混血

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混血

かつてヒトならざるものと交わって血と力を得た人間の末裔。

人の側面を持っているために退魔の法術が通用せず、その上で魔の能力を振るうことができる。
これが故に、退魔の立場にあるものに取っては強大な敵となりうる存在だが、純粋な「魔」ではないため、必ずしも全ての混血が人と相容れないわけではない。人の中で暮らすことを選び、退魔とは敵対しない道を選んでいる家系も存在している。退魔の側も、混血が「外れて」しまわない限りは殊更に関知はしない。

反転

おもに混血が魔の血による人外の側面に切り替わって、大我が小我に飲み込まれた状態を指す。
大我とは大雑把に言うと「社会という大きな世界を知る個」、小我とは「自分自身という小さな世界のみに満足する個」のこと。通常人間は、普段は大我の方が優先順位が高いものだが、反転すると逆になり、小我の方が優先順位が高くなる。こうなると大抵は人としての理性や道徳などが失われ、本能のままに動くようになってしまう。

例えば、誰かを好きになる「愛情」という小我を持っていたとする。ここで大抵の人間は、即そのまま相手にその気持ちをぶつけるようなことをしない。ブレーキがかかる。例えば「告白しても、相手も同じ想いでいてくれる保証はない」「もし相手に恋人がすでにいたら迷惑かもしれない」といった、自分ではなく他人の心情を考慮し、恐怖あるいは配慮するからである(これが個人のみの小我に対する、相手の存在に思いを巡らせる大我)。
しかし、小我が優先される状態になると、「相手がフってきても、自分が満足すればいいのだから、相手を力ずくでモノにすればいい」「相手に恋人がいるなら、自分のために、その恋人を排除すればいい」という自分本位の考え方になりうる。
失われる理性は「人として」のソレであり、必ずしも知性や正気を失うということにはならない。

余談だが、『空の境界』において蒼崎橙子が小我は脳に宿り、大我は体にあるとしている。

紅赤朱

くれないせきしゅ。
混血の者が、自己に眠る魔の血を最大限に引き出した状態のこと。ようするに「先祖還り」のこと。完全に覚醒すれば、確実に反転する。
本来の呼び名は「先祖還り」だが、「遠野一族で起こった先祖還り」のことを、特に「紅赤朱」と呼ぶ。
七夜といった、退魔に属する立場のものが主に使う呼び方であり、逆に遠野の家系の当人達はあまり使わず、自身をよく「鬼」と形容している。

「紅」「赤」「朱」と魔の属性を象徴する色を三つも冠する。その姿は蜃気楼のような靄に包まれ、一度こうなってしまうと、もう二度と人には戻れない。死ぬときは化物らしく灰になる。

現在、紅赤朱となる可能性を持つのは遠野秋葉軋間紅摩
秋葉は実際は魔の血は少なく、その少ない血の純度が非常に高いという「人として覚醒できる」という混血の回答のひとつと言えるもの。しかし、遠野志貴に命の半分を使っていることも手伝い、現在は危い状態。普段はこれを琥珀の手助けと自身を律する強い精神力で押さえつけている。
紅摩は生まれから極めて純度の高い、人の世に合わない存在であったのだが、七夜黄理を殺した後、逆に何故か理性寄りの道を徐々に歩みだした。混血の異能「灼熱」にはこの時目覚め、さらに完全な紅赤朱に近い状態になっている。

家系・派閥

遠野の一族

その起源は「鬼種」とされている。
鬼種には2種類があり、「元から鬼と呼ばれる系統樹からして人間とは違う者」と「力ある者達が土蜘蛛だのなんだのと呼ばれて朝廷から追われて隠れ住むようになって、生物的にちょっとおかしくなってしまった者」。(「漢話月姫」第7回より)
遠野の血脈に混ざっているのは前者。なお現在、純粋な鬼種は絶滅種となっている。

