聖杯
聖杯
- Holy Chalice:キリスト教の聖遺物で、最後の晩餐(聖餐)に登場する杯。
- Holy Grail:Fate/stay nightにおいて登場する魔術礼装。
- ムーンセル:Fate/EXTRAにおいて登場する太陽系最古の遺物。
聖杯(Holy Chalice)
「最後の晩餐」において、キリストが弟子達に「私の血である」としてワインを注ぎ、振舞ったという杯。
弟子達の手によって各地に運ばれ、その土地で様々な伝承を成した。よって一つだけではない。
またこの聖杯がヨーロッパにおいて騎士道物語に取り入れられ、聖杯探求の旅が描かれる「聖杯伝説」物語群が生まれた。
「アーサー王伝説」で騎士達が探索に出された聖杯もこれである。
手に入れた者のあらゆる願いを叶えるという願望機であり、最高位の聖遺物。
しかし、真実の聖杯を手にした者はおらず、伝説の域を出ないとされている。
冬木の聖杯(Holy Grail)
六十年に一度冬木の土地に現れる、あらゆる願いを叶えるという器。
これだけなら出来の悪い与太話で終わってしまいそうなものだが、その奇跡の一端を「サーヴァントの召喚」という形で示す事で「真贋はともかく規格外の魔術礼装」として認知されている。
本来はユートピアにあるとされる万能の釜を模した魔術礼装で、聖杯という名は借り物にすぎない。
当然先述の聖杯から見れば「贋作」なのだが、魔術協会にとっては優れた魔術品、聖堂教会にとってはその正体が何であろうと「聖杯」と名が付く以上監視しなければならない対象、となっている。
教会や協会にとって、冬木で観測されたのは「第七百二十六号聖杯」である。
小聖杯
表向きの聖杯。外来の魔術師達とサーヴァントはこの聖杯を求めて戦う、いわば聖杯戦争の賞品である。
「ラインの黄金」に携わったというアインツベルンにより鋳造された器に、おおよそあらゆる願いを叶えられるほどの魔力が満ち溢れたモノ。
その魔力とは、脱落したサーヴァントの魂に他ならない。聖杯戦争においてサーヴァントが脱落していく過程こそが聖杯降霊の儀式であり、戦いが佳境にはいると形を持ち始める。
ほか六組の参戦者を排除して降霊した聖杯こそが「願望機」としての完成品であり、優勝賞品である。
本来は根源に通じる孔を開ける手段として、サーヴァントの魂を一時的に留めておく器。
「座」に帰ってゆこうとするサーヴァントを一気に解放することにより極大の孔を開ける。小聖杯が持っているのは、その孔を暫く固定しておくための機能である。
そのために必要なのは「七騎」分の魂。「願望機」としての機能であれば六騎で事足りるが、真に根源に至ろうとするならば、最後の勝者は令呪をもって自身のサーヴァントを自害させねばならない。
霊体を降臨させるための器であるため、形はどんなものでもよい。金属の鍋だろうが、幼稚園児が使いそうな水筒であろうが、はたまた生命であってもその是非を問わない。
大聖杯
円蔵山がその内部に擁する大空洞「龍洞」に敷設された魔法陣で、冬木の土地を聖杯降霊に適した霊地に整えていく機能を持つ。
冬木の霊脈を涸らさないように六十年という時間を掛けてマナを吸い上げ、七騎のサーヴァントを召喚するのに充分な魔力を蓄える。聖杯降霊の時期が近づくと「聖杯の意思」によってマスターに相応しい人物に令呪を授け、聖杯戦争という儀式を開始する。
また、七騎のサーヴァントが一勢力に統一されてしまった場合を想定し、七騎のサーヴァントに対抗するために追加で七騎のサーヴァントを召喚する予備システムが組み込まれている。だがこのシステムはあくまで緊急の措置であり、冬木で発動した場合は霊脈そのものが枯渇する可能性もある。
200年前に始まりの御三家(アインツベルン・マキリ・遠坂)により敷設され、その術式は冬の聖女ユスティーツァ・リズライヒ・フォン・アインツベルンの魔術回路を拡張・増幅したもの。
この儀式にはかの魔導元帥ゼルレッチも立ち会っており、ギルガメッシュまでもが「考案したものは神域の天才であろうよ」と賞賛している。
小聖杯が破壊されようとも大聖杯さえ無事ならば、器が用意される限り何度でも聖杯降霊儀式は執り行える。
