ウィリアム・シェイクスピア
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キャスター (Apocrypha・赤)
- 真名:シェイクスピア
- 身長:180cm / 体重:75kg
- 出典:史実
- 地域:イングランド
- 属性:中立・中庸
- イメージカラー:ゴールデンイエロー
- 特技:不朽のベストセラー作品の執筆
- 好きなもの:非凡、逸脱、突出、拍手喝采 / 苦手なもの:平凡、平穏、凡庸、ブーイング
- 天敵:スランプ
- CV:稲田徹
「魔術師」のクラスのサーヴァント。聖杯大戦において、赤の陣営に属する。中世ヨーロッパ風の洒脱な衣装を身に纏った伊達男。
- 略歴
- 真名はウィリアム・シェイクスピア。16世紀に登場した、歴史的にも名高い劇作家。卓越した人間観察眼からなる内面の心理描写により、引退するまでの約20年間に「ハムレット」、「マクベス」、「オセロ」、「リア王」の四大悲劇をはじめ、「ロミオとジュリエット」、「ヴェニスの商人」、「夏の夜の夢」、「ジュリアス・シーザー」、「お気に召すまま」など数多くの傑作を残した。
- 聖杯大戦において赤のサーヴァントとして召喚される。本来の召喚者であるマスターではなくシロウ達に与し、彼らの野望を知りながら協力しているが、自らの「物語」への欲からバーサーカーにミレニア城塞の在り処を教え、暴走させるトラブルメーカーでもある。
- ユグドミレニア攻撃の際はシロウの援護に努め、黒のバーサーカーの足止めを行う。大聖杯奪取後は、空中庭園内部に「工房」という名の個人的な書斎を作り、ひたすら執筆活動に明け暮れる。
- 人物
- 一人称は「吾輩」。『物語』至上主義者で、たとえどのような手段をとっても最高の『物語』を目撃することを至上の目的としている。そのため善悪になど興味は無く、シロウ達の理想が多くの命を踏み躙るものであっても一向に構わない。彼にとっては世界は驚天動地の『物語』でなけれなならず、そのためなら平気で味方を死地に追いやる。
- ただその行動に悪意は無く、物語を紡ぐ非凡な存在を心から愛しているが故。そのため当事者意識に乏しく、視点が作者的。他人事ゆえにハイリスク・ハイリターンな戦いを好み、自分自身は観客気分で見物に回ったり、心境をいちいち聞いたりして味方も敵も苛立たせる。
自己顕示欲が強い典型的なナルシストで、台詞に自作を引用すること奇妙な話し方で喋り、自分で買ってきた自著をシロウに薦めるほど。また劇作家だっただけに、セリフに作劇の用語を用いたりする。 - 一方でつまらない『物語』を強く嫌悪しており、『物語』を壊しかねない存在を全力で排除しようとする。
- 能力
- 「キャスター」でありながら魔術師ではなく、工房や礼装を作成することは勿論、使い魔を使役して情報収集することなど一切出来ない。戦闘能力もまるで無く、一見すると最低最弱のサーヴァントでしかない。
- しかし固有スキル『エンチャント』を持ち、物品に強力な機能を付与することが可能。これは魔力による物ではなく、文豪・シェイクスピアが魂を篭めてその物品についての文章を書く事によって、その物品を『概念武装』に仕上げると言う特異なスキル。道端の石ころにすら必殺の概念を所有させる事ができ、曰くのある(文章を書ける)物品ならば宝具にすら昇華する事が可能。シロウの所有する「とある剣豪が所有していた日本刀」三池典太三世はこのスキルによってCランク宝具となった。
- また『自己保存』によってマスターが無事な限りは殆どの危機から逃れることができる。つまり、本人は全然戦わない。
