概要
「[[キャスター|魔術師]]」の[[サーヴァント]]。
;略歴
:『[[Fate/Apocrypha]]』では[[聖杯戦争|聖杯大戦]]開始二ヶ月前([[ヴラド三世 (Apocrypha)|黒のランサー]]とほぼ同時期)において、[[ロシェ・フレイン・ユグドミレニア]]によって召喚された。
:マスターであるロシェから、尊敬の念を込めて「先生」と呼ばれている。その後彼と共に城内の工房で、聖杯大戦の兵士として使うゴーレムの生産と宝具の設計・開発に明け暮れる。聖杯大戦開始の時点で既に彼が製造したゴーレムは千体を超えており、ミレニア城塞近辺にひしめく様に配置されている。
:後に無様な失敗を続けた事で[[ダーニック・プレストーン・ユグドミレニア|ダーニック]]に見限られた[[ゴルド・ムジーク・ユグドミレニア|ゴルド]]から令呪を回収し、捕縛した[[スパルタクス|赤のバーサーカー]]のマスターとなる。
:決戦においては、[[ケイローン|黒のアーチャー]]を援護して[[アキレウス|赤のライダー]]を戦場から引き離し、ランサーの危機に赤のバーサーカーを向かわせるなど他のサーヴァントの支援に徹する。だが激戦によって手持ちのゴーレムの大半が破壊されたため、空中庭園での戦いでは自ら戦場に赴き、[[ジャンヌ・ダルク|ルーラー]]の命令で暴走したダーニックを相手に赤のサーヴァント達と共闘する事となった。
:しかし、陣営の要であったダーニックと黒のランサーを失った為に、自陣営が劣勢に陥ると、自身の目的の為に「黒」陣営を裏切る。マスター権を[[天草四郎時貞|シロウ]]に委譲し、撤退したルーラーと[[ケイローン|黒のアーチャー]]の追撃に赴く。その途中で元マスターであるロシェを呼び出し、何も知らずに現れた彼を『炉心』にして『<ruby>王冠・叡智の光<rb></rb><rt>ゴーレム・ケテルマルクト</rt></ruby>』を完成させてミレニア城塞への攻撃を始める。
:だが直後に駆け付けた黒のアーチャーの攻撃で致命傷を負い、自ら作り出した最高傑作へ望む執念と己の欲望のためにマスターを裏切った罪悪感から、その最期を受け入れつつも自らの肉体と魔力を『<ruby>王冠・叡智の光<rb></rb><rt>ゴーレム・ケテルマルクト</rt></ruby>』に吸収させ、'''「黒のサーヴァント」3人目の脱落者'''となる。
:最後の最後まで誰にも仮面で隠された素顔を見せず、心の内を明かす事もなく、ロシェの後を追うかのように「原初の人間」の内に溶けていった。しかし不滅のはずの巨人も倒され、彼の悲願は潰えた。
;人物
:青いマントとボディスーツ、無貌の仮面で身を隠した男。性格は冷徹で小心者。
:顔も姿も隠しているため、その雰囲気から一見老練な魔術師や気位の高い知識人を思わせるが、予想に反して喋り方は若々しいもの。極度の厭世家で、必要以上の言葉は一切喋らない。ただ伝承ほど病的な人間嫌いではなく、マスターであるロシェやスポンサーのダーニックとは普通に会話する。
:ロシェとは精神的に相性が良く、慕われながら円滑な人間関係を築き上げることができ、理想的なマスターともみなせる存在だった。だが生前、病のせいで引き籠りがちな生活を送っていた為、人間達とは没交渉で、中でも子供とはまるで縁がなく苦手。ましてや懐かれることなど想像もできなかった為、実はマスターであるロシェからの尊敬の念を嬉しく思いつつも困惑している。
:生前のアヴィケブロンは人が戦乱を巻き起こしてお互いに殺し合い、無力な者から略奪を行うなど、人間の醜い部分を度々目の当たりにしてきた。究極にして完全なる神が創り出したはずの人類は、何故かくも愚かで不完全なのかと。
:それは「純粋にして最高の原理」である神の意志から、物質的な世界へと人間がこぼれ落ちる際、段階を追って不完全になっていくためである。その考えに至ったアヴィケブロンは、世界のすべてを煩わしく思い、無用な会話や人付き合いを避けるため仮面を身に付けるようになった。
:そんな彼が目指したのは、「原初の人類を創造した、神の御業の再現」。この世のすべての悲しみを払い、地上に楽園をもたらす存在を創る。かつて、神が原初の人類「アダム」を創造したように。人間嫌いの厭世家であったアヴィケブロンは彼なりに世界を、そして人類を救済しようとしていた。
:彼の聖杯への願いは少し複雑で、「己の宝具である『<ruby>王冠・叡智の光<rb></rb><rt>ゴーレム・ケテルマルクト</rt></ruby>』の完成」を望んで聖杯大戦に身を投じる。ただ宝具として完成させたのでは「未完成」であり、これにはカバラの考えが大きく影響している。
:そもそもゴーレムとはカバラの術の一つであり、名は“胎児”や“形作られざるもの”などを意味する。即ち、神が原初の人間の創造した際の秘術を再現するための魔術であり、単に強力な兵器として力を振るうだけの物は決して彼が求める「完成された存在」ではない。『苦難に満ちた我々を、再びエデンの園へと導く偉大なる王』、それこそがアヴィケブロンが究極のゴーレムに求める役割である。
:その在り方は魂や信念、誇りや技を注ぎ込む「職人」とは決定的に異なり、彼の内にあるのは人が信じ仰ぎ見る物、最上の存在を造りだそうという「信仰心」のみである。宝具の完成に魔術師を『炉心』にすることに躊躇いはあるが、悲願のためには全てを犠牲にする覚悟がある。
