概要
「根源」へ至ることを渇望し、そのための手段として[[魔術]]を用いる者。なお、根源への興味がなく、他の目的のために魔術を扱う者は「魔術使い」と呼ばれる。
魔術師とは根源への挑戦者であり、あり得ない事に挑むことが魔術という学問の本質である。しかし、根源への到達は一代程度の研究では不可能である。代を重ねて研究を子に継がせ続け、より強い魔力を持つ子孫を作り、子孫もそれを繰り返す。その道のりに果てはない。仮に辿り着ける資質を持った子孫が現れても、最後には[[抑止力]]が待っている。魔術師が最初に習うことは、「オマエがこれから学ぶことは、全てが無駄なのだ」ということだという。
魔術師たちの日常は、その大半が「研究」で占められ、それ以外で魔術を用いるものは少数派である。例えば魔術を使用して労働を行い、その代価として賃金を得ている魔術師は少ない。研究対象ではなくツールとして魔術を使う者<ref group="注">例を挙げるならば、魔術を使う暗殺者。</ref>は単なる「魔術使い」であり、魔術師からは軽蔑の視線を向けられる。また、魔術師だからといって日常生活で魔術を使うものは少ない。日常の用を足す手段に魔術はコストが高いということもあるが、“神秘の秘匿”を重んじる魔術協会は魔術が世間に知られることを極端に戒めており、目立つ魔術の使い方をした魔術師は粛清される<ref group = "出" name="『Fate/complete material Ⅲ』41ページ">「魔術師」『Fate/complete material Ⅲ』p.41</ref>。
基本的に親から子へ一子相伝で自分たちの魔術と研究を受け継いでいくが、これは魔術刻印が複製できないことが大きな原因である。選ばれた後継者一人だけがその家の全ての魔術を受け継ぐことになり、このような家を「魔術師の家系」と呼ぶ。反対に後継者以外の子には親が魔術師であることすらも教えない。ただ、魔術回路は必ず遺伝するわけではなく、魔術師が子を成せないということもあり得る。その場合、魔術回路を持つ子供を養子にして家を存続させる。ただ、魔術刻印は複製は無理でも株分けは可能であり、ある程度以上の規模を持つ魔術師一族の場合は自身の家系に問題があった場合のスペアや単純に人手を増やすためなどの理由で「分家」を作る事はある。魔術の研究は己一人のものではなく、先祖が成した成果を魔術師は背負っている。ゆえに、まっとうな魔術師にとって、子に「魔術師になんてなる必要はない」と言ったり、自らその血統を絶えさせるようなことをする者は、度し難い異端なのである。なお、何代も続く古い家門を持ち、研究のための資金を維持し続けられる、という境遇の由緒正しい魔術師は、表の社会では貴族・富豪である場合が多い。<br>
また、家で修めている魔術の衰退が見込める場合、分家にその魔術の理論や術式など丸ごとを託し、保管させる事がある。
人間性に関しては一般的な価値観からかけ離れており、一般人の命には関心を持たず、目的のためなら、実験材料にすることも厭わない。このように魔術師は特有の危うさを持っており、一言で言うのならば道徳が欠けている<ref group = "出">『冠位時間神殿 ソロモン』プロローグ</ref>。例外もいるが、一般人から見た魔術師は総じて人でなしであり、[[オーランド・リーヴ]]は「汚職に勤しむ悪徳政治家と大差ない」と評している<ref group = "出">「日常の被膜」『Fate/strange Fake』第4巻p.17-22</ref>。
属性
魔術師個人が持つ、その魔術師がどのような特性の魔術と相性が良いか、どのような特性を持ちやすいかを定める要素。[[時計塔]]では古代ギリシャの四大元素に、空と架空元素2つを加えた7つの属性を定めている。通常は1人に1つの属性だが、なかには2つを兼ね備えた二重属性、さらには五大元素全てを兼ね備えた「アベレージ・ワン」の魔術師も存在する。また五大元素は魔術の流派によって異なり、東洋の五行説が有名である。起源が強く出る余り、通常の分類に収まらない例も存在する<ref group = "出" name="『Fate/complete material Ⅲ』41ページ"/>。属性の判定方法に「聖別」があり、これは香を焚き、タロット占いらしきもの、性格診断の質問を通して属性を調べるが、五大元素以外は特定できない<ref group="出">『Fate/stay night』Heaven's Feelルート九日目『写真』、『選択肢。』</ref>。
