本編
;「どのような物語をご所望でしょうか。<br> 悲劇、喜劇、ここにはありとあらゆる物語がございます。中には今なお続いているものも。<br> たとえばこちら───世界を救った少年の後日譚。今宵はそんなお話に致しましょうか」
:漫画版『伝承地底世界 アガルタ』冒頭。彼女の前置きから物語が紐解かれる。
:ゲーム本編でも亜種特異点Ⅱは語り口調で締められており、漫画版では「シェヘラザードが語った物語」という解釈になっているようである。
;「<ruby><rb>彼</rb><rt>・</RT></RUBY>から聞きました。<br> ただ一人、[[ソロモン|自らの意思で座より消失した英霊]]がいると。<br> <ruby><rb>ああ、なんて羨ましい</rb><rt>・・・・・・・・・・</RT></RUBY>。<br> <ruby><rb>私もそんなことができれば、話は簡単だったのに</rb><rt>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・</RT></RUBY>──」
:『伝承地底世界 アガルタ』第16節より。死にたくないが、英霊として呼ばれればいずれ死ぬことが決定される彼女にとって、輪廻もなく、語られることもなく、必要とされることもない、[[ソロモン|完璧な無に行ってしまった者]]を彼女は羨んだ。
:だがこの発言は、そんな[[ロマニ・アーキマン|彼]]の消滅を見届けた主人公やマシュの逆鱗に触れることになる。それがどれほどの偉業であり、そしてどれほど悲しき意味を持つのかを知らずに言ったからだ。
:もっとも、事情を知らないのはお互い様であり、'''シェヘラザードがどれだけ苦しい目にあったのかを知らず理解もしようとせず、相手の同じ行為だけを批判する'''と言う行為(ひいては、それを主人公達に行わせたシナリオ)は、賛否が分かれる1.5部のシナリオにおいても、プレイヤーから批判の槍玉に上げられることが特に多い。そのためか漫画版でのマシュの反応は、怒りよりも悲しみの要素が強くなっており、そこからさらにホームズのフォローが入るなど、より共感しやすい描写に変わっている。
:またそもそも、'''王の逆鱗に触れないように千夜一夜を語り続けた'''シェヘラザードが、'''主人公やマシュの逆鱗に触れる言葉を口にする'''と言うのもかなり不自然。こちらも漫画版では、悪役として憎まれるためわざと挑発した、と言う理由が追加されている。
;「きっと私は変わりません。この仮初めの生が潰え、次の私がどこかで始まっても。<br> 私はまた、死にたくないという顔で陰気に溜め息をついているのでしょう。<br> ……それでもね、フェニクス。<br> 今の貴方は──少しばかり、見苦しい。」
:『伝承地底世界 アガルタ』第16節より。死を恐れるシェヘラザードが死に様に拘泥するのは道理。
:愛した者に、生きた意味に見守られて死ぬのと、自分をただの材料として利用しようとする、<ruby><rb>見苦しいもの</rb><rt>フェニクス</RT></RUBY>の一部となって死ぬ。選べるとしたら、どちらを選べるのか。
:少なくとも見苦しいものに、今回の自分の死を与えたくないと思い、語り部の女はフェニクスを見限った。ただそれだけの、おはなしなのである。
;「だって私は、まだ。<br> 死にたくないですから──」
:『伝承地底世界 アガルタ』解決後、フェルグスを避けながらの台詞。字面こそ以前と同じものだが、頬を赤らめ、表情には穏やかな微笑みさえ浮かんでおり、その心境は以前とは全く違う様子。
:フェルグスの決死のエールが彼女に届いた事、そして彼女がほんの少しずつでも「ただ死を恐れるだけの女」から抜けだそうとしていることを伺わせる。
;「…醜い」「醜いですね、私たちは」
;「似た者同士ですから。けれど似ているのに、いえ…そのせいで、最後まで“友”にはなれませんでした」
;「それが<RUBY><RB>私たち</RB><RT>・・・</RT></RUBY>の敗因です」
;「さようならフェニクス。もう一人の私」
:漫画版でのフェニクスへの言葉。
:こちらではゲーム版からは一変して、最期まで良好な関係を保ち続けた。
;「そうですね…。まず王が改心する所までは良しとしましょう。<br> 改心した王は自らの罪の重さを自覚し、贖罪の旅に出ます──。」
:漫画版クライマックス。ラピュータが崩れ去る中フェルグスとの最期の語らいで、「千夜一夜物語のようにお前も変わってゆけるはずだ」と言われて。
:「千夜一夜物語」のラストで語られるようなご都合主義の結末ではない、「本当にふさわしい結末とはどのようなものか」を考え、フェルグスへと語ってゆく。
:それはまるで、自分の死への恐怖を語り直し、ふさわしい結末へと至らせるかのように。