;「無欲な王なぞ飾り物にも劣るわい!」<br>「セイバーよ、“理想に殉じる”と貴様は言ったな。なるほど往年の貴様は清廉にして潔白な聖者であったことだろう。<br> さぞや高貴で侵しがたい姿であったことだろう。<br> だがな、殉教などという茨の道に、いったいだれが憧れる? 焦がれるほどの夢を見る?<br> 聖者はな、たとえ民草を慰撫できたとしても、決して導くことなどできぬ。<br> 確たる欲望のカタチを示してこそ、極限の栄華を謳ってこそ、民を、国を導けるのだ!」<br>「王とはな、誰よりも強欲に、誰よりも豪笑し、誰よりも激怒する、清濁含めてヒトの臨界を極めたるもの。<br> そう在るからこそ臣下は王を羨望し、王に魅せられる。一人一人の民草の心に、“我もまた王たらん”と憧憬の灯が燈る!」<br>「騎士どもの誉れたる王よ。たしかに貴様が掲げた正義と理想は、ひとたび国を救い、臣民を救済したやも知れぬ。<br> それは貴様の名を伝説に刻むだけの偉業であったことだろう。<br> だがな、ただ救われただけの連中がどういう末路を辿ったか、それを知らぬ貴様ではあるまい」<br>「貴様は臣下を“救う”ばかりで“導く”ことをしなかった。<br> 『王の欲』のカタチを示すこともなく、道を失った臣下を捨て置き、ただ独りで澄まし顔のまま、<br> 小綺麗な理想とやらを想い焦がれていただけよ。<br> 故に貴様は生粋の“王”ではない。己の為でなく、人の為の“王”という偶像に縛られていただけの小娘にすぎん」 | ;「無欲な王なぞ飾り物にも劣るわい!」<br>「セイバーよ、“理想に殉じる”と貴様は言ったな。なるほど往年の貴様は清廉にして潔白な聖者であったことだろう。<br> さぞや高貴で侵しがたい姿であったことだろう。<br> だがな、殉教などという茨の道に、いったいだれが憧れる? 焦がれるほどの夢を見る?<br> 聖者はな、たとえ民草を慰撫できたとしても、決して導くことなどできぬ。<br> 確たる欲望のカタチを示してこそ、極限の栄華を謳ってこそ、民を、国を導けるのだ!」<br>「王とはな、誰よりも強欲に、誰よりも豪笑し、誰よりも激怒する、清濁含めてヒトの臨界を極めたるもの。<br> そう在るからこそ臣下は王を羨望し、王に魅せられる。一人一人の民草の心に、“我もまた王たらん”と憧憬の灯が燈る!」<br>「騎士どもの誉れたる王よ。たしかに貴様が掲げた正義と理想は、ひとたび国を救い、臣民を救済したやも知れぬ。<br> それは貴様の名を伝説に刻むだけの偉業であったことだろう。<br> だがな、ただ救われただけの連中がどういう末路を辿ったか、それを知らぬ貴様ではあるまい」<br>「貴様は臣下を“救う”ばかりで“導く”ことをしなかった。<br> 『王の欲』のカタチを示すこともなく、道を失った臣下を捨て置き、ただ独りで澄まし顔のまま、<br> 小綺麗な理想とやらを想い焦がれていただけよ。<br> 故に貴様は生粋の“王”ではない。己の為でなく、人の為の“王”という偶像に縛られていただけの小娘にすぎん」 |