;五大元素
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:【火】生命と死の象徴とされ、破壊的な魔術との相性は良い。最も多いとされる属性。「ノーマル」と呼ばれる<ref group = "出" name="『Fate/complete material Ⅲ』41ページ"/>。
:【地】詳細不明。
:【水】詳細不明。間桐家が代々持つ属性<ref group = "出" name="『Fate/complete material Ⅲ』41ページ"/>。
:【風】希少な属性。「ノウブル」と呼ばれる<ref group = "出" name="『Fate/complete material Ⅲ』41ページ"/>。蒼崎家の属性<ref group="出" name="wind">「用語辞典-フォルテ」『Talk.』</ref>。
:【空】上記の四大に新たに加わった、天体を構成する第五の元素。エーテル<ref group = "出" name="『Fate/complete material Ⅲ』41ページ"/>。
:【アベレージ・ワン】上記の五大元素全てを併せ持つ<ref group = "出" name="『Fate/complete material Ⅲ』41ページ"/>。
;架空元素
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:【虚】魔術において、「ありえるが、物質界にないもの」。虚数とも呼ばれる<ref group = "出" name="『Fate/complete material Ⅲ』41ページ"/>。
:【無】魔術において、「ありえないが、物質化するもの」。物理学や数学で用いられる「無」とは意味が異なる<ref group = "出" name="『Fate/complete material Ⅲ』41ページ"/>。
;その他
:【剣】[[衛宮士郎]]が体内に「全て遠き理想郷」を埋め込んでいたことで変化した。
特性
魔術の基本となる五大元素魔術は、五大元素を直接操るもの。そこに「強化」、「投影」、「転換」といった特性を加えることで用途を広げる。「強化」一つとっても、五大元素に応じて5種に分かれる。火属性の強化であれば火の勢いが強まるし、水属性の強化なら水の勢いが強まる。魔術が高度になると特性の方が表に出て、属性は傍目には分かりにくくなるが、それでもその根底には確かに属性が存在する<ref group = "出" name="『Fate/complete material Ⅲ』44ページ">「魔術の特性」『Fate/complete material Ⅲ』p.44</ref>。
代々の研究成果、刻印に遺された神秘により、家系ごとに専門とする特性がある。但し属性と違って後天的に習得することも無茶ではない。例として遠坂凛は遠坂家に伝わる「転換」の他に強化も使う<ref group = "出" name="『Fate/complete material Ⅲ』44ページ" />。
衛宮士郎の「剣」と間桐桜の「虚数」は属性とも特性とも言われている<ref group = "出">「奈須きのこ一問一答-サーヴァント関係」『Fate/complete material Ⅲ』p.133</ref>。
魔術刻印
魔術師の家系が歴史とともに受け継いできた、ある意味で最大の家宝であり、最大の呪いでもある一子相伝の固定化された神秘。魔力を通すと刺青状に光る。生涯を以って鍛え上げ固定化(安定化)した神秘を、[[幻想種]]や[[魔術礼装]]の欠片、魔術刻印の一部などを核として刻印にし子孫に遺したもの。<br>本来、魔術刻印は何百年も醸造して作られる新しい臓器のようなもの。臓器であるがゆえ血族以外の者にはまず適合しないし他人が干渉する余地も薄い。血族であっても外付けの臓器を移植するようなもののために当然拒否反応もあり、移植のためには数年かけて薬を飲んで体質を変化させてゆく必要がある場合もある。またそこまでして移植した場合でも完全に自分の肉体と同じように使うことは難しく、使用に際して痛みを伴うケースもある。<br>
