フラット・エスカルドス

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フラット・エスカルドス

  • スペル:Flat Escardos
  • CV:松岡禎丞

時計塔に学ぶ青年。偽りの聖杯戦争において、バーサーカーのマスターとなる。

略歴
地中海のモナコに居を構える魔術師の家系、エスカルドス家の嫡男として生まれる。過去に類を見ない魔術回路と、それを制御する才能を具え、年若くして時計塔に入学。期待の神童として迎え入れられるも、その才能以外の部分、魔術師として必要欠くべからざる合理的思考を持たず、魔術師としてあるまじき気性の緩さを持ち合わせていた彼は多くの教師に胃痛を訴えさせ、時計塔内を転々とたらい回しされた末、人気講師ではあるが若輩のロード・エルメロイⅡ世の下へ『貴方しかいない』と押しつけられ、エルメロイ教室に所属することとなった。
幸いにも、学生の隠された能力を見抜き鍛え上げることにかけては随一の名講師に指導を受け、魔術の才能という意味では他の追随を許さぬほどに成長した彼だが、肝心の性格的な問題はいっこうに改善されないため未だに時計塔を卒業することが出来ず(『strange Fake』時点では最古参の弟子)、エルメロイⅡ世を悩ませ続けている。
「ちょっと興味があったから」と魔術協会幹部の極秘会議を盗み聞いた彼はアメリカのスノーフィールドにて行われる聖杯戦争への参加を望み、エルメロイⅡ世に厳しく制止されながらも、双方の勘違いによって貰い受けたゲーム会社の懸賞品「ジャック・ザ・リッパーの銘入りナイフ(レプリカ)」を手に単身渡米。首尾よく聖杯からマスターとして選ばれ、真剣に聖杯戦争に関わる者が聞いたら憤死しそうな方法でサーヴァントの召喚を果たし、契約する。
人物
外見はいいところのお坊ちゃん風の美青年。表情のせいか、若干幼く感じさせる。性格は、一言で言えばアホの子。もう少し詳しく言えば、才能だけは異様にあり余っているのが始末に悪いアホの子。ただし普通の魔術師とは大きく違って性格は概ね善良で好意的であるため、良くも悪くも魔術師らしくない天才(天災)魔術師。
歴史ある魔術師の家系に生まれ、飛びぬけた魔術の素質とそれを活かす才能を持ち、魔術師としての資質は類を見ない程に高い。しかしながら、魔術師としても一般人としても型破りで破天荒な自由すぎる発想や行動力の持ち主でもあるため、常識的にはあり得ないような珍事件やトラブルをあちこちで引き起こしており、いつでもどこでも彼の周囲にいる人物を振り回し続けている。
一方で、倫理観や思考回路、性格などが多くの魔術師のような醜悪な方向には歪んでいない、家名や出自などで他の魔術師やサーヴァントなどを見下したりする事も決してしないなど、基本的に善良な好人物であるため、他の魔術師のように魔術を用いて、または魔術の為に人や生物を平気で犠牲にしたり恐ろしい野望を抱くような事はそうそうしない。ただ、一般常識が少々欠けていたり他人と感性がズレており、人を選ぶようなフランクで軽すぎる言動や、魔術や魔術師を冒涜していると取られても仕方ない言動などを悪気なく取ってしまうため、上手く付き合える人が限られる人物である。
彼の魔術師としての特性はピーキーであり、言葉で表すなら『魔術回路と魔術センスこそ一流、なれど魔術師としての心構えが完全に欠落している』。両親からも全く底が見えない才能と典型的な魔術師像から逸脱した気質に恐怖され、時計塔に送り込まれたのも、エスカルドスの麒麟児のお披露目としてではなく、厄介払いをするような形で追い払われたため。
時計塔でも、自らの利権を組み込もうと目論んだ講師達も、彼の気質がどうしても矯正できないことで徐々に彼を疎み、プライドを傷つけられて最終的に追い出してしまい、エルメロイⅡ世と出会うまでたらい回しにされてしまう。[1]
また、死徒に関して「効率が悪い」と言い切ったり、人の命を地球より重いとしつつも自分を襲撃した魔術師たちを「地球を飛び越えるための大事な部品」「殺したら可哀想だし勿体無い」と言うなど、魔術師でもただの人間でもない得体の知れない一面を覗かせている。
