アトラス院
アトラス院
魔術協会・三大部門の一角。別名「巨人の穴倉」。西暦以前から存在する、エジプトを根拠とする錬金術師の集団。錬金術に特化し、独自の成長を遂げた学院。
時計塔に所属しているような、中世を発祥とする西洋魔術に傾倒した現代錬金術とは別物で、魔術の祖と言われる錬金術師の集まり。
錬金術として万物・物質の流転は共通のテーマだが、アトラス院ではそれに加えて事象の変換も研究している。また、アトラスの錬金術師は転生を実現したミハイル・ロア・バルダムヨォンを軽視している。
錬金術、その中でも思考分割、高速思考といった、人体を演算装置とする術に特化している。魔術回路数が少ないことも特徴で、単体では自然干渉系の術はまったく使えない。
しかし「自らが最強である必要はない。最強であるものを作ればいいのだから」との考えから、それをよしとしている。
他の二部門を始め外部との交流は基本的に無く、中でもプラハの協会とは致命的に仲が悪い。『2015年の時計塔』では「光さえ抜け出せないという『生きた奈落』」と表現されている。
ただし、稀に他の協会や聖堂教会からの依頼で錬金術師を貸し出すことがある。そのためには過去にアトラス院が発行した「契約書」が必要。七枚だけ発行されたこれを回収することも、アトラス院の目標の一つ。
多くの武器(兵器)の製造をしており、その最たるものが「七大兵器」として展示されている。プラハの錬金術師からは「アトラスの封を解くな。世界を七度滅ぼすぞ」と言われており、初代院長が演算した世界の終末を回避するために兵器を作り続け、そしてその兵器は世界を滅ぼしうるがために廃棄され続ける。
魔術協会は基本的に全てそうだが、「自己の研究は自己にのみ公開する」という規律が、アトラス院では特に徹底されている。
所属者
- ズェピア・エルトナム・オベローン
- 数代前の院長。後に発狂し、同院を去ったものと思われる。
- シオン・エルトナム・アトラシア
- アトラス院次期院長候補生。
- ヘルメス・シリス・アトラシア
- 詳細不明。特性は「未来」
- 玄霧皐月
- 封印指定を受け失踪。
関連組織
- 魔術協会
- 部門の一角。他の部門(時計塔、彷徨海)との交流は途絶えている。
- 人理継続保障機関フィニス・カルデア
- 霊子演算装置・トリスメギストスを提供している。
- 他の組織に対して同様、積極的な干渉を避けている。
- 思想的にも、「滅びの未来は変えられない」とするアトラスと「滅びの未来を回避する」とするカルデアとで決定的な断絶がある。
Fate/EXTRAにおけるアトラス院
別名「蔵書の穴倉」。
『EXTRA』の世界では、マナが枯渇した2030年代においては魔術協会そのものが消滅し、マナに頼らない魔術大系を持つ彼ら錬金術師のみが旧き魔術の探求を続けている。魔術協会の崩壊後も在り方を変えず、逃亡した魔術師を迎えることはせず、世界から孤立した閉鎖社会であり続けている。
霊子虚構世界の聖杯戦争にも根源に至るための聖杯を求め、ラニ=VIIIを送り込んでいる。
ラニの言葉によれば、彼女の師であるシアリム・エルトナム・レイアトラシアがアトラス院に残った最後の一人。これは長く次代の子供が生まれず、古参も自決死続きだったことが原因で、魔力枯渇とは関係ない。
西欧財閥の支配は人類の滅亡を加速させると結論付けているが、西欧財閥にもそれに対抗するレジスタンスにも特段の対立も協力もしていない。
技術水準はフォトニック結晶の研究において西欧財閥の先を行くが、それでも3cm角の筐体を製作するのが限界。またホムンクルスを鋳造する技術はあるのだが、その素材がもうないため実質的にラニが最後のホムンクルスである。
凄腕の霊子ハッカーに関する記録を収集したライブラリーを所有し、ラニはその内容を熟知している。