:その深遠な目的から、常に「より良い宝具(モノ)を作りたい」と願う探究者で、[[ジーク|理想的な魔術回路をもったホムンクルス]]の脱走により、宝具の炉心に使える生贄が[[ゴルド・ムジーク・ユグドミレニア|ゴルド]]しか居ないことを残念に思っていた。
:彼にとって自らを尊敬するマスターと共に戦うのは決して悪くはない気分だった。しかし、それでも人生の全てを投げ打った己の希望が手の届く所にあるという誘惑には逆らえなかったのだ。そして「アダム」を生誕させるべく、何もかもを犠牲にし、そして遂には自分のマスターをも手に掛けた。
:だがその選択の代償として、アヴィケブロンは悟ってしまう。自身が生前疎み避けた「自身の利益のため、弱者を食い物にする不完全な人間」と同類だった事を。黒の陣営への攻撃時、目立つところへ姿を現したのは、宝具の完成と同時に自らの価値が0になったと感じた為。本当は宝具がもたらす楽園を見てみたいという未練を抱きながらも、その罪悪感から自らの命を差し出し、裏切りへの対価を払ったのだろう<ref group = "出">[https://fate-apocrypha.com/character/ アニメ『Fate/Apocrypha』公式サイト 「CHARACTER」 アヴィケブロン COLUMN]</ref>。
:上記の出来事は相当にトラウマになったのか霊基に刻まれてしまい、「結局は自分も目的のために罪のない他人を犠牲にする魔術師に過ぎなかった」という後悔から、他で召喚された際にはかなり自己犠牲的な言動が見受けられるようになった。
:その一方で、仮面で表情が見えずに他人ともあまり会話しない為にわかりにくいが、研究関連ではわりとテンションが上がりやすく、テンションが上がると割と引くレベルで突飛な言動を繰り返すようになる。
;能力
:魔術基盤の一つであるカバラを紡ぎ「ゴーレム」を鋳造することに特化した[[魔術師]]。
:クラス別[[スキル (サーヴァント)|スキル]]『陣地作成』によってミレニア城塞内に形成された工房は、ゴーレムの製造に最適化されており、「魔術師の工房」と言うより、一種の「製造工場(ファクトリー)」。
:防衛という点では並以下だが、一日三十体のペースで、現代の魔術師が一年かけても作り上げられない程の高性能なゴーレムを生産できるが、宝具を含めたすべて自前で調達する必要があるので、適した土地を確保するか、然るべきコネクションと財力を用いて搬入する必要がある。その費用は構築するだけで並みの魔術師が十回破産する程の予算と長期の工程が必要となるが、アヴィケブロンの魔力と予算が続く限りはゴーレムの生産に際限は無く、無限に生産される。
:大きく分類すると小型・中型・大型に分かれ、さらに人型だけでなく、馬型や蜻蛉のような飛行型や蜘蛛のような多脚型が存在する。彼のゴーレムは八百年級以上の宝石と羊皮紙が使われており、その性能は熟練の魔術師はおろか、Eランクサーヴァントと同程度の力を持ち、高性能な白兵戦型は[[モードレッド|赤のセイバー]]と三合も打ち合った。
:城塞近辺で侵入者を待ち構えているゴーレムは、高度な魔術的迷彩効果が施されており、周囲の建築物などに擬態している。その他にも流体化し対象の全身に絡みつき石牢となる捕縛用のゴーレムやランサー用に造られた巨大な銅鉄馬などゴーレムの種類は多岐に渡る。
:ゴーレムは全て自立稼働する機能を備えているが、彼が直接操作した場合、動作の精密さが比べ物にならないほど上昇する。操作できるのは一本の指につき一体で、最大10体のゴーレムを直接操作することが出来る。
:彼が操る魔術はすべてゴーレムに関るもので、七枝の燭台(メノラー)と呼ばれる特殊な魔道具を用いて、広大な範囲を索敵・監視することができる。この魔術は飛行型のゴーレムを中継地点として使っており、その限界距離は一般的な遠見の魔術を遥かに凌駕し、その索敵網はトゥリファス近辺に留まらず、[[ジャンヌ・ダルク|ルーラー]]がブカレストの空港に辿り着いたのを即座に発見した。
:また、固有スキルとして『数秘術』すなわちカバラの秘奥を持ち、ノタリコン(呪文を構成する単語の頭文字だけを繋げてひとつの単語とする記述法)による短縮詠唱と併用することで、複数のゴーレムに複数のコマンドを一瞬で入力することも可能。
:『[[Fate/Grand Order]]』のLostbelt No.1『[[永久凍土帝国 アナスタシア]]』で彼は、その素材が魔力に満ちていれば大抵の物はゴーレムにする事が出来るが、雪をゴーレムにするには炉心はどうにかなるが、集積と維持が難しく、安い炉心では集積しきれないと語っている。かといって、価値の高い素材を炉心にしても出来上がるのは、弱いが耐久力だけはあるゴーレムともしている。
:またゴーレムの術式を応用することで、壁に手を付けて周囲の会話を盗み聞きする能力も見せた。ただし、特定の情報を拾うには不向きな手段なので、情報を獲得出来るかは運が絡む。
:『Grand Order』の通常戦闘の際に出現するゴーレムは、一時的な戦闘に使用するだけのもので、耐久力は全くない。