今回の聖杯戦争に参加したがる理由も「聖杯を見てみたい」「英霊と友達になりたい」といった軽いにも程があるものだけで、それでいながら、サーヴァントの召喚触媒(と勘違いした模造ナイフ)を手に入れるや否や、命の保証など一切ない死地へと躊躇なく、準備も予備知識もろくにない状態で飛び込んでいくほどの無茶な行動力を持ち合わせているのが本当に始末に悪い。
能力
「天恵の忌み子」「天才馬鹿」などなどと渾名される通り、理想とされる魔術師像からはかけ離れた性格を度外視すると、魔術の才能は時計塔の全学生の中でもトップレベル。
ロードや教授陣も加わっている魔術協会幹部による極秘会議の内容を、幾重にも張り巡らされた結界をものともせず、「試しにハッキングしてみたら上手くできた」と干渉したことすら悟られずに傍受する、自らの手に宿った令呪を少し調べただけで大体の仕組みを把握する、他人が使役している使い魔とのラインに介入して視覚情報を覗き見る、果ては聖遺物でも何でもない玩具同然の模造品を「魔力の流れとかいろいろ弄ってたら『繋がっちゃった』」で触媒とし、白昼堂々、儀式の祭壇も呪文の詠唱も無しでサーヴァントの召喚に成功する、など、真面目に魔道を追求している者や聖杯戦争の秘匿性や前準備の難しさを良く知る者が見たら確実に激怒するか絶句するレベルの所業を当たり前のように、しかも全く躊躇なくやってのける。[2]
魔術的な構造を感覚的に読み解く能力を有しており、クラスメイトや教授たちの力量を正確に把握するのは勿論、一目見ただけの私服姿のギルガメッシュやジェスターの正体を看破し、街を覆うペイルライダーの魔力の出所を探り当て、スノーフィールド全域に張り巡らされた監視網を辿って警察署長やファルデウスの工房を割り出すなど、おおよその魔術に関する事柄を精緻に把握・解析することが可能。
そのレベルは彼自身の発言を参考にするなら、「感覚の鋭い魔術師なら気づく」二段階前、魔力計すら感知できず、勘の凄く鋭い英霊や死徒でもなければ気づけないような異質な魔力の流れに気づけるような段階にあり、天才という呼び方すら生温く、文字通り「超人じみている」「人間を辞めている」レベルである。
8歳の時点で、エスカルドス家が300年前に取り組みはしたが結果的に『不可能』だと判断され死蔵されていた研究を言語化も再現性もなく、感覚的に弄っただけで完成させている。
エイプリルフール企画でも「自分じゃなくて召喚対象が使うのなら禁呪じゃないよねと召喚した何者かに固有結界を使わせる」「発言をtwitterに投稿する魔術を教授で無断実験する(二番目の式は暴走、周囲の人間も無差別に投稿されるように)」等と色々な意味で弾けている。
ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』において判明した魔術属性は「空」。属性も希少なら魔術のスタイルも極めて異端で、世界各地の魔術の「いいとこどり」をして即席で作った魔術基盤によりそれを「なぜか通してしまう」混沌魔術と呼ばれるもの。ひとつ魔術を使うたびにCPUを設計図から作り直すような不安定で無駄な魔術のはずだが、術式の扱いだけなら色位並というその才能で使いこなしている。特に他人の魔術に干渉する分野には異常なまでの才覚をあらわしており、魔術のベクトルを弄って術者本人に直撃させたり、大掛かりな儀式魔術の構成を見抜いて欠点にダメ出しするなど、「一般的な魔術師」からしたらこの上なく屈辱的で禁忌に近い事を悪気なく、そしていともたやすくやってのける。
結界のような大規模かつ複雑な術式に対するハッキングも得意としており、他人の設置した魔術工房などであっても触れた部分から新たな術式を流し込むことで己の魔力を浸透させ、「結界の製作者のものである」と感知機能を騙しながら綻びを修復しシステムを乗っ取ってしまう。スノーフィールドの警察署でこれを行った時に要した時間はわずか4秒程。
ただし弱点がないわけではなく、本人の適正というか気質その他と相まって格闘戦能力が非常に低い。肉体を魔術で強化していてもそれを戦闘方面に運用するセンスがなく、結果として物理で殴られるとあっさりやられてしまう。エルメロイⅡ世が日ごろ、彼をとっちめるのにアイアンクローなどの肉体言語に訴える理由もそこにあり、「双貌塔イゼルマ」の劇中では魔術など併用もしていない蒼崎橙子のハイキック一発で沈められた。

