Fate/Apocrypha
;「否、やめて欲しい。」
:[[ウィリアム・シェイクスピア|キャスター]]が先陣を共に切る彼女とライダーに出した、「初めての共同作業として、愛の詩を送ろうか」という提案に対して。
:喜びに顔を輝かせるライダーにアーチャーは嫌そうにしかめっ面をして拒否した。結果、失恋する男の切ない詩が生み出された。
;「我が弓と矢を以って<ruby><rb>太陽神</rb><rt>アポロン</rt></ruby>と<ruby><rb>月女神</rb><rt>アルテミス</rt></ruby>の加護を願い奉る」<br>「この災厄を捧がん――『<ruby><rb>訴状の矢文</rb><rt>ポイボス・カタストロフェ</rt></ruby>』!」
:宝具発動。二大神の加護を願い奉る。
;「それはそうだ。相手を出し抜くべき聖杯戦争において、毒を飲まされる方が悪い。<br> 私を召喚するまでは用心するべきだった。それすら怠るような惰弱なマスターに、未練はない。<br> 死んでいないだけ、救いはある」
:[[天草四郎時貞|シロウ]]の謀略で自身のマスターを毒づけにされた事を「仕方ない」の一言で済ませすんなりマスターの鞍替えを了承する彼女に対し[[アキレウス|ライダー]]が呆れて「仕方ないで済ませていいのか?」という問いに対しての返答。生後すぐに捨てられ、雌熊に乳を与えられて、狩人たちに見出された少女は「生きる糧は奪う」という単純な世界に生きており、それが故の酷薄であり正論。
;「私の願いは“この世全ての子供らが、愛される世界”だ。<br> 父に、母に、人に愛された子供が育ち、また子供を愛するという循環だ。<br> 誰であろうと、この願いを妨げるなら容赦はせん」
:上記の通り酷薄な少女にもたった一つだけ、慈愛を向ける存在がある。生後すぐに親から捨てられた彼女の心情が顕れた願い。アサシンから「それは、不可能な世界ではないか?」と評された際にはどこか怒りを感じさせる口調で「この程度の願いを叶えずして何が聖杯か」と告げるほどに彼女にとって何があっても譲れぬ願いであることを意思表示した。
;「黙れ!貴様こそ、何をやろうとしている!?<br> 子供だぞ!彼らは子供であり、無害な霊に過ぎん。<br> 悪ですらない!<br> 犠牲者だ、世界の<ruby><rb>機構</rb><rt>システム</rt></ruby>に挟み潰された憐れむべき魂だ!<br> それを、どうして殺す!?」
;「……ッ……こと……わる……!<br>私が、私がこの子たちを見捨てたら、誰がこの子たちを愛してくれると言うのか!?<br> 魂を帰還させると言ったな、ルーラー。<br> それは昇華であり、ただの殺害に過ぎないだろう!私は―――」<br>「何が慈愛なものかッ!!救うことが聖女の役割だ!オルレアンの乙女、戦場で剣を抜かず、旗を振ったは何が為だ!殺さない為だろう!その手を血塗れにしない為に―――」
:黒のアサシンを構成する子供達の怨霊を滅ぼそうとするルーラーに矢を番えて睨み咆哮する。子供たちを尊ぶ彼女にとってルーラーの行いは赦されざるものに他ならなかった。
:それが例え怨霊であろうとも、ここで退くことは彼女のアイデンティティの崩壊にも等しいのだから。だが――
;「ルーラー……お前は、彼女たちを殺めたな」<br>「そうか。お前も切り捨てる側か。あの子たちはただ、生きたかっただけなのに。それを踏みにじる側なのだな!?」<br>「――あの娘たちは、救えたんだ」<br>「黙れ!救えた……救えたんだ!<br> 私の力では無理でも、<RUBY><RB>聖杯の力で</RB><RT>・・・・・</RT></RUBY>救えたはずなんだ!」<br>「――許すものかッ!!<br> ルーラー、お前の欺瞞に満ちた生を私は絶対に許さない!<br> 偽の聖女、子供たちを救うのではなく殺したお前を――絶対に許さん!<br> 聖杯を獲るなら、獲りに来い。<br> 一人残らず、このアタランテが射貫いてやる!」
:殺人鬼の宿業に囚われた子どもたちの魂は救えなかった。それをルーラーに告げられるも、純潔の狩人は希望の残滓と全身を引き裂くような殺意を以て拒む。
:この時を境に彼女の運命の歯車は致命的に狂い始める。
