蒼崎橙子

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蒼崎橙子(空の境界)

  • 読み:あおざき とうこ
  • CV:本田貴子(劇場版)/井上喜久子(ドラマCD)

建築デザイン事務所「伽藍の堂」社長。封印指定を受けた魔術師
ここでは、主に『空の境界』や『月姫』の関連作品で得られる情報をまとめる。

略歴
魔法使い蒼崎青子の姉。
もともと「魔法・青」を継承する予定であったのは青子ではなく橙子の方であり、橙子は子供の頃から魔術の英才教育を受けてきた。しかし祖父の予定変更により、魔法と「青」の称号を受け継いだのは橙子ではなく青子であった。妹との後継者争いに敗れた橙子は祖父をぶち殺して渡英。ロンドンの魔術協会で名を馳せることとなる。
辺境の異端の魔術師の家系であった蒼崎は協会では厄介者であり、自由に研究をする為には実績が必要だった。橙子は協会に入った当初はルーン魔術を研究。誰もまともに研究しておらず廃れ切っていたこの分野を、数年で実用レベルへと整え上げる。その実績をもって、本来の目的である人形作りの工房を確保し、没頭する。荒耶宗蓮コルネリウス・アルバと知己を得たのはこの頃。最終的に、高すぎる技術が元となり、協会から封印指定を受けることとなる。
現在は協会を出奔し、日本の某都市に結界を張って隠遁中。
人物
眼鏡をかけるかかけないかをスイッチとして、性格が入れ替わる。
混同されやすいが、「着用時は穏やかで女性的」で、「外している時は冷酷で男性的」。「人工的な多重人格者」と表現されることもあるが、「TPOに応じてペルソナ(外的側面)を替えている」と言った方が近い。「人格」ではなく「性格」を変えている。物事の優先順位が変わるだけで、本物の多重人格のように記憶の断絶や考え方の食い違いが起こるわけではない。どちらも橙子であり、本物偽物の区別は無い。時に眼鏡の着用時でも冷酷な面が表出することがある。
魔術協会はトップランクの魔術師である橙子に「赤」の称号を贈ったが、本来望んでいた「青」とは真逆の「赤」を得たということで、橙子はこの称号を不服に思っている。そのことを指摘されること、とりわけ「傷んだ赤(スカー・レッド)」と呼ばれることはことさら嫌っており、そう呼んだ者は全員殺している。例外は殺し損ねた妹のみ。
常にタバコをくわえたヘビースモーカー。新しもの好きで、興味を持ったものをいじり回してはしゃいだりする。スピード狂。自分の名前が嫌いなクセに、オレンジ色の装飾品を一品、体のどこかにつける習慣がある。
人形師としての腕があまりにも高いため、「自分の生の唯一性」に無頓着。
人形師として人体に詳しい故か、医学にもかなり精通している。『空の境界』第四章では荒耶宗蓮の代わりに両儀式のカウンセラーとして登場。また、第三章では荒耶の名を借りた浅上グループの身分証明書を所持している様子が描写されており、他人の名義をよく借りる傾向がある。
趣味は「妹の名義で魔術協会から金を引き出すこと」。
能力
妹は破壊に特化しているが、橙子は万能に一流の魔術師。主に使う魔術はルーン文字。ただし橙子は、もともと戦闘に向いていない上に、かつてより腕が衰えているため、当人の単純な戦闘能力は高いものではない。こと戦闘のみであれば、弟子の黒桐鮮花の方が現在は上回っている。戦闘時は橙子本人が戦うのではなく、使い魔を使役する。
当代最高位の人形師であり、完璧な人間の雛形の作成を通すことで根源へ至ろうとしている。現在、その技術は「本人と寸分違わぬ人形」を創り上げるまでに至っている。以来、橙子は自分の唯一性に無頓着。今の自分が活動を終えると、人形(スペア)が活動を開始して、それまでの記憶を継承、同レベルの人形を作成し、その後は以前と変わらぬ蒼崎橙子の生活を送るという。
そのため戦闘において彼女を無力化するためには、死なない程度にダメージを与えて捕獲、その後生命活動が停止しないよう延命処置をとりつつ幽閉する必要がある。現在の橙子の肉体が生身なのか人形なのか、人形ならば元々の体は既に放棄されているのかそれともどこかで保存されているのかは本人にすらわからない(そもそも興味すらない)。
天才と言われるが、実は橙子の魔術回路の総数はそれほど多くはなく、魔術師としては平均的な二十程度。
鮮花の台詞によれば、魔眼を持っているとのことだが、『空の境界』で使用されることはない。ちなみに、橙子が普段かけている眼鏡は「魔眼殺し」である。

自身での戦闘が不得手な橙子が用いる、戦闘用の使い魔。
「魔術師当人が最強である必要はなく、最強のものを作り出せばよい」という持論を持つ橙子が作り上げたモノ。
作中で用いられたのは以下の2種である。
幻灯機械
正式名称不明。
アタッシュケース大のオレンジ色の鞄に偽装された幻灯機械。そこから大気中のエーテルに映像を映し出すことで、強いて言えばネコのような形をした、橙子よりも大きな体躯の真っ黒で厚さのない影絵の魔物を生み出す。魔物は目にも止まらぬ速さで移動することができ、さらに肉体となるエーテルが潰されても本体である幻灯機が壊されない限り何度でも蘇ることができる。
正式名称不明。
人ひとりが収納できるほどの旅行鞄大の匣。形は鞄というよりは立方体といった方が近い。中には、茨のような触手と数千の口を持つ得体の知れない「魔」が納められており、敵を貪り食らう。橙子曰く「底無し」であるため、下手に放てば周囲のものが全てなくなってしまうらしい。そんな派手なことになると協会に嗅ぎ付けられてしまうため、橙子はこれの使用はあまり好ましく思っていない。
なお、コルネリウス・アルバによると、橙子の以前の使い魔は青子に敗れたらしい。

