ロシェ・フレイン・ユグドミレニア
ロシェ・フレイン・ユグドミレニア
- スペル:Roche Frain Yggdmillennia
- 誕生日:9月15日/血液型:0型
- 身長:152cm/体重:45kg
ユグドミレニアの魔術師で、黒のキャスターのマスター。
癖っ毛の小柄な少年。十三歳。
- 略歴
- ユグドミレニアのマスターの中でも最も若輩でありながら、人形工学(ドール・エンジニアリング)の分野で名を馳せるゴーレム使い。自ら召喚したキャスターを同じゴーレム使いとして尊敬しており、主従ではなく、教師と教え子の関係を結んでいる。
聖杯大戦開始2か月前、ダーニックとほぼ同じタイミングでサーヴァントを召喚しており、それ以来キャスターと共に城内の工房でゴーレムの生産に明け暮れている。
後にキャスターの指示で「炉心」を持ってイデアル森林最北端の湖に赴き、そこでキャスターが目指していた至高のゴーレム『王冠・叡智の光(ゴーレム・ケテルマルクト)』の完成を目の当りにする。だがこの時キャスターは情勢がシロウに傾いたことでユグドミレニアを裏切りシロウと契約していた。そして突然ゴーレムの胸部に投げ込まれ、自分は既にマスターではなく、「炉心」として使うために呼び出されたという真実を聞かされることになる。
彼は自分がどれだけキャスターを師として尊敬していたか訴えるが、キャスターにとってはそれも心地よさは感じていたものの自らの目的を捨て去るほどの価値はなく、逆に「ロシェ自身がキャスターの技術だけに目を奪われ、彼の事を何も分かっていなかった」という事実を突きつけられる。
そして尊敬していた師に裏切られた絶望と、自分の何もかもがゴーレムの部品になっていく恐怖から断末魔の叫びを上げながら、魔術回路も魔術刻印も令呪もゴーレムに分解吸収されてしまった。
心が白く塗りつぶされる瞬間、人間嫌いのキャスターが『原初の人間(アダム)』を造るという矛盾に至り、師に対する意趣返しの様な皮肉と変わらぬ敬愛の念を思い浮かべながら人間としての生を終えた。
- 人物
- 13歳と一族の中では最年少に当たるが、やや背伸びした大人びた口調で話し、相手が誰でも変わらない。
彼の生家であるフレイン家は人形工学において名の知れた一族で、生まれた子供の養育をゴーレムに任せ、刻印の移植が可能になるまで工房からほとんど出る事もなく、一度も顔を合わせることさえしないという魔術師の中でも特に異色な教育方法をとっていた。
そんな奇矯な教育を受けた彼は父母の顔は覚えていないのに、自分を世話したゴーレムは形状の一つも残さず記憶しており、人間に対して興味を持てない少年として成長した。例えそれが如何なる魔術師であろうと例外ではなく、彼にとっては一般人と大差は無い。言葉を交わすのに不自由は無いし、他の魔術師と取引や貴重な材料を巡って殺し合いをすることもあったが、そこに人間同士の心の交歓は一切なく、犬猫が喋っているのと変わりはなかった。
だが自分を遥かに上回るゴーレムの作り手であるキャスターは別で、その技術に感服し、常に年相応のはきはき明るい口調で『先生』と呼び、絶対的な信頼と崇拝をするようになる。
既に彼にとって聖杯大戦もキャスターの教えを授かるのに邪魔なイベントでしかなく、元々ダーニックの命令で参加し願いもなかったため、より自分を指導してもらうべく、聖杯にかける願いは『キャスターの受肉』。
そしてキャスターの目指す存在の大きさに触れ、ただ性能の優れたゴーレムを造ればいいと考えていた彼は大きな衝撃を受け、師のためならどのような所業でも実行する決意を固めていた。
- 能力
- ゴーレムの製造と使役。彼の才と努力はすべてこれに注ぎ込まれており、外見やデザインに関してはともかく、「機能」という一点を突き詰めた作風は獅子劫も知るほど有名な物となっている。更にキャスターの指導によって、彼の作品は改良され続けている。
登場作品と役柄
- Fate/Apocrypha
- 「黒」のマスターとして登場。
人間関係
- キャスター
- 『先生』。
聖杯大戦中のロシェの行動と熱意は全て彼のための物。
キャスターもロシェの事を生前であれば弟子として側に置いていたかもしれないと思うほど気に入っており、互いに全幅の信頼を寄せている。
ただしそれはあくまでゴーレム製作という趣味嗜好が一致しているだけにすぎず、実はお互いが相手のことを理解していなかったことを最期に悟る。
- ダーニック・プレストーン・ユグドミレニア
- 一族の長で、先生のスポンサー。序列に興味がないためタメ口で話す。
ダーニックも彼の実力を高く評価しているので対等な立場で話す事を許している。
- ジーク
- ゴーレムに魔術回路を組み込む実験に使うつもりで、偶々選び出した。だが、この選択が彼の命への渇望を呼び起こすこととなる。
名台詞
- 「――先生!」
「あの、戻ってきたら……僕のゴーレムを見て貰えませんか!?
