世の語る通り、『CCC』の物語はムーンセルに記録されない「月の裏側」での出来事で、事態が収拾された時点で「全てが無かった事になった」世界での話である。よってエリザベートがランルーくんを殺害したという「事実」も世界には忘れられており、ヴラド三世が事の顛末を知るのは少々難しいと言わざるを得ない。
      ただし「全てがなかった事になった」とはいえ、カルナのように月の裏側でのジナコを覚えているケースもあるので、これだけで判断するのは早計だろう。
    • そもそもマスターを軸として考えた場合、「ヴラド三世とエリザベートには接点が存在し得ないのではないか?」という推測が上がっている。
      『EXTRA material』の記述によれば、ランルーくんのサーヴァントとして『EXTRA』ではヴラド三世が召喚されたが、『CCC』のようにBBが存在してしまう歴史においてはエリザベートが召喚されることが確定するという。つまりランルーくんがヴラド三世を召喚した世界では、エリザベートがランルーくんを殺害していないため因縁自体が生じないのではないか、ということである。
      一応、サーヴァントのデータは聖杯戦争終了後にムーンセルに戻るため、並行世界まで記録するムーンセルのデータベースをヴラド三世自身が閲覧することができれば話は変わってくるのだが、ここで上に述べた「ムーンセルに記録されない月の裏側」という背景が問題となる。エリザベートがランルーくんを殺害した事件は「月の裏側」での出来事であるため、ムーンセルのデータベースにも記録されない事柄を知る術がないのである。
  • 以上の点から、ヴラド三世が月の裏側の記憶をどうやって知ったのかが議論されるようになった。これについては『Grand Order』特有の記憶の曖昧さが招いたのか、あるいは別の手段でヴラド三世が事の顛末を知ったのか、はたまた単なるファンサービスなのか、定かではない。
    • 確実なことは、ヴラド三世がマスターへの『愛』を失っていないという事だけである。『CCC』でアンデルセンが語った三竦みで語るならば、ヴラド三世が抱く彼女への『愛』が、全てがなかったことになった『現実』を歪ませた、のかもしれない……。

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