封印指定
封印指定
魔術協会が判断した、希少能力を持つ魔術師に与えられるもの。
その奇跡とも言える希少能力を永遠に保存するために、対象の魔術師を「貴重品」として優遇し、「保護」する。しかしそれは名目にすぎず、実際は一生涯幽閉し、その能力が維持された状態で保存する。言ってしまえば、ホルマリン漬けの標本にして飾るのと変わらない。要するに、協会自身が封印するということ。
対象は「一代限り」であり、「学問では習得できない」もの。つまり、その魔術師の死と共に失われ、他の手段では再現できないもの。
封印指定は、協会に所属する魔術師にとって最高級の名誉であると同時に、厄介ごとでもある。なにしろ、封印されては研究を続け、次の段階を目指すこと(根源に至るための研鑽を積むこと)ができない。魔術師である以上、次の段階を目指せないのでは魔術師である意味がない。よって、封印指定を受けた魔術師は協会から失踪し、身を隠すことになる。
失踪した魔術師は、その後の活動によって、大別して以下の2タイプに分けられる。
- 「隠者」タイプ
- 自身の魔術を自分の血族に残そうとするタイプ。本来は自身の死と共に失われる希少能力を、なんとか後継者に譲り渡そうと試みる。次の段階を目指すための自身の研究はある面で諦めてしまう(自身で根源に到達しようとするのではなく、子孫に委ねようとする)、基本的には害のないタイプ。
- 「賢者」タイプ
- 領地に引きこもって、全力で更なる高み(自身の手での根源への到達)を目指そうと研究するタイプ。なりふり構わず研究に没頭するため、全てがそうと限った話ではないが、協会の監視の目から外れてしまうことも手伝い、往々にして利己的・犯罪的な研究方法に手を出す場合もある、危険なタイプ。
問題を起こすのは主に「賢者」タイプだが、魔術協会は通常の倫理の外にあるため、失踪した魔術師がどれほど非道な研究に手を染めようと、それが一般社会に漏れない限り関知しない。むしろ、もっと高みに至ってくれるならそれに越したことはなく、果実が熟すまで伐採を待つかのように、成果が出るまで放置することすらする。
が、現代社会でそのような研究方法が最後まで一般に漏洩しないようなケースはまずなく、聖堂教会による異端狩りが行われて貴重な研究が灰にならないよう、「神秘の秘匿」「魔術師による魔術犯罪の隠蔽」のために、最終的にはエージェントを派遣することになる。
封印指定を受けた魔術師
- 蒼崎橙子
- 当代最高の人形師。完璧な人間の雛形を通すことで根源へ至ろうとしていたが、その過程で「自身と寸分違わぬ人形」を作れるようになり、封印指定を受けた。現在逃亡中。
- 玄霧皐月
- 統一言語師(Master of Babel)。神代の意志疎通を再現。逃亡後、死亡。
- 衛宮矩賢
- 時間操作を家伝とする魔術師。固有結界の中で時間流を無限に加速させ、宇宙の終焉を観測することで根源に至ろうとする。逃亡後、死亡。
指定候補の魔術師
実際に指定を受けているわけではないが、状況次第では封印対象となる可能性を持った魔術師。
- 遠坂凛
- 並行世界の波を観測する機能を付与しようとした、「宝石剣のミニチュアの、さらにミニチュアのペンダント」を作ろうとしたものの失敗。その際に因果律が捩れるという事態を引き起こす。事態を収拾はしたものの、そのままでは封印指定を受けかねないので時計塔に渡るはめになった。
封印指定執行者
単に「執行者」とも。
強制的に封印指定を執行する際に派遣される魔術師のこと。
通常、封印指定から逃亡しても静観されるだけである。しかし、彼らが潜伏先で無関係の人間を巻き込むような実験を繰り返すなどの事態となれば、聖堂教会が黙っていない。異端とみなされ、代行者を差し向けてくる。となれば、魔術協会にとって貴重な財産である研究成果ごとこの世から抹消されてしまうのが目に見えている。
これを防ぐべく、彼らは代行者の介入以前に力ずくで封印指定を実行する他、神秘の秘匿の為に、魔術師が起こした事件の証拠隠滅も行う。そういう状態で駆り出されるため、場合によっては封印指定対象の魔術師+代行者の両名を相手どる可能性もある、非常に危険度の高い役割。故に求められるのは「如何に戦闘向きであるか」。
- ミリョネカリオン
- 封印指定総与。
- バゼット・フラガ・マクレミッツ
- 封印指定執行者。
- フォルテ
- 協会屈指と言われる風使いにして、剣士。封印指定の執行の他に、奪われた魔術書の奪還といった荒事も担当している。
- ナタリア・カミンスキー&衛宮切嗣
- 協会から派遣される正規の執行者ではなく、フリーランスの賞金稼ぎ。協会が動き出す以前に行動し、成果を売り渡すことを生業とする「狩人」。封印指定に限らず、魔術犯罪者として協会に追われる者の相手もする。
- コルネリウス・アルバ
- アリマゴ島の事件の時に協会から派遣される。