登場作品と役柄

Fate

Fate/Apocrypha
絶対領域マジシャン先生の弟子。ライネスが連れている水銀メイド・月霊髄液や14騎のサーヴァントが入り乱れる聖杯大戦に興味津々。
Fate/strange Fake
ロード・エルメロイⅡ世の不肖の弟子。
特に深い理由も切なる願いもないままに、スノーフィールドにて行われる偽りの聖杯戦争へとお気楽に飛び込んでいく。
ロード・エルメロイⅡ世の事件簿
こちらの世界でもロード・エルメロイⅡ世の教室の学生。同年代で少しだけ先輩のスヴィンからは目の敵にされつつも、エルメロイ教室のツートップとして目覚ましいコンビネーションを発揮する。

Fate関連

氷室の天地 Fate/school life
単行本7巻店舗特典『植物魔術のひみつ』内でうっすら言及される。どうやらこの世界でも駄々漏れの才能を妙な方向に炸裂させているらしい。
その後、単行本10巻特装版に付属の『Himten/material』において「沙条綾香の兄弟子」として存在が確定。ヴォイニッチ手稿の件では植物学科ユミナを卒倒させたらしい。

その他

TYPE-MOON エイプリルフール企画
2015年のエイプリルフール企画に参加。「発言をTwitterに自動投稿する魔術」を開発し、無断で教授を使って人体実験する。
だが、その行いがひとつの因縁に決着を付けるきっかけとなる。
ちびちゅき!
団子盗難事件に触発され、自分も探偵をやってみようと思うが、結局ジャック(Fake版)をロード・エルメロイⅡ世に変身させて探偵役を振り、自分は助手役をやることに。

人間関係

Fate/strange Fake

バーサーカー
フラットが師から勘違いで譲り受けた懸賞品「ジャック・ザ・リッパーの銘入りナイフ(レプリカ)」を触媒として呼び出したサーヴァント。
本来ならば血に飢えた狂気の殺人鬼として現界するはずだったが、奇跡的に「狂戦士」のクラスの狂化補正と元からの狂気が打ち消し合った結果、正気を保った紳士的なパーソナリティを具えることとなった。
「謎の殺人鬼に関わる伝承が具現化したもの」という極めて特殊で変わった出自ながらも、マスターがそれに輪をかけて出鱈目な人物のため、つい真面目にツッコミサイドに回ってしまう。
ロード・エルメロイⅡ世
時計塔の名物講師にしてフラットの恩師。数多くの教師が匙を投げた天才的問題児の面倒を根気よく見て指導を与え、とりあえず魔術の才能という面では文句なしのレベルにまで育て上げたが、相変わらず変なことばかりしてるフラットにはほとほと手を焼いており、時には胃痛を訴えることも。
フラットが『絶対領域マジシャン先生』という二つ名を奉ろうとした時は「死ね!」と一蹴。
沙条綾香
『氷室の天地』『strange Fake』世界では妹弟子。彼女の所持していた稀代の奇書を「ちょっと見せてー」と強奪し、これまで誰一人として解読に成功しなかったその内容を解き明かして色々と伝授したとかなんとか。
繰丘椿
ライダー
スノーフィールドの街全体を包み込むように充満した異様な魔力から彼等が引き起こした異変に気が付き、椿が入院する病院にバーサーカーを送り込む。
ロッコ・ベルフェバン
エルメロイⅡ世の前には彼に師事していた。実力そのものは高く評価していたものの、とても変わった気質をした彼はとても手に負えず、半ばエルメロイⅡ世に投げ出すような形で彼を放逐してしまった。
しかし、実際はその気質を根気強く矯正を試みようとしたが、性格とは別の部分に首を傾げており、エルメロイⅡ世の元に行けば彼の望むことを学ぶことが出来ると提案していた。
オーランド・リーヴ
スノーフィールドの住民を侵蝕している魔力の源、椿のサーヴァントへの対策をとるため、街中に仕掛けられた魔術的な監視網を辿って見つけ出した彼に共闘を持ちかける。
他に手段が一切ないと断言できる状況でもなければ無力な少女を手にかける選択はとらない、と言い切ったその人間性を見込んで、時計塔のエルメロイⅡ世との交渉を仲介した。
ハンザ・セルバンテス
吸血種との戦闘シーンを目撃したことで、その体の大部分が機械仕掛けであることを見抜いて興味津々に話しかける。ハンザの方も「魔術師にしてはセンスがいい」と満更でもない様子で、二人の間には友情が芽生えた。