2021年以降、クローン売買シンジケートからクローンを購入しており、その数は毎年百人単位で、クローンの密売組織にとっては有力な購入先である。
2032年に近づくとその数はさらに増加し、大量のクローンを購入してアトラス院の施設内で生育させ、「様々な人体改造を施している」「クローンに遺伝子レベルの注文をつけている」といった噂もある。
「Fate/the Fact」の調査によれば、アトラス院が購入しているクローンは魔術回路を遺伝子レベルで組み込んだものであり、アトラス院に供給するためのクローン製造工場がアフリカ大陸に所在するとのこと。
所属者
- シアリム・エルトナム・レイアトラシア
- ラニの「製作者」であり、師でもある錬金術師。
- ラニ=VIII
- シアリムの従者であるホムンクルス。
関連組織
- 西欧財閥
- 敵対的でないため、中立の立場として存在を許されているが、旧い時代の研究を未だに続けているため監視対象にされている。
- レジスタンス
- 西欧財閥の方針が世界の停滞を招いているのは理解しているが、彼らに協力する気も全く無く、逃亡してきた者を受け入れず、中立の立場を貫いている。
言及作品
メモ
- アトラス院はエジプトにある、とされるが、肝心のアトラス山脈はモロッコとアルジェリアに跨っており、エジプトは特に関係が無い。
- おそらくはその語源の「西の果てで天空を背負う神」アトラス神に由来している。日本人にはなじみが薄い習慣だが、ヨーロッパでは「西」に関係する単語に「アトラス」が付けられている事がある。「アトランティックオーシャン(=大西洋)」や、「アトラスの柱(=ジブラルタル海峡)」など。どうでもいいが後者は「ヘラクレスの柱」とも呼ばれる。
- 外観は、近未来的な四角錐が無数に立ち並んだり逆向きに地面に突き刺さっていたりというアヴァンギャルドな代物で、スーパーコンピューターとピラミッドの合いの子を連想させる。背景に見える砂漠や「まともな」ピラミッドからの浮き具合がなんともシュールである。
- 時計塔は時代が進むにつれて、俗な権力争いにばかりかまけたり、噛ませ犬的なキャラクターを大量生産するなどイメージダウンが著しく、彷徨海はそもそも話題に出る事すらない。これらガッカリな他の部門と比べれば遥かに重要度が高い部門だったりする。その反面、その技術力から、世界存亡に関わる厄ネタの根本にも成り得る。
- …だったのだが、上層部がアレなのはこちらも同じで、自己公開のみの原則も有名無実化しているらしい。実際、シオンがアトラス院に帰還した後ほぼお咎めなしだったのは、経験したタタリのシステムと、そこから発展させた自己完結型演算器「オシリスの砂」のシステム概念の知的所有権を放棄した上で提出したからだとか。権力志向の腐敗というよりは、マッドサイエンティスト寄りでのアレさではあるが。
- 上記のように歴代のアトラシアは全員「滅びは避けられない」という未来に至り、滅びを回避する為に躍起になっている(オシリスの砂となったシオンを除く)が、「滅びを回避する」ことが主目的となっており、別の世界のエインズワース家のように、「滅びた後でも人間が生きていけるようにする」という次善の策は顧みられていない。
- 実は、歴代のアトラシアは「人間を進化させる」という答えの可能性には全員たどり着いており、そちらのほうが建設的で楽だと見なしているが、「人類を進化させると宇宙の寿命が縮まる」という結論にも同時に達してしまったらしく、「進化せずに滅びから逃げ続けるしかない」という絶望的な答えに至ったようである。
- 『EXTRA』の世界では、アフリカのクローンの密売シンジゲートとの関係や西欧財閥とレジスタンスの抗争へのしたたかな対応など、世俗的な面ではキナ臭いイメージが強く描かれている。