ステータス
クラス | マスター | 筋力 | 耐久 | 敏捷 | 魔力 | 幸運 | 宝具 | クラス別能力 | 保有スキル | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
キャスター | シロウ・コトミネ | E | E | D | C++ | B | C+ | 陣地作成:C 道具作成:- |
エンチャント:A 自己保存:B |
|
主人公 (Grand Order) | E | E | D | C++ | B | C+ | 陣地作成:C |
宝具
- 開演の刻は来たれり、此処に万雷の喝采を(ファースト・フォリオ)
- ランク:B
種別:対人宝具
レンジ:1~30
最大捕捉:1人
由来:シェイクスピアが手掛けた戯曲をまとめて出版した最初の作品集。 - 世界改変型宝具。世界を閉塞させ、脚本を産み出し、物語を強制させる。
- 対象者の精神に働きかけ、シェイクスピアが書いた物語を幻覚のように体験させることができる。その強制力は固有結界にも匹敵し、あらゆる攻撃を無効化するルーラーですら逃れることはできない。ただし肉体的なダメージや苦痛まで与えることはできないため、戦闘に用いるとすればショッキングな光景を見せて「心を折る」ことに使う程度である。成功すれば、対象を完全無防備な状態にするバッドステータス「放心」が付与される。
- 本来なら相手の真名を把握していない限り、有効活用することのできない宝具だが、ルーラーとして「真名看破」のスキルを保持しているシロウとの連携によって、相手の親しい人や因縁のある人物、トラウマの元となった者を呼び出し、ピンポイントで心の隙を突く悪辣な精神攻撃宝具と化している。
- ルーラー曰く三流宝具。ただしその三流宝具によってルーラーに完勝している。
- 黒のバーサーカーに対しては、彼女の創造者であったヴィクター・フランケンシュタインを召喚し、時間稼ぎに用いた。召喚された人物は対象者と全く見分けがつかないが、キャスターの意向で、その人物が本来行う筈のない言動をさせることが出来る。また召喚された者は誰かに殺されない限り、多少の事では消滅せず、断末魔の悲鳴すら上げる。幻影の正体は木の人形のような物が対象者に化けたものらしく、消滅時には木屑が残る。
- 企画段階では効果が全く違い、『結果』を改竄する本の宝具だった。時間を巻き戻すことで目の前で起きた事象を一定回数までやり直しが可能で、何度戦っても敵わない相手には無力だが倒せる可能性がある相手には有効。使用には「NON SANZ DROICT(無権に非ず)」の詠唱が必要。
- しかし「物語の展開的にあまり意味を持たない」「企画段階『Apocrypha』で設定が作られてから小説版『Apocrypha』までの間に魔法使い(蒼崎青子のことと思われる)が登場した」という理由で没となり、効果が後述の『国王一座』のアップグレード版に変更された。
企画段階での宝具
- 国王一座(ザ・グローブ)
- 由来:ジェームズ一世が提唱したシェイクスピアの劇団。
- 出現した役者が自在に姿を変え、対象を謀る。相手のよく知る人物を演じることもできるが、魔術の心得がある者は抵抗を試みる機会がある。
- 企画段階では「宝具」として扱われ真名も存在したが、小説版では『開演の刻は来たれり、此処に万雷の喝采を』の能力が『国王一座』のアップグレード版に変更されたため、登場しない。
登場作品と役柄
- Fate/Apocrypha
- 「赤」のサーヴァントとして登場。
- ちびちゅき!