だが、Fate・UBWシナリオにおいては切嗣が第四次の後に用意した霊脈の瘤による局地的大地震により、またはHFシナリオにおいては宝石剣ゼルレッチで大暴れした凛により、龍洞が崩落、大聖杯は破壊される。このため、聖杯戦争は第五次で最後となり、今後開かれることはなくなった。
第五次の十年後、魔術協会は大聖杯の復活を画策し、遠坂の当主とロード・エルメロイII世により完全に解体される必要を残していた。
平行世界ではナチスドイツに御三家が敗退し、ユグドミレニアの本拠地であるルーマニア・トゥリファスに持ち去られている。
『Prototype』の聖杯
冬木の聖杯のモデルとなったもの。だがこの聖杯はキリスト教における『聖杯』を目指して作られており、生み出したのも魔術師達ではなく聖堂教会。
大聖杯が置かれているのは東京地下に存在する天然の大空洞。
手に入れれば根源に到達することが出来る、と魔術師達は信じ込んでいるが、この聖杯を生み出し聖杯戦争を始めた枢機卿の思惑からして既に狂っていて、誰が使っても最初から災厄しか呼び込まない。
詳しい事情はビーストの項目にて。
平行世界の冬木の聖杯
Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤの『ドライ』以降の舞台となる、平行世界の冬木における聖杯。
美遊・エーデルフェルトそのものであり、一言で言うなら、「生まれながらに完成された聖杯」。
願いを叶える機能も必要な魔力も最初から備わった天然物であり、オリジナルの聖杯に非常に近いとびっきりのレアもの。
「聖杯を作る」ために聖杯戦争が行われる冬木のそれに対し、平行世界では上記の理由から「聖杯を使う」ためにエインズワース主導で聖杯戦争が行われている。
設定からすると「ただ願う」だけで万事が叶いそうであるが、何らかの間違いで聖杯そのものが美遊という人格を持ってしまったために、そのような手順が必要であると推測されている。
ムーンセル
Fate/EXTRAにおける聖杯。
月で発見された、人類外のテクノロジーによる太陽系最古の「古代遺物(アーティファクト)」。ムーンセルの本体は、全長三千キロメートルに及ぶフォトニック純結晶体(光そのものを閉じ込める事が出来る鉱物。光そのものを記録媒体や回路として使える)。地表以外の月の全てが聖杯である。その構造・技術体系は、過去・現在はおろか未来においても解析不能と言われ、人類の思考形態では理解できない領域にある。
ただ、何者がどうやって作ったかは理解できなくとも、ムーンセルが行っていること自体はやがて判明した。
その機能は、地球の誕生から全てを克明に観察・記録すること。全ての生命、全ての生態、生命の誕生、進化、人類の発生、文明の拡大、歴史、思想――そして魂。全地球の記録にして設計図。神の遺した自動書記装置。七つの階層からなる、七天の聖杯(セブンスヘブン・アートグラフ)。
現存する人類のコンピューターをあらゆる規模で凌駕する演算装置。その処理能力は、現存するコンピューターが、石を並べて計算しているように思えるほどのもの。神の頭脳、神のキャンパスとも言われる。
あまりに危険であるため、西欧財閥によって封印指定にされ、宇宙開発それ自体を人類社会から取り上げ、物理的接触を断たれたほど。
ただし、例外となるのがウィザードと呼ばれる霊子ハッカー。物理的接触の代わりに、ムーンセルが地球を精査する路を通って魂で聖杯へと繋がる能力を持った者達。聖杯は魂を、形而上の人の精神だけは観測できない。しかし知らねばならない。ゆえに自ら人間を招くのである。
通常のハッカーも手段があれば表層にアクセスすることは可能だが、魂を霊子化できる魔術師でなければSE.RA.PHは光としてしか認識できず、第二層以降へのアクセスもできない。旧世界の魔術師(メイガス)も瞑想の一環としてムーンセル内部にコンタクトしていたという。
