真名:無銘
:名前のない英雄。架空の英霊。フェイカー。
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:かつて正義の体現者として人生を費やし、しかしそうした生き方によって人々から疑心暗鬼を買い、社会の手で裁かれた錬鉄の魔術師の末路。
:生前、奇跡の代償として「死後の自分」をムーンセルに売り渡し、以後ムーンセルに使役されている「正義の味方」の概念。大衆が望む「正義の味方」が、人のカタチで起動した存在。
:この英霊の元になった人物、そういった過去を歩んだ人物は確かに存在するが、彼が英雄として祀られた時点でその名前は人々の記憶、歴史から忘れ去られている。
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:彼は正義の味方の概念が人のカタチで起動した存在で、人々に認められなかった名も無き正義の味方の代表者。故に、真名が「エミヤ」ではなく、「無銘」である。
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:災害で多くの人が死んだ中、自分は生き残った。たまたま運が良かっただけだというのに、そういった強迫概念(サバイバーズギルト)に囚われてしまう。
:『正義の味方』を志したのは、死んでいった人のために、そういった悲劇を二度と起こさないようにと、そう誓ったからだ。
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:子供が思い描く夢、絵空事と言われてもおかしくない『生き方』を体現するために、私欲を殺し、理想に徹していた。
:世界を脅かす悪がいるのならば、犠牲者を出す前に、力無き者達の代わりに、これを撃つ。だが、同時に多数を救う為に少数を切り捨てることを選んでしまった。
:貧困に喘ぎ、窃盗を働いた集団を、危険なウイルスが蔓延した旅客機の中で死にゆく中、それでも生きようとする者たちを、彼は切り捨ててしまった。
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:そういった正義を体現する人間は、人々の目には恐ろしく映ってしまった。なにせ、情も一切の交渉の余地もなく、「悪」を裁いたのだから。ならば何故、何の見返りもなく、他人に尽くす事ができるだろうかと。
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:ソレに恐怖した友人に捕らえられ、社会の手によって裁かれてその一生を終え、死後、その人間性を剥奪されてしまった。
:皮肉にも、彼が切り捨ててきたものと同じような結末を迎えてしまった。