- おそらく教師役。殺生院キアラに依頼され、初等部のテストの文章題を官能小説にするという暴挙をやらかしかける。
- Fate/Grand Order
- キャスターのサーヴァントとして参戦。レア度はUC(☆2)。イラストレーターは近衛乙嗣。
人間関係
- シロウ・コトミネ
- 「マスター」と呼び、彼の物語を描くために積極的に協力している。彼を召喚した元々のマスターは不明。
- アサシン
- 一応、同志。彼女には宮廷道化師のような態度で接しているが、敬う気持ちはあまり見受けられず、一方のアサシンからもあまり信用はされていない。だが、シロウと最も近いサーヴァント二騎と言う事で、彼らが会話するシーンは多い。
- アーチャー
- 彼が戦闘代行者であるサーヴァントとして、余りに無能である上に性格的にもかなり相性が悪いため、「汝の頭がおかしいのは知っている」と冷たい事を言われている。また戦力としてもカウントされていない。
- ランサー
- ランサーは彼が非常に特殊な性癖のある人物であるためか、何度か彼の心を分析し、容赦のないコメントを送っている。
だが何度コメントされても動じず、いつもの仰々しい態度を変えない。 - バーサーカー
- より面白い物語を求め、彼にミレニア城塞が何処にあるのかを教え、その暴走を加速させる。
- ルーラー
- 「哀れで狂った田舎娘」。
- 英国だの仏国だの歴史的なことは彼にとってはどうでも良く、最早含むところもないが、『最高の物語』の邪魔をする彼女は容赦せず潰そうと考えている。生前に著作で彼女を散々悪し様に描いたことに関しては、多少悪いことをしたと思ってはいる。
名台詞
- 『―――
馬だ !
馬を引け !
馬を引いてきたら王国をくれてやるぞ !』 - 初登場時のセリフ。彼のセリフは大体この調子で、頻繁に自作のセリフが引用されている。出典は「リチャードIII世」から。強欲で滑稽な支配者リチャードIII世の最後の台詞。
- 恐らくバーサーカーが暴走を始めたという、緊急事態が発生した事を暗示する意味で、このセリフを選んだのだと思われる。
- 「トラブルメーカー、またはトリックスターとも言うようですぞ、
吾輩のような男は」 - アサシンにバーサーカーを暴走させたことを責められても、馬耳東風。自覚があっても全く反省していない。
- 「ははは、これは手厳しい。しかし世のキャスターが皆、吾輩のように優れた文筆家ということはないでしょうな!」
- 赤のアサシンに痛いところを突かれながらも、平然とこう切り返す。
- 自画自賛しつつキャスターにこういった人種のものは少ないと語るが、メタ的には「魔術師」のサーヴァントに文筆家出身のものが多くなっている現実がある。
- 「おお、なるほどなるほど!それでは愛しく憎悪しているであろう彼に会わせてあげましょう!
『人間の一生は彷徨い歩く影法師 、哀れな役者に過ぎぬ 。
己の出番の時は 、舞台の上でふんぞり返って喚くだけ !』 - 宝具『開演の刻は来たれり、此処に万雷の喝采を』。悪辣なる虚構の劇場。
- 「あれが聖杯……! 良い! あれは良すぎる!
素晴らしい! 素晴らしい、素晴らしい、素晴らしいッ!!
ここから、吾輩ですらも感じ取れるあの圧倒的な魔力!
飛び込み溺れ、一体化したいとさえ願う! その癖、あの剥き出しの人体のような醜さ!
まさに『綺麗は汚く、汚いは綺麗 !』」 - 大聖杯の輝きを目にして発した歓喜の叫び。
彼の自作を引用する喋り方も相まって、最早、狂気すら感じられる。
- 「それは無論、“面白そうだから”に決まっているではありませんか!
何しろ人類救済ですよ、誰かを救いたいなどという矮小なものではない。全人類、この世界に住む六十億の救済。
しかも彼はただの聖人などではない。善行を積み、祈るだけで救われようとした面白味のない連中とは訳が違う!
彼は戦い、そして敗北し――無残に全てを奪われた!
そう彼は全てを恨んでいる筈です! 三万七千人を皆殺しにした統治者を! それをただ見過ごした人々も!
だが彼は恨まない!そればかりか、彼らすら救済の対象だ!
全人類を救うという事は、そういうことでしょう。それも彼も理解している!
その苦悩、その煩悶、何たる悲劇!