ロード・エルメロイⅡ世の事件簿

ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト
「エルメロイ教室」の後輩。「ルヴィアちゃん」と呼んでいる。ルヴィアの時計塔入学前から面識はあった様子で、フラットは友好的に接しているが、ルヴィアからは顔を合わせた途端にガンドを撃たれるレベルに敵視されている。
グレイ
エルメロイⅡ世の内弟子。フラットは弟子同士の仲間意識を持って接しているが、グレイからは苦手がられている。
スヴィン・グラシュエート
彼の方がほんの一ケ月ばかりエルメロイ教室の先輩。フラットのことは普段「監視すべき対象」と見なしているが、それで首を突っ込んだ結果余計に被害が大きくなる事も多いため周りからはほぼ同レベルのトラブルメーカー扱いされていたり、有事の際は二人で協力して驚異的なコンビネーションを発揮したりするあたり、何だかんだで似た者同士である。嗅覚を基準とした人物評は「無闇にぺかぺか光ってとらえどころのない匂い」「ふわふわして軽薄で真っ黄色な匂い」など。
ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ
師匠の義理の妹。「姫さん」と呼んでいるが、向こうからは普段の落ち着きのない言動を呆れられたり窘められたりしている。
トリムマウ
ライネスがケイネスの生み出した礼装を改良して使い魔としての機能を持たせたもので、今ではライネスのレディーズメイドを務めている。
フラットがちょくちょくライネスの目を盗んでは情操教育に悪い映画を見せるなどの要らん知識を吹き込んだせいで、大した害は無いものの、ある意味では深刻なバグを抱える羽目になってしまった。
フラットはこっそり「トリムちゃん」と呼んでいる。

その他

ヴァン=フェム
「ちょっと色々あった」末に、特別に彼の船宴で遊ばせてもらったらしい。(本来、未成年は立ち入り禁止)
 それ以降も交友関係は続いているようで、エイプリルフール企画の時言及していた「知り合いの死徒」は彼のことと思われる。
キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ
エイプリルフール企画では、「ゼルレッチさん」と呼び、並行世界の教授との通信記録を渡してもらおうとしていた。
なお、彼が死徒であることも知っている模様。
両親
才能は認めたが、息子の異質さに恐怖した彼らに5回も暗殺されかけており、親子仲は最悪である。