資産家であり、財閥めいた一大グループを築いているが、序列は経済的な裕福さよりも、血の尊さが優先されている。

遠野
三咲という町に根を張る混血の一族たちの宗主。
現在の当主は遠野秋葉。先代にあたる遠野槙久は死去。
混血として外れものが出たら一族宗主が処理をする決まりがあるなど、人間よりの秩序を守って生きている家系。
かつては退魔組織とは敵対関係にあったが、槙久の代で仲間を売るなどして協力的な混血として渡りをつけたので、いきなり処断されるような危機的な関係ではない。対等な協力関係と言うよりは見逃されたと言ったほうが妥当。
秋葉の代でも不可侵は続いている模様だが、監視者として時南宗玄を送られている(時南が真面目に監視しているかどうかは別として)。
遠野の当主が使う武術は、通常のものを「赫訳」、当主のみに許されたものを「赤主」と呼び、そのさらに上の禁忌中の禁忌を「紅主」と呼ぶ。
有間
遠野分家の一つ。
能力に付いて記されたことはなく、今や一般家庭と相違ない。華道の教室をしており、家にはなぜか剣道場らしきものもあるとか。
現在の当主は有間啓子(都古の母)。
久我峰
遠野分家の一つ。
異能としての血は薄いものの、経済的には宗主の遠野より富んでいる。遠野グループの三分の一は久我峰の息のかかった企業。
男性は肥満体質だが、女性はとっても美人な家系なのだとか。
刀崎
遠野分家の一つ。
骨師と呼ばれる刀鍛冶の一族。普段は鉄で刀を鍛えるが、これは、という使い手に出会うと自らの腕を差し出し、その骨で刀を作る。当然、その骨刀は最期にして最高の一品となる。
その骨刀は大陸に伝わる破山剣と似て非なる性質を持つという。
混血ではあるが、本来退魔で相容れない立場のはずの七夜歴代当主と懇意にしていた。
軋間
遠野の分家の一つとして数えられているが、実際にはルーツが異なる。
遠野と違い、意図的に血を濃くし、より「魔」の純度の高い者を輩出してきた一族。時期の早い遅いはあれ、当主は必ず紅赤朱となるという。その究極として生み出されたのが紅摩であるが、生み出したことで一族の向かう先が破滅と知り、紅摩は幽閉される。一族は幼い紅摩を殺そうとするも失敗し、逆に暴走した紅摩によって全滅させられた。公には自滅ではなく斎木が滅ぼしたことになっている(ただし、退魔組織、七夜などには真相が伝わっていた)
一族を全滅させた後の紅摩は斎木邸に置かれていたが、斎木の断絶によって遠野に組み込まれた。
現在の当主は紅摩となっているが、これは単に軋間家にはもう彼一人しかいないがゆえの便宜上のものである。

その他

斎木
かつては遠野・軋間一族より上の立場にあった家系の模様。現在は断絶している。
権力も財力もある混血として君臨していたが、ある時の当主(通称「斎木翁」)が先祖還りを起こしてしまい、人を喰らうなど暴走した。
斎木翁は「対象を睨みつけるだけで体温を零下にする」という強力な異能を持っていたが、遠野槙久が保身と野心のために裏切り、情報を退魔組織に流され、放たれた刺客・七夜黄理によって斎木翁のみならず護衛として屋敷に詰めていた精鋭の親族30人以上全員が殺された。
その後、遠野に手を入れられ消滅。
ナタリア・カミンスキー
家系についての詳細は不明。ただ混血であることが明言されている人物。
数代前の先祖にサキュバスを持つ。不死や再生能力は持たないものの、並外れた運動神経と、吸精によって魔力を貯蔵しブーストするという特殊能力を持つ。
エリザベート=バートリー
バートリー家は祖先にドラゴンがいたとされ、高い対魔力や音波のドラゴンブレスの行使が可能。
彼女の叔母が代表的だが、狂気や残忍性を持つ者が一族に多いのも混血の特徴に合致している。


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