それ故――彼はひどく面白い。
ならば退屈なマスターなど放逐して当然でしょう。吾輩はマスターに仕える者ではなく、物語に仕える者故に!」 - 何故シロウに手を貸すのか問われて。
「ただ面白いからマスターに手を貸し、その思想自体には何の興味も無く、『物語』こそ全てに優先される」と言い切る。
英霊として気高くもなく、立派な振る舞いであると呼べず、どちらかというと「信念」より妄執に近い。だが紛れもない本心からの言葉であり、ここまでの領域に至ると誰もが認めざるを得ない。
- 「――何を視たのです?何を知覚したのです?
愚かなこと。
何を視ようと、それは最早過去の残骸に過ぎませぬ 。
我々は過去の亡霊、亡霊が過去を悔やめばただの怨霊でしかない」 - 何も知らぬはずの道化の言葉は、これ以上ないほどに純潔の狩人の心底を抉り出し彼女を憤激させた。
- 「ははははは!
終わりだ ! これで終わりだ!完結した!完結したぞ!
ああ、だがしかし――主役は我輩が演じたかったなぁ! 」 - 全てが終わり、崩れ行く空中庭園の中、稀代の劇作家は己の物語を一心不乱に書き上げ、終止符を打った。
- その胸に去来するのは、かつて役者を目指し、挫折した過去であろうか。
メモ
- キャラクターデザインは倉花千夏氏。設定制作を担当したのは賀東招二氏。
- 筆者泣かせなキャラクター。東出氏によれば「描写がものすごく大変」で、シーン毎に合っている名言を必死になって漁らなければならず、かといって既存の翻訳をそのまま使うわけにもいかないので、原文を引っ張り出してそれっぽく独自訳をしているとのこと。その後Apocrypha/materialでも「会話シーンは毎回後回しにする程頭の痛い代物」とコメントしており、かなり苦労していたことが伺える。
- 奈須氏も、「他のキャラクターだと一行で済むところが、三行に膨らんでしまう」とコメントしており、作者と原作者から苦言を呈されている。
- サーヴァントとしてはかなり特異な立ち位置だったが、『Fate/EXTRA CCC』で同じようなスタイルの童話作家が登場。また、僅かに先行して『Fate/strange fake』にも似たタイプの小説家が登場している。
話題まとめ
- 謎の劇作家
- 高名な劇作家であるにも関わらず、手紙や日記はおろか、自筆原稿すら存在しておらず、学歴にも不自然な点が多々ある為、様々な別人説が流布している。一番有名なのは、同時代の哲学者フランシス・ベーコンや、彼と同じく劇作家として名を馳せたクリストファー・マーロウのペンネーム説であろう。『Fate/Grand Order』のプロフィールでも有名な作家でありながら、その半生は謎に包まれている。と記述されている。
- 彼の描いた「魔女ジャンヌ・ダルク」
- 彼は初期に作った史劇『ヘンリー六世 第1部』で、ジャンヌ・ダルクを魔女・売女として描いている。
- この作品の彼女は自分が神に選ばれた神聖な存在であると喚き、高貴な生まれであり羊飼いの娘ではないと主張し、処刑される寸前までイングランドへの呪詛を叫び続け、妊娠していながら聖処女を自称するなど徹底的に異端者の淫婦として描かれている。
- シェイクスピアに限らず、15世紀以降の入手可能な英語の文献ではジャンヌ・ダルクは同様に描写されている。このような扱いをされたのはジャンヌがイングランドの敵だったからである。当時アルマダの海戦でフランシス・ドレイクがスペイン無敵艦隊を破り、イングランドの愛国心は頂点に達していた。この愛国心が観客の史劇への関心を高めることになり、史劇の内容もその時勢に合うものが選ばれていた。
- そういった時代背景が存在するが、彼の描いた「魔女」ジャンヌ・ダルクは特に有名で、その描写からは悪意すら感じられる。何の因果か、聖杯大戦にはルーラーとしてジャンヌが召喚されており、死後、徹底的に侮辱し売女扱いした彼女にどう関わってくるのだろうか。