名台詞

Fate/strange Fake

「そんな! せめて二言以上で表してください!」
エルメロイⅡ世に「君は一言で表すならばアホだな」と身も蓋もないコメントを貰ってしまってこの反応である。実際にアホなのか天然なのか、むしろ大人物というべきなのか。
そして師からの二言以上のコメントは「馬鹿でアホ」だった。何にも変わっていない。
「ただ、ほら、何かヒーローを召喚するためのアイテムがいるんでしょう!? それ、どうやって手に入れたらいいのかわからないんですよ!
 ナポレオンの肖像画とか持っていったらナポレオン召喚できるんですか! 皇帝なら最強じゃないですか!」
エルメロイⅡ世には「私がナポレオンの英霊なら契約する前に君を銃殺しているところだ!」と怒られる。
メタ的に言えば、肖像画程度の縁の深さでは目当ての英霊など到底呼び出せないと読者にツッコませるところなのだが、この後彼が実際にやらかした召喚と来てはもはや肖像画どころの話ではなかった。
「だって、超カッコイイじゃないですか! 聖杯なんて!
 あのヒットラーやゲッペルスが第三帝国のために追い求めて、秦の始皇帝やノブナガやゴジラも追い求めた一品ですよ!
 本当に存在するのなら、どんなのか見てみたいじゃないっすか!」
どうして聖杯を求めるのか、と師に問われて。あまりのくだらなさに、毒舌家のエルメロイⅡ世も咄嗟には、スペル違いや時代的・文化的間違いを指摘するくらいしかリアクションが取れなかった。
「……難しい問題ですよね。他の英雄とかも凄く見てみたいし、できれば仲良くなりたいじゃないですか!
 英雄を六人も友達にできたら、これ、魔術師として凄いでしょ! 世界征服だって夢じゃないっすよ!」
他のマスターやサーヴァントと殺し合う覚悟はあるのかと聞かれた返答がこれ。さぞキツイ罵倒が返ってくるかと思いきや、「英霊を友達にして世界征服」のワードが教授の中の大切な場所にあるスイッチを押したらしく、次の言葉までにはちょっと奇妙なタイムラグがあった。
「とぼとぼ」
教授から冷たくあしらわれ、あからさまにションボリしながら時計塔内を、セルフで擬態語を呟きつつうろつく二十才手前男子。
精神年齢はたぶん小学生くらい。
「消えちゃうみたいだ。よし、令呪は絶対に使わないようにしよう!」
自分の右手に宿った令呪をどうやってか解析し、だいたいのシステムを見抜いての一言。戦略的な理由ではなく「かっこいいから消えると勿体ない」という動機で令呪を温存するという、聖杯戦争の他の参加者が聞いたらまず怒るか呆れるかどっちかしそうな決断である。
「え、ええと……すいません、いろいろ魔力の流れとか弄ってるうちに……なんか、『繋がっちゃった』みたいですね。
 いや、すいません、こんな召喚の仕方で」
聖杯戦争史上、たぶん最もいい加減な英霊召喚シーン。フラットの能力のあまりの破格さと、性格のあまりのユルさが同時に表れている。
「俺は好きっすよ、貴方みたいな、正体のわからない謎の怪人って」
「だって、かっこいいじゃないですか! しかも、今はいい人みたいで良かったです!」
フラットの価値基準はかっこいいかどうかが重要らしい。己のサーヴァントが、かつて霧の都を恐怖のどん底に叩き込んだ殺人鬼であろうとも、確たる正体と言うものを持たない悪霊まがいの存在であろうとも、そんなことはどうでも良さそうなマスターの言葉に、狂気と凶気の象徴であるはずのジャックも思わず言葉を失う。
「とりあえず、いい天気だから日向ぼっこしましょう。あったかくて超気持ちいいっすよ」
どっかの魔術師殺しが聞いたら羨ましさで死にそうな能力適性を示して、やる気満々のサーヴァントに、爽やかな笑顔を向けて一言。
聖杯戦争とはいったい……
「紳士が連続殺人とかするかなあ」
ジャックを変身させた時計の精密さを褒めたところ、「英国紳士は時間に正確なのだ、という事にしておこう」とコメントが帰ってきたので特に悪気もなく相手の心を抉るようなツッコミを入れる。
「んー、バレないようにはしてますけど……。絶対バレないとは言いきれないかも……。
 教授なら探知はできないだろうけど、違和感から後で俺まで辿り着くだろうし……。
 ルヴィアちゃんレベルだと、魔力を逆流させられてこのモーテルが爆発するかも……」
「まあ、もしもバレちゃったら、ごめんなさいって誠心誠意謝りますよ!」
砂漠で行われているギルガメッシュvsエルキドゥの超弩級バトルの気配を感知し、自分の使い魔を飛ばすのは間に合わないから他の魔術師が使っているやつの視覚を借りるとこともなげに言い出したフラットに対して、そんなことが可能なのかとジャックが疑問を呈したところ返ってきた答えがコレ。
一見アホそうに見えるくせに自分の周囲の魔術師の力量はいやに正確に把握しているのも不気味だが、なによりも他者の魔術に対する冒涜じみた所業に対して全く悪びれない無邪気さに、殺人鬼の伝説の化身であるはずのジャックさえもちょっとドン引きする。
「確かに格好いいですけど、自分がなるのはちょっと。吸血衝動とか色々ありますし」
「それにほら、効率悪いですから」
「格好いいからという理由であっさり吸血鬼になりそうだな」とバーサーカーから言われての返答。