今度は、上手く出来たと思うんです!」 - 師への限りない敬意とゴーレムへの盲目的とすら言っていい情熱。
彼のセリフは全てこの調子で、常に師に対し無邪気な子犬のように懐いている。
- 「馬鹿馬鹿しいなぁ、もう」
- セイバーが自決し、ジークに心臓を与えたことに対して。
『先生』は別格として、英霊というのはもう少し理性有るものかと彼は思っていたため、合理的でなく意味不明な行動をとったセイバーへの失望は隠せなかった。
- 「誰でもいい! 誰でもいいから、頼むから助けてくれ、ください!
贅沢は言いません、反省した、ごめんなさい、許して下さい!
でも誰に許しを貰えばいいのだろう? 僕は何をしたんだろう。
ああ、待って。お願い。お願いだから、待って下さい。
怖いんです、怖い、やだ、ゴーレムなんかに為りたくない、為りたくない、僕はゴーレムを造りたいけど、ゴーレムになりたくなんか――」 - 若きゴーレム造りの天才が迎えた、師に裏切られゴーレムの部品にされるという皮肉な結末。ホムンクルス達を実験材料に使っていたロシェだが、歴代マスターの最後の中でも特に後味が悪い。
- 「“先生は人間嫌いなのに。
僕と同じで、煩わしい人の世界が厭でたまらないはずなのに。
どうして、この人は――人間を創造 ろうとしているのだろう。
ヘンなの”」 - 今わの際で思い至った師が抱える矛盾。
年相応の子供らしい皮肉と裏切られてなお変わらぬ師への親しみを抱きながら、彼の心と肉体は「原初の人間」に溶けて消えていった。
メモ
- 権力闘争や情欲のような俗な物事にしか興味のないダーニックやゴルド、セレニケ。人間としての情が捨てきれないフィオレと魔術師の非人間性を毛嫌いしているカウレスのフォルヴェッジ姉弟、とユグドミレニアのマスター達は良くも悪くも「正しい魔術師」から外れた存在で、ロシェは邪念なく魔導の研鑽のみに専念し、多くの人間の命を刈り取ってでも目的を達成しようとしている。
そのため一見するとロシェだけが「正しい魔術師」と呼べるのだが、彼も最早ゴーレムの製造と改良のみしか頭になく、「根源」を目指すための手段であるゴーレムの研究が、「手段」ではなく「目的」にすり替わってしまっている。 - 「人形工学」というのは、ゴーレム以外の人形も扱われ、封印指定を受けた人形師の作品やロード・エルメロイⅡ世が作った「月霊髄液」を改良進化させたメイドゴーレムが存在する。だが、あくまで土と石と式によって作られるゴーレムにしか興味がないのか、それらの作品に対する言及は無い。
- 「ロシェがヤバいと見せかけて、本当に危ないのはキャスターだった」という、大どんでん返し。
かつて龍之介とジル・ド・レェという相性抜群のペアがいたが、彼らの仲は奈須氏から「実は全然噛み合っていない」「一歩間違えれば龍之介はジルに殺されていた」と評されていた。
ロシェの最後は、この「一見すると好相性だが、両者の間に存在する大穴」が表面化した場合どうなるのか、を示す意味もあったのかもしれない。