ムーンセルは過去と現在を記録するほか、天文学的回数の「1分後の未来」のシミュレートを演算し続けている。「事象の書き換えすら可能になる」とされるが、厳密には膨大なシミュレーションサンプルの中から望む未来に確実に至れる方法を提示できるということ。その改竄能力は過去に遡って、現代を望んだ世界に変換出来る程。無限とも言える膨大な未来の可能性を記録している中枢は、フォトニック深淵領域、事象選択樹、アンジェリカケージなどと呼ばれる。
八一号聖杯爆弾
帝都聖杯奇譚における聖杯。大聖杯を元に造られた魔導兵器。
魔人アーチャーが確保した大聖杯の本質を見抜き、願望機として使うのが難しい事から変な思い切りの良さを発揮して81のパーツに解体し、再構成。
その結果、大聖杯が有する膨大な魔力を余すところなく爆発による破壊力に転化し、一発で戦局を逆転させうる戦略兵器として新生した。
「信じて作った大聖杯がなんか爆弾にされていた」とか、必死に聖杯を取りあっていた御三家にとっては涙目の結末である。
汚染聖杯を人を殺すために使うという合理的かつ身も蓋もない使い道であるがそのシンプルな運用からか大聖杯にありがちなイレギュラーや欠陥も完備されており隙が無い。
『Grand Order』の聖杯
現状、二種類が登場している。
前者は黒幕によって、人理定礎崩壊のために各特異点を形成したもの。ダ・ウィンチちゃんによると聖杯は空間における魔力の使用方法を決める
関連する用語
- 聖杯戦争
- 聖杯と呼ばれる物の争奪戦はどのような形であろうと全て、聖杯戦争と呼ばれる。
冬木市で行われる魔術儀式もまた聖杯戦争である。 - 聖杯くん
- 冬木市参照。
- 虎聖杯
- フェイト/タイガーころしあむ参照。
メモ
- 奈須きのこ氏曰わく『Fate/EXTRA』は『Fate/stay night』世界の1970年代から分岐した世界観だが、ムーンセルがあるのはあくまでも『EXTRA』世界だけで、『stay night』には存在しないとの事。
- 第三次聖杯戦争でアインツベルン家がアヴェンジャーを呼び出した為に聖杯は「この世全ての悪」に染まってしまい、願望は歪んだ形で顕現する呪いのアイテムになってしまう。
それ以前に、多くの流血を強いながらも聖杯をまともに手にした者は皆無で、作られた当初から呪いのアイテムになる事が決定付けられている。それでもなお聖杯を手に入れようとする者が後を絶たないあたり、人間のエゴや業の深さを感じさせる。
話題まとめ
- 願望機の特徴と、設定の変遷
- 一般的な魔術において、目的を達成するためにはそのための過程を考える必要がある。例えば「空を飛びたい」と願った場合、「重力を制御して体を浮かす」でも「翼を生やして羽ばたく」でも「魔力を脚から噴出する」でも良いが、とにかく何らかの方法を定義する必要がある。
- 一方、冬木の聖杯は、ただ「こうなって欲しい」と思い描くだけで、その願望を実現する事が出来る。その際、使用者が過程を思い描く必要がない。なので「空を飛びたい」と願うだけで、過程も理論も吹っ飛ばして即座に「空を飛ぶ」と言う結果のみを叶えられる。
- これこそが、聖杯の願望機としての大きな特徴であり、魔術との大きな違いである。そもそも、過程と理論(と、それを実現するための魔力)さえあれば魔術でも大抵の事はできる。だが、過程と理論を吹き飛ばして結果のみを現出させる事は、聖杯にしか出来ないのだ。
- イリヤが魔術理論を知らずに魔術を行使出来るのも、これと同じ原理。また、アヴェンジャーによって汚染された聖杯が「必ず悪意を持って願いを叶える」ようになってしまったのも、この聖杯の特徴が仇になったためと言える(過程が定義されておらず、願いの叶え方は聖杯に一任されているからこそ、悪意に取る事が可能となる。過程を定義する必要があるなら、悪意に取りようがない)。
- また、よく勘違いされるが、あくまでも「過程を入力しなくても願望を実現させる」だけであり、本当の意味で「過程を省く」わけではない。つまり、使用者が入力をする必要は無いが、過程と理論そのものは(聖杯側が用意するとはいえ)必ず必要になる。『Fate/Zero』で衛宮切嗣が絶望した理由も、聖杯が用意した方法論が、自分が否定したかった方法論(邪魔な者を皆殺しにすれば平和になるよね?)と完全に同一だったからである、