;「……世界の機構の一端だ。<br> あそこには、神も、英雄も、魔獣も、悪王も、全てが<RUBY><RB>亡い</RB><RT>・・</RT></RUBY>」<br>「あれは、私の力では救えないものだった。<br> ……だが、あの女ならば救えたかもしれないのに、切り捨てた」
:キャスターから、どのような地獄を見たのかと問われて。魔性の存在が悪事を働いているでもなく、神が暴れているでもなく、ただ素晴らしいほど上手く噛み合っているが故に、弱者を食い物にするシステムが完全に整ってしまった<RUBY><RB>世界機構</RB><RT>じごく</RT></RUBY>…。それでも聖女ならばあるいはと思った。それなのに……。
;「ジャンヌ・ダルク。あの女は私が殺す。矢で射殺す、射殺せなければ爪で引き裂く、爪が駄目ならば牙で噛み千切ってやる」
;「可能さ。私はあの女を殺すためならば、<RUBY><RB>バケモノにだってなってやる</RB><RT>・・・・・・・・・・・・・</RT></RUBY>」
:キャスターの問いに、高潔にして高貴だった狩人の瞳は、怖気を震うほどの歓喜に満ちていた。
:上記の言葉をも耳にしたキャスターから「貴女の美しい爪と歯で可能なのか?」と問われても、純潔の狩人の瞳には変わらず狂気。そして、心底愉しそうに嗤う。
;「そうだ!<br> 私はあの忌み嫌った<ruby><rb>存在</rb><rt>モノ</rt></ruby>になってでも、貴様を斃す!<br> この右腕に誓ったのだ!子を見捨てたお前を斃さずして、何が正義か、何が英雄かッ!!」
:右腕に敢えて宿した“子供たち”という名の呪いのため、そして、眼前の怨敵たるルーラーを滅ぼすため、純潔の狩人は最低限の矜持すら打ち捨て、その身を魔獣と化す。
;「ああ、痛いな。<br> 痛い、痛い、これがあの子たちの痛みだ。<br> そしてルーラー、お前もこの痛みで果てなき連鎖に<ruby><rb>失墜</rb><rt>おち</rt></ruby>るがいい……!!」
:魔人と化した、狩人は愉快そうに嗤いながら、両腕をかき抱いた。
;「<RUBY><RB>まだだ</RB><RT>・・・</RT></RUBY>!お前に、お前なんかに、邪魔は、させない……!!<br> 救う。必ず救うんだ!許されなかった<RUBY><RB>希望</RB><RT>みらい</RT></RUBY>を、有り得ぬ<RUBY><RB>聖杯</RB><RT>ねがい</RT></RUBY>で叶えるんだ……!<br> 私の夢の邪魔を、するなァァァァッ―――!!」
:自身の夢を追い求めて、どうしようもなく道を外れた<RUBY><RB>魔獣</RB><RT>かりうど</RT></RUBY>。それでもなお――正しき<RUBY><RB>慟哭</RB><RT>ほうこう</RT></RUBY>は、未だ止まない。
;「私は、愛されなかった子供たちが少しでも幸せになるようにと戦った……。<br> 完全ではなくとも、何かができたつもりだった。だが今の時代にきてみればどうだ!?<br> 子供たちの不幸は今も続いている……こんな未来を創るために、私は戦ったんじゃないッ!!」
:アニメ22話より。ルーラーを前にしての叫び。救えたはずだと叫びながら、彼女は闇天の弓を引く。
;「私は、どうすれば良かったんだろう。あの子供たちを見捨てることが、正しかったのだろうか?ルーラーに討ち果たされることが正しかったのだろうか?」<br>「もし、あの子たちを切り捨てる決断が正しくて、守ろうとしたことが間違っているというならば」<br>世界は、呪われている―――。
:救うべき者を救えぬ、音無き慟哭。道に迷い、引き返すこともできなくなった少女の絶叫。
:虚しさと悔しさが滲ませたライダーへの問い掛けに、彼は沈黙しか答えを持ち得なかった。
;「――愚か者め。ライダー、私はそれで良かったのだ。<RUBY><RB>墜落</RB><RT>おち</RT></RUBY>てしまえば、翼を広げて飛ぶこともなかったのに」
:ライダーの「それでもアンタの失墜を止めたかった」という言葉に、届かぬ夢。見果てぬ幻想。
:<RUBY><RB>天</RB><RT>そら</RT></RUBY>に向けて、翼を広げた。それを選んだのは、他ならぬ自分自身。
:失敗すれば失墜する。道に迷えば辿り着けない。そんな当たり前の事実から、目を逸らした。目を逸らして、翼を広げて飛ぼうとした少女は寂しそうに呟く。