月の珊瑚

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月の珊瑚

奈須きのこ
イラスト
武内崇、逢倉千尋
朗読
坂本真綾

朗読CDと一緒に楽しむという星海社朗読館シリーズの一編。

月姫』が起こらなかった未来。退廃的なイフ。魔術は残っている。表コンセプトは「かぐや姫」、裏コンセプトは「月姫3000」。

宇宙開拓により月面都市が作られやがて月面国家が興った頃、地球はポールシフトに見舞われれ、全人類は唐突に開拓・解明・繁殖などへの情熱を失っていった。
地球の人類は文明がなければ生きられない月面の人類に文明保存を押し付けたものの、半世紀後には交流が失われ、さらに数十年して月面の人類は死に絶えた。一割程の人間が情熱を持つおかげで、地球の人類はまだなんとか滅びずに済んでいるという状況。

登場人物

西暦3000年頃

語り部の少女(お姫(ひい)さま):珊瑚の島の姫で、愛を試すために求婚者に無理難題を出して撃墜している。珪素姫の末裔(孫クローンの孫クローン)。まだ人間にはちょっと遠い。生きるための知識は遺伝で、暮らすための知識は口伝で継承される。
アリシマの君:16人目の求婚者。月のサカナという難題に怒って帰った。
小人:地球の男の子孫というか後継機。月に保存されていた文明技術をさらに発展させて作られたワンダー・マン・インターフェイス。地球を往復するため小さく軽量化されている。配達任務と「物語」の買い付けのために地球を訪れた。
イセ:島民。

数百年前

地球の男
機械的なデザインベビー。生物学的には間違いなく人間。音声による会話をうまく理解できない。一人だけで居られるシンプルな世界を求めて宇宙服を着込んでロケットで月へ行った。水素補給のため12時間毎に珪素姫の元に通うようになる。
月の姫(珪素ちゃん)
星を効率よく運用するための入力装置。星の魂を珪素生命として安定させたもの。人工的に作られた星の頭脳体。月面から人類が居なくなったため、人を呼べないものかと今まで月面都市の維持に使っていたエネルギーを回して七都市に氷の空と石灰の森を作ってみたりしていた。
周囲からは水素などの資源が産出される。手足が月の大地と一体化していたが、男に恋したことでヒトになることを望み、人間の手足を持つ炭素生命へと少しずつ変化していくが、星の頭脳体としての機能も失っていった。
男が地球に送った落下の際、周囲の海中に石灰の森(珊瑚礁)が形成され島には緑が蘇る。寿命の間際に海中の森へと向かいそれ以降、珊瑚は満月の夜に光るようになった。光る珊瑚からは酸素や窒素などが産生され、人類存続の一助となっている。

メモ

  • 遺伝子操作されたデザインベビーはそこまでして存続してなくてもいいという「人類の総意」のようなものが働いて生まれた直後に自ら呼吸を止めてしまう。そのため意志の力では止まらない心臓を持つ本当の意味で機械的なデザインベビーが作られた。ただし機械的なデザインベビーには五感や人として感性に障害が発生する。
  • 7つある月面都市の第五都市の名前がマトリ。ヴァン=フェムの七大ゴーレム「魔城」の第五城マトリと同名。
  • メルブラの姫アルク編や月姫Rのプロットを作り終わった直後に書いたので、その退廃的なイフとして筆が進みに進んだとのこと。

書誌情報

  • 春と月と空と(武内崇の同人誌) - 「京都、春。」「月の珊瑚」「空の境界」の設定画集。
  • TYPE-MOON Fes パンフレット - Q&Aに「月の珊瑚」関連のもある。

資料リンク

リンク

  • BookGuide