本編
;「ええ、私と同じ。箒星の年に生まれた十二歳の女の子。」
:亜種特異点Ⅳ『禁忌降臨庭園 セイレム』より、親友であるラヴィニアを指して。
;「……ラヴィニアの見た目をからかう人もいる。病気みたいだなんて言うひどい人も。」<br>「でも、私はとっても綺麗だと思うわ。だって星の妖精のようでしょう?」
:白化病で謎の角が生えているラヴィニアを綺麗と評するアビゲイル。何の因果か、霊基第三再臨ではアビゲイルが「星の妖精」のようと評したラヴィニアのような白髪、白肌へと変貌する。
:一方でラヴィニア自身はアビゲイルの金色の髪が綺麗だと思っており、後に自らの手を血で汚した時もアビゲイルの金色の髪が汚れるのを拒否していた。
;「でもやっぱり彼女こそ、私の一番大切な友達だわ。離れてみて、ようくわかった。」
:自分を遠ざけるラヴィニアに対し、一度は意地を張って疎遠になったアビゲイル。しかし距離を取ったことで、改めてラヴィニアが自分の心に占める大きさを知った。
;「ごめんなさい、ラヴィニア。だめ……出来ない……!」<br>「私、どうしてもセイレムを出られない……!」<br>「ごめんなさい……ごめんなさい……あなたのご家族のことも……」<br>「何と言って謝ったらいいか……。」
:船でセイレムを離れることを持ちかけるラヴィニアに対し、無意識な罪の自責からそれはできないと断る。なお、ラヴィニアの祖父の処刑はアビゲイルの叔父であるカーターの告発に端を発するものであり、ラヴィニアは彼の姪であるアビゲイルにも複雑な感情を抱いていた。
;「ああ……。」「ずっとずっと遠くへ行っても、お友達でいてくださる……?」<br>「いいえ、あなたは私の友達よ。」<br>「それでも、あなたは私の友達よ。」<br>「ありがとう……。ラヴィニア、大好きよ……。」
:ウェイトリー家の悲願のためにアビゲイルを利用していた負い目から「友達」という関係を半ば自虐的に否定するラヴィニアだが、最後は純粋無垢に友達としての関係を肯定するアビゲイルの抱擁を受容した。
;「はい……。私は……親友が欲しい、と。」<br>「神の愛の届かない。とても、とても、可哀想な子を……。」<br>「でも……私なら、愛せると、思います。」
:ランドルフ・カーターに憑依した魔神柱ラウムによる、彼女の罪の告発において。
:カーターの相談に対して彼女は無二の友達を求め、この願いを受けたラウムはラヴィニア・ウェイトリーとその一家を特異点セイレムに招いた。
:この願いが間接的にラヴィニアとの縁を結ぶきっかけとなったとも言える。
;「セイレムからは決して外には出られない。」<br>「私の罪は、まだこの地に眠っているから。」
:邪神をその身に降ろして語った、彼女がセイレムから出られない真の意味。
:死してなお、消えることがなかった生前の所業に対する罪悪感。それこそがアビゲイルをセイレムに縛る。
;「イングランドも、ローマも、エルサレムも……ぜんぶつなげてあげるわ。」<br>「そして果てなき永劫の<RUBY><RB>苦痛</RB><RT>pain</RT></RUBY>を──。<RUBY><RB>苦痛</RB><RT>pain</RT></RUBY>を、<RUBY><RB>苦痛</RB><RT>pain</RT></RUBY>を、<RUBY><RB>苦痛</RB><RT>pain</RT></RUBY>を──!」
:自分以外の死してなお生前の罪の意識に苦しみ続ける人間たちを繰り返すセイレムで見てきた。贖罪を望む者達を見続けてきた。
:罪の子ではない人などいない。であればすべてをセイレムにつなげ、苦痛をもって人類を救済する。それが彼女の邪悪な赦しである。
;「ええ……何度、箒星がめぐっても、ずっと友達よ……。」
:ラヴィニアは致命傷を負いつつも、アビゲイルと同じ箒星の子供である事を、一緒に鯨を見に行ったという記憶を受け容れた。
:例え記憶が贋作のものだとしても、友達であった事は決して嘘ではなかったのだから。
;「私──……私、死んでもいいかしら?」<br>「セイレムを捨てて、生まれ変わりたいと願ってもいいの?」<br>「神様は決してお許しにならない!けれど、私──」
:自らの罪を偽りのセイレムで繰り返した事、それでも呪われていてもセイレムを愛している罪悪感に縛りつけられていたアビゲイルだが、魔女裁判で自ら処刑を望んだサンソンの最後の言葉、「死は明日への希望」を思いだし、セイレムから旅立つことを決意する。
;「またいつか、何処かで、世界の果てで、ラヴィニアと出会えることもあるでしょう。」
:巡る箒星を巡り、見果てぬ時空へとセイレムの魔女は旅立つ。遥かなる旅の果てに、一座の面々や大切な箒星の友達と巡りあえる希望を信じて。