全うな倫理観は一応あるようだが、「もっと効率のいい方法を知っている」と言わんばかりの不穏すぎる二言目。
遠すぎる目的を達成する為に死徒になる研究を進めていた魔術師が聞いたら凍り付きそうな発言である。
「いやあ、一瞬だったんで後でいいかなって」
他の英霊を見たのなら、なぜすぐ自分に言わなかったのかとバーサーカーに問われて。
この発言を聞き、バーサーカーは『そろそろ一度本気で説教すべきか』と本気で怒ろうとするが……
「それに……多分下手に騒いで見つかったら、一瞬で殺されてたと思いますし」
フラットが見つけた英霊をすぐに教えなかった最大の理由。
見つけたサーヴァントは最強の英霊とされるとんでもない存在である上、自分の友人の参戦を知ってかなりやる気になっており、聖杯戦争参加者と気づかれたら速攻で殺しに来る可能性があったのでフラットの予感は正しかった。
それを聞いたバーサーカーは不安と同時に妙な安心を抱きながら「ただのバカかと思いきや、妙なところでドライだな」と述べた。
「いえ、逆になんか嬉しいですよ」
「俺、子供の頃から変に怖がられたり避けられたりしてばっかりで……。
 そうやって面と向かってバカとかアホとか怒ってくれるのって、教授とその妹のお姫さんと、同じ教室のみんなとOBの人達ぐらいでしたから…」
「バカと言われて怒ったのか?」とバーサーカーに問われて。
「いや、普通に多いだろ」とバーサーカーには突っ込まれたが、「怒ってくれる魔術師」の中に一番最初に接した魔術師である「両親」すら全く出て来なかった辺り、エルメロイ教室に入る以前は少年時代すら幸せに過ごす事が出来なかったらしく、またそこまで居場所がなかった彼でも何だかんだで受け入れてくれるエルメロイ教室の人々の器の深さをありがたく思っているのが分かる。
「殺しませんよ。ジャックさん。人の命は地球より重いんですよ?」
「人の命は、この人達も含めて地球を飛び越えるための大事な部品パーツなんです」
「簡単に殺しちゃったりしたら、可哀想だし勿体無いじゃないですか・・・・・・・・・・・・・・・・
拘束した傭兵集団ツーツクワンクを殺さない理由をバーサーカーに問われて。
通常の魔術師からすれば呆れるような、しかし人間からすれば至極真っ当な倫理観が吐き出されるが、やはり内容が不穏すぎる。そして、二行目を言った時の彼の目は、魔術師のものではなく、ただの人間のそれでもなかった。
事実、ツーツクワンクのメンバーは最初は怒りを顕にしつつも、二行目の言葉を聞いて「見ている先が違う」と悟り、恐怖で顔をこわばらせてしまう。
一方バーサーカーは口にしないものの、フラットが数日の付き合いで善なる者か悪しき者そういった範疇で語れる存在でないと感じ取り、その顔に一抹の寂しさのようなものが浮かんだことに気づいていた。
「え? ああ! すいません、共闘っていうか……少し違って」
「俺達は、その、通報に来たんです!」
病院にいるマスターとサーヴァントの件について、警察署長に告げた第一声。警察にとっては魔術的な事柄よりもよほど馴染みのある「通報」という単語だが、聖杯戦争のさなかに聖杯戦争の参加者であるマスターの口から聞くには、なんとも場違いな響きだった。
「ええ、所々魔力の流れが幾何学的に変化してますし、僕に解らないものだから・・・・・・・・・・・、多分機械だなって!
 わあ、ランガルさんや橙子さんの人形とも違う……凄い、サイボーグって俺、初めて見ました!
 ロケットパンチとか撃てるんですか!? もしかしてドリルとかも……?」
教会でハンザと対面して、そのサイボーグボディに興味津々。子供のように無邪気……というには魔術的な意味でいろいろと聞き捨てならないフレーズが満載されている。
そして「僕」が表記揺れなどではない、「俺」とは別の何かだということをチラリと伺わせる傍点部分。
「時計塔って、派閥とか色々あって面倒臭いんですよね。そういうの、俺からすると効率が悪く見える・・・・・・・・・・・・・・から、良く解らないんですけど……
 教授もそういうのを馬鹿馬鹿しいと言いながら、相手も立てて上手く立ち回ってました。俺を引き取った時も、色々とあったみたいですし」
エルメロイⅡ世に対する尊敬の思いを語りつつ、時計塔内の政治力学をバッサリ否定。
「効率が悪い」とはフラットがたびたび口にする言葉だが、この巻で語られた生い立ちを踏まえると、まるで魔術的な事柄についての最適解をすべて知っていると言わんばかりのその口ぶりに色々と疑惑が募る。
「でも、俺はエスカルドス家の魔術師である前に、エルメロイ教室のフラット・エスカルドスなんです」
「あの教室にいるからには、俺の人生は、もう俺だけの問題じゃないんですよ。ここでその女の子を見捨てるのは、教授と教室のみんなを裏切ることになる。
 俺にとって、それは……俺の魔術師としての目的・・・・・・・・・を失うのと同じくらい怖いんです」
何故、己の身を危険に晒してまで見ず知らずの少女の命を救おうとするのか、その強さはどこから来るのかとジャックに問われて。
エルメロイ教室で仲間と過ごした日々が、弟子たちを護り導く師の背中が、魔術師としてゆるいどころか人間としての価値感すらズレているフラット・エスカルドスをこの世界に繋ぎ止めている。

