概要
[[時計塔]]の<ruby><rb>十一科</rb><rt>ロクスロート</rt></ruby>に所属する[[魔術師]]。二百坪ほどの研究棟の館長。
;略歴
:“私は既に命を断った。私は殺されるだろうから、後処理に来てほしい”
:旧知の仲である魔術師フラウロスの死を知らせる手紙を受け取った青崎姉妹は、それぞれに時計塔のロクスロートを訪れる。だが、そこには平然と日々を過ごす生きた当人の姿があった。
:しかし2015年の冬、研究棟の館長室にて、彼は何者かに殺害された死体となって発見される。魔術師の世界ではとりたてて珍しい出来事ではなかったが、本人が生前から用意していたという墓標に三人分の墓碑が刻まれていたことだけが奇妙であった。
;人物
:考古学部である時計塔<ruby><rb>十一科</rb><rt>ロクスロート</rt></ruby>で研究棟の館長を務める魔術師の男性。年齢は四十代。ドイツ国籍のアーリア系。西暦以前から続く古い家系の出身で、<ruby><rb>冠位指定</rb><rt>グランドオーダー</rt></ruby>を授けられた名門の嫡子。かつては二十歳で魔術四階梯の<ruby><rb>祭位</rb><rt>フェス</rt></ruby>に到達した神童と呼ばれていた。
;能力
:一つの事柄を見て同時に異なる処理をする完全な多重人格者。「現在」「過去」「未来」を重んじるの3つの人格を持ちながら、それぞれが自らの研究に没頭している。はじめから多重人格だったのか、研究の過程でそうなったのかは不明。
フラウロス
:「現在」を重んじるフラウロス。一人称は「私」。
:折り合いの悪いレフとライノールの仲介役を担当していたが、極端なまでに過去と未来の一方しか見ていないレフとライノールの研究が世界に害をなすことを知り、彼らを止めるべく2014年に現在の人格の“自殺”を選んだ。魔術師は魔術刻印に刻まれた一族の掟に逆って自ら命を断つことはできないが、「現在を守ること」というオーダーを授けられたフラウロスは、これに殉じる形で人格を閉ざすことに成功する。
:青崎姉妹に送られた手紙はこの「現在」のフラウロスの死を伝え、あとに残った人格のことを彼女らに頼むものであった。
:残った二人が和解することを夢見ていたが、仲介役を失ったレフとライノールはお互いの人格に対する憎しみが止められず、相手人格に対して致死性のトラップを仕掛けてしまう。その結果、フラウロスの体は胴体を切断され死亡した。
レフ・ウヴァル
:「過去」を重んじるフラウロス。ひょろりと高い背を猫のように丸めた忙しない男性。一人称は「ボク」。
:考古学部である十一科ロクスロートは時計塔の十二の学部で最弱とされ、縄張り争いに興味を示さない純粋な研究者たちの集まり。レフもまた、そういった事柄には興味を持たず、引きこもっては研究に明け暮れている。
:「魔術師の一生とは、過去に奉仕すること」との信条を掲げて、徹底した研究系魔術師として己が理論、己が魔術式だけに心血を注ぎ、それ以外の世俗的な事柄に時間を浪費する実践系の魔術師たちを毛嫌いしている。未来にも現在にも興味はなく、ただひたすらに過去の魔術書を解読し、その属する体系に沿って検討し、現代でも通用するよう再定義しリライトすることを己の唯一の使命にして責務と考えている。
:後継者を育てる時間すら惜しい、子孫すら信頼できないと考え、自分の力のみでそれを成そうと日々奮闘しているが、それを果たすための時間が自分には絶対的に不足していることが苦悩の種。
:ミス・アオザキの姉の方には唯一の理解者としての友情を、妹の方には一切分かり合えない相手としての嫌悪感を抱いていた。
ライノール・グシオン
:「未来」を重んじるフラウロス。細身で背が高く、荒っぽく野性的な男性。一人称は「オレ」。
:好戦的で行動的な魔術師で、野性的な表情や言動から研究棟の用心棒と間違われることもある。
:「未来があればそれでいい」がモットーで、金にがめつく、浪費も激しく、しかし自分自身にかけるコストはごくささやか。他の魔術師から力尽くかつ合法的に利権や研究成果を奪い取り、拝金魔術師だの利権マフィアだのと誹られる一方で、才能はあっても資金や環境に恵まれない若手の魔術師たちを見出しては課題と経費を与え、支援・育成する「足長おじさん(ダディ・ロング・レッグス)」の顔も持っている。
:希少な虚数属性を持つ魔術師であり、虚数魔術の使い手のみが触れられる虚数空間を次元ポケットのように用いて、資源や礼装、理論など「文明により消費され失われる、未来において必要とされるだろうもの」を現在から隔離し、未来への一方的な送信をひたすらに続ける。
:過去にも現在にも興味はなく、ただ未来の繁栄のみが目的で、やるべき事の多すぎる魔術師としての一生に倦怠感を覚えている。
:ミス・アオザキの妹の方には「いい女」として性的な好意を、姉の方には反りの合わない相手としての苦手意識を抱いていた。
:『[[Fate/Grand Order]]』における奏章Ⅰ『[[虚数羅針内界 ペーパームーン]]』では、[[ライノール・グシオン (AI)|彼の人格をベースにした<ruby><rb>移送部</rb><rt>トランスファー</rt></ruby>の筆頭AI]]かつ[[高長恭]]のマスターが登場している。