なお、全く鍛えられておらず歴史を持たない魔術刻印の形状は「純然たる四角形」である<ref group="出">[https://twitter.com/makoto_sanda/status/1177963868150124545 三田誠Twitter2019年9月29日0時10分]</ref>。この四角形は魔術刻印の「器」であり、魔術刻印を鍛えることは、この「空の器」を埋めていくことと同義である。
魔道書でもあり、本人が習得していない魔術でも式に魔力を走らせれば行使できる。モノによっては刻印そのものにも自律意思が備わっており、持ち主の魔術に連動して独自に補助詠唱を始めたり、意識を失った状態でも自動的に蘇生魔術式を読み出したりする機能がある場合もある。
その血統の歴史全てが刻まれているといっても過言ではなく、魔術刻印を継承した魔術師は一族の無念を背負って、次の後継者に刻印を譲り渡さねばならない。ある意味、代を重ねて重みを増していく呪いと言える。
刻印を複製することはできず、魔術師の家系が一子相伝なのは、刻印を受け継ぐ者を複数にはできないため。<br>ただし、何代も続いた刻印を複製するのではなく、新規に魔術師となった人間がその一代の魔術を刻印として残すことは可能。継承者以外の人間が魔術師に弟子入りし、新たに自分の家を興すということはできるので、魔術師の家系には新しいものと古いものがそれぞれある。もっとも、自身と自身の家系の魔術の完成が第一目的である魔術師が弟子をとるというのは、何がしか理由があった場合のことであり、積極的に行われることではない。
古い魔術師の家がはばを利かせているのは、魔術刻印の存在が大きい。<br>現代における新たな魔術刻印は、ほとんどの場合有力な家系から魔術刻印のごく一部を移植してもらうことで造られており、それを株分けと呼ぶ。同じ魔術系統を戴く複数の家系による「門派」、同じ家名を持ちながら本家や分家などに複数の魔術師を擁する「一門」などは、過去にそういった株分けにより生まれていったもの。<br>
株分けをされる魔術師にとっては幻想種や魔術礼装の欠片などの異物を埋め込むよりもずっと若い世代で魔術刻印を完成させることができるというメリットがあり、また魔術刻印を株分けする魔術師にとっては一時的に刻印に傷はつくもののそれは数ヶ月から一年程度調律師の施術を受けることで回復できる上、株分けした家からの絶大な忠誠を期待できるというメリットがある。<br>大元となる本家の魔術刻印は源流刻印と呼ばれる。
刻印は代を重ねる事で強化されていくが無限に強化できるわけではなく、「成長の限界」を迎えた刻印はどれだけ代を重ねても成長しない為、そのような魔術刻印を持った家系は衰退し、やがて消滅する事となる。
なお、「魔術刻印」という名称はここで述べられている「魔術師の家系が持つ遺産」につけられた固有のものではない。<br>「魔術」で扱われる「刻印」──何らかのモノ(人体も含む)に刻まれることで魔術的効果を発揮する文字・図形(例えば「ルーン文字」など)全般に、「魔術刻印」という名称は使用されている。
魔術組織
魔術師による団体。<br>
著名なものに[[魔術協会]]があるが、これは西洋魔術の組織であり、他の地域にはそれぞれ独自の魔術組織がある。<br>
中国を中心として大陸では思想魔術が主に使われており、[[螺旋館]]や[[山嶺法廷]]がこれらをまとめる魔術組織となっている。<br>
日本の魔術組織としては西洋魔術とも思想魔術とも異なる体系であり、[[夜劫家]]のように神の欠片を介して神代の権能を行使する特異な一族が群雄割拠しており、取りまとめる上位組織は現在確認されていない。<br>
また、実戦派法術師の組織や、魔術協会に属する西洋魔術の使い手もそれなりにおり、複数の魔術体系が東西問わずに入り混じった特異な場所となっている。