Fate/Apocrypha

「教授! いやさ絶対領域マジシャン先生!
 ちょろっと盗み聞きしたんですけど、聖杯大戦を様子見するって本当ですか!?
 何かスゲー面白そうなことになってるのに!
 それとさっきすれ違った水銀メイドさんと映画見る約束してるんで、休みの日教えて下さい!」
ノック無しで師の部屋に突入し、大暴走。こちらの世界でも時計塔の幹部会議を盗聴していたらしい。
更に彼の影響で、水銀メイドさんこと月霊髄液がおかしなことに……

ロード・エルメロイⅡ世の事件簿

「いや、だって、そこに螺旋階段があるなら滑らなきゃ失礼じゃないですか! こんなにも綺麗に磨かれた手すりが俺のことを待ってるんだから、それはもうふらふらっといくのがマナーです!」
現代魔術科本部のエントランスホールにある螺旋階段の手すりを「ヒャッホー」と奇声を上げながら滑り降りてきたことをライネスに咎められて。今回が初犯ではないらしく、やるたびにエルメロイⅡ世から宿題を三倍に増やすお仕置きを喰らわされているが、本人は全く堪えていない様子。
「ううーん。これはすごい! 天候操作は副作用が強いからって時計塔でもほとんど実践されてない項目だもんね! ああでもこの人ちょっと効率悪いよね。多分三十一……三十二人で成立させてるけれど、七番目と二十番目の人は交換した方がいいよ。忠告してあげなきゃ!」
アトラム・ガリアスタとその手下による秘技、雷撃の魔術を目撃してのコメント。フラットは純粋に善意100%で言っているのだが、アトラム本人に伝わっていた場合、まず全く感謝されないだろう忠告である。
「うん、これってばまったく全然敵わないぞ! さあ逃げようル・シアンくん!」
スヴィンと二人でアトラムの襲撃からバイロン卿を救出しようと暴れ回っていた中、突然介入してきた蒼崎橙子の別格の強さに即決で撤退の判断を下した。
この時点でフラット本体は既に逃げ出しており、残された影人形が「逃げようル・シアンくん!」を延々とリピートし続ける。
『ええと橙子さんですよね? お金が欲しいなら、その褐色の人をぶんなぐって、そっくりの人形つくって家を乗っ取った方が効率的ですよ! みんなで幸せになれますよ!』
橙子がアトラムに助太刀する理由を報酬目当てと判断し、もっと実入りのいい、とっても悪質な犯罪を影人形越しにおすすめする。
生贄として名指しされたアトラムは当然怒り、橙子は「(アトラム人形を作るのは)美意識にそぐわないから」と倫理観とは関係ない理由で却下した。
『ですよねー!』
故郷モナコでのあれこれ終わりました! いやあフェムの船宴カーサのディーラーさんたちは強敵でしたね!」
「case.魔眼蒐集列車」においては「実家の方で何か問題が起こった」という事情で終章まで不在だった彼だが、戻ってすぐのこの一言でとんでもない所で遊んできていたことが判明する。何故か実家の問題については触れていないが、「strange Fake」4巻で明かされた家族間の事情を踏まえるとちょっぴり不穏でもある。
「鬼ですか教授?! むしろ鬼神っていうと格好いいですね! あ、今度の英雄史大戦は日本の鬼デッキとかどうですか茨木童子酒呑童子星熊童子風鬼水鬼隠形鬼よりどりみどりですよ! 今度俺、日本の友達から最新カード輸入してもらいますから――」
カウレスの原始電池にこっそり盗聴機能を仕込んでおいた件のお仕置で、反省文と帰省中の宿題三倍を申し付けられ全く反省していなさそうな返事をする。直後、ロンドン☆スター先生からの強化ベアクローが炸裂。

