真名:ナイチンゲール
:フローレンス・ナイチンゲール。十九~二十世紀のイギリスにおける実在の人物。近代看護師の祖であり、統計学者、建築学者、社会学者、教育学者、看護学者、社会福祉士など、様々な顔を持つマルチタレント。
:クリミアの天使、小陸軍省といった異名を持つ女性。裕福な紳士階級生まれで社交界の華とされながら、若き日の彼女は当時の時代では卑賎な職業とされていた看護婦(看護師)となることを希望した。
:医師と看護の知識と技術を得た後、ロンドン・ハーリー街の病院で監督として看護体制改革に着手。私財を用いて近代的な設備を作り、看護師たちの状況改善にも努めた。
:その後、知己であった戦時大臣シドニー・ハーバートの頼みを受けて大英帝国陸軍病院看護婦総監督としてクリミア戦争へと従事するが、彼女が見た光景は、まさに地獄と言うべきものだった。医師や看護への不理解から来る不衛生や多数の前時代的な規則が横行し、地獄の様相と化した戦時医療の改革を務めるべく、彼女は奮起する。
:一時期は「戦時医院での死亡率が跳ね上がった」ものの活動を続け、清潔な衛生と正しい看護を徹底し、惜しみなく私財をなげうって物資を揃え、40%近かった死亡率を5%までに抑制させる成果を導いた。
:ロンドンの新聞各紙は、彼女こそ戦場に舞い降りた天使そのものであると讃え、女王の時代に現れた女性英雄に人々は熱狂した。数多の喝采があったが、彼女は微笑まなかった。自分は天使などではなく、ただ、人を助けるだけにあると。
:その後も彼女は活動を続け、戦時医療及び陸軍衛生の大改革に着手。ヴィクトリア女王さえをも味方として引き込み、改革を進めていく。やがてそれは、軍のみならずイギリスの一般社会にも波及していき、社会福祉、福利厚生といった概念の改善を成し遂げていった。彼女の生涯は名も知れぬ誰かの為に捧げ、没するまで独身で過ごしたという。
:改革のために医院の記録分析を進めた行為は、統計学の先駆としても知られている。
関連
;小陸軍省
:ナイチンゲールに付けられた異名の一つ。より正確に言うと、彼女本人というよりオールドバリントン通りにあった彼女の住居兼事務所の異名である。
:当時の劣悪な看護環境を改善するために、陸軍の関係者はおろか、大英帝国の君主であろうとも告げるべき言葉を告げていた。
:彼女が持つ『たったひとりの軍隊』とでも言うべき不屈性と苛烈さから、畏敬と恐怖と揶揄の念を込めて付けられた。
;光を掲げる貴婦人
:「クリミアの天使」「小陸軍省」と並ぶナイチンゲールの異名の一つ。「ランプの貴婦人」とも。
:クリミア戦争において、日中から看護の仕事に忙殺されながらも、毎夜毎晩欠かす事なく夜回りを行い、総延長数キロにも及ぶ病院の中を歩き回り、傷病兵を慰撫し続けたことからつけられた。戴帽式において、新しく看護師となる者たちがろうそくを手にして誓詞を読み上げるのはこの故事に由来する。