メモ

  • 魔術で結界など他者の魔術に干渉することを「ハッキング」と呼ぶのは、フラットに限らず若い魔術師たちの間にしばしば見受けられる風潮である。教授からしてコンピューターゲームに熱中しているエルメロイ教室などは突出しすぎた例としても、時計塔の魔術師社会もわりあい俗世に染まってきているようだ。
  • 上記の名台詞にもある通り、サーヴァントに敬語で話しかける男性では珍しいマスターである。
  • どの平行世界であっても、水銀メイドさんが自分のことを「未来からきた殺人マシーンである」と言い出す原因となった映画を見せた諸悪の根源は彼である。
  • 氷室の天地 Fate/school life』において、ボイスチャットの向こうのLondon☆STAR氏が自分のアカウント名なのにも関わらず「その名前で呼ぶな!」とキレていた件の犯人もどうやらフラットであるらしい。
  • エスカルドス家は地中海近辺の魔術師の中でもとりわけ古い家系であり、一節には時計塔が設立する前にかの魔法使いゼルレッチをはじめとする、紀元前後から数世紀の間に活躍した魔術師達と共に活動していたという噂もある。
    • しかし、エスカルドス家は古い家系でありながら魔術師としてろくな実績を成しておらず、魔術刻印もただ古いだけで、そこに刻まれた術式の大半は『一体何の魔術なのか、受け継いだ本人にも理解ができぬ』として術式をそれに見せかけた単なるハッタリではないかと疑ってしまう。
    • 刻印に高度な生命維持機能などが残されているのと、代々細々とした魔術特許を造り出しているため、辛うじて古き家としての威厳は保たれ、血脈を保ち続けたが、それ故に時計塔でも『歴史倒れのエスカルドス家』と揶揄され続けている。
    • また、先祖代々から魔術回路の本数が少ない上に、どれだけいい魔術師の血を引き入れようと、何代それを続けようとも回路がほんの少ししか発達しなかったことが、数百年の当主の悩みとなった。
    • だが、古い家系でありながら魔術回路も魔術刻印も成長が止まったわけではない。そして未だに魔術刻印の寿命の兆しが現れない点は脅威であり、時計塔でも時折研究対象として議論されることも。(魔術刻印・魔術回路は、限界を迎えると徐々に劣化していく。例えばマキリの場合は、魔術刻印は臓硯の代で限界を迎えてこれ以上の発展は望めず、跡継ぎに託そうにも魔術回路を持たないor持っていても実用に耐えないようなわずかな魔術回路しか持たない子孫ばかりが続くことになり、マキリは雁夜の代でほぼ詰んでいる。こうなってしまうと最早獅子劫家のように悪魔などに頼るしか復興する方法は大凡なくなってしまう。)
    • そんな中に魔術師としては規格外のスペックを持ったフラットが生まれたのだが、肝心の彼は魔術師として最も重要である心構えというものが完全に欠落しており、その結果両親に疎まれてしまった。

話題まとめ

脚注

  1. 『Fake』作中でも「一流の原石があるのに磨くことができず、その原石が原石のまま宝石以上に眩い輝きを放つ」と揶揄されている。
  2. 『Fake』3巻では勝手に渡米した件諸々を仕出かしたフラットを説教したエルメロイⅡ世にバーサーカー召喚の経緯を正直に答えたところ、数分の絶句の後にそれまで以上の勢いで説教が再開された一幕があった。

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