伽藍の堂

橙子が営む建築デザイン事務所兼人形工房とは名ばかりの、よろず請け負い会社。一応表の看板通り、「物を作る」ことがメインではあるが、結局、橙子にとって面白ければ何でも安請け合いしている。
外見はただの廃ビル。実態もただの廃ビル。建築途中で放棄されたビルを買い取って事務所と言い張っている。一階はただの廃墟。二階と三階は橙子の仕事場で、四階が事務所。黒桐幹也と両儀式が出入りしているのは四階だけ。
地下にはガレージがあり、スピード狂の橙子が集めた四輪が四台、二輪が二台、なんかレシプロ機っぽいのが一機ある。
結界が張られ、関係のない人間が訪れることは(通常ならば)ないが、掘り出し物のウイジャ盤を取り寄せたりしているなど、郵便物は届くらしい。あと、電気や水道の料金メーターもちゃんと確認できるとか。
経営状態は「杜撰」の一言につき、収支のことなど考えになく、入金があると「ああ、そんな仕事も請け負ったことがあったっけ」と思い出すような感じ。製作した人形を売ることは基本的にないようだが、無一文になって「あー、ビール飲みてぇー」という気分になったら二束三文で売り払ってしまうとか。社員への給料未払いがあったり、「福利厚生? 何それ?」というレベル。
ちなみに、この事務所の名前は「伽藍の」。
空の境界・第四章の章題は「伽藍の」である。

蒼崎橙子(Character material)

まだ眼鏡をかけていない、祖父のもとで修行していた頃の橙子。
ここでは、「Character material」で得られる情報をまとめる。ここで語られている内容は未発表の小説版『魔法使いの夜』を元にしているが、後にPCゲーム化された際、様々な変更がされている。


蒼崎が生んだ天才。
数こそ平均だが精密さで他を圧倒する美しい魔術回路、持って生まれた魔眼、世界の機微を感じ取る感性、自らの特異性を削る事なく摂理(せかい)に適合する知性、など、非の打ち所のない才能の塊。
純粋培養の「魔法使いの卵」であり、他の魔術師のように現代社会に寄り添う必要はないとして育てられた。魔法を受け継ぐために、大魔術の起動に偏った教育・修練を受けている。本人はもっと細やかな、世界を動かすのではなく世界に残るようなものを作りたいと思っているが、我慢している。
両親や妹とは離れて暮らし、18歳まで学校に行った事がない。2歳年下の青子とはちょくちょく会って話をし、青子のどうでもいい失敗を真剣に聞いてはアドバイスをする、という微笑ましい姉妹関係だった。世間を知らない天才少女。落ち着きのあるいいお姉さん。ただ、自身とは対照的な一般人の生活を謳歌している青子には、内心複雑なものを抱えていた。
「怪物」と呼ばれる祖父を尊敬し、また、恐れてもいる。祖父の期待に応えんとするあまり、十五を過ぎたあたりから視力が落ち始めた。せっかくの魔眼だが魔法に比べれば取るに足らないものなので、周囲には秘密にしている。


多くの名門魔術師が橙子のもとを訪れ、彼らにも将来を期待される。だが、近いうちに同胞となるはずの、他の魔法使い達は、一人も姿を現さなかった。
――その意味を薄々感じながらも、決定的な答えが突きつけられるまで、橙子は「周囲の望んだ天才」で在り続ける。

蒼崎橙子(魔法使いの夜)

  • 誕生日:8月8日
  • 身長:165cm/体重:52kg
  • 好きなもの:創るひと/嫌いなもの:壊すひと
  • 魔術系統:ルーン、人体工学、建築魔術全般
  • 魔術回路・質:EX/魔術回路・量:B+/魔術回路・編成:正常

魔術協会に渡った後、まだ封印指定を受けていない頃の橙子。
ここでは、主に『魔法使いの夜』で得られる情報をまとめる。

略歴
魔法使いの後継者として、幼い頃から魔術の英才教育を受けてきた生粋の魔術師。妹の青子より4歳年上。
14歳の時に時計塔へ一度留学し、高校進学にあたって帰国。礼園女学院で3年間を過ごした後、祖父と袂を分かって再び渡英する。
祖父と対立したのは、祖父が「魔術と魔法は譲るが、根源への路は閉ざす。根源に至るのはもっと強力な後継者を作ったら行う。根源の解析は許可しない」という方針を明らかにしたため。自身で根源に到達することを目的とする橙子には、祖父のこの方針は到底受け入れ難く、それまでの自身の努力の否定に等しかった。
根源に至ることは(成功にしろ失敗にしろ)この世界からの消滅を意味するが、橙子はそれも承知の上で、方法があるなら行うべき、と主張。橙子の意見は祖父に容れられることはなく、橙子は愛用していた眼鏡を叩き壊し、祖父の元を去る。
橙子が蒼崎家を出奔したのは本編開始の3年前であり、当時の青子は中学2年生を終えた頃。青子が後継者に正式に指名されたのは中学卒業のその日だったので、橙子の出奔から1年ほどのタイムラグがある。
準備として魔術協会で様々な成果を築き上げた後、その成果の全てを協会に売り渡す。自身が去った後に後継者に据えられた青子から「魔法」を始めとする本来自分のものになるはずであった蒼崎の成果を奪いとって、それを手がかりに根源へと至るため、3年ぶりに三咲の地を踏む。
人物
ショートカットの美女。髪は「赤みのかかった黒髪」「ブラウンの髪」「青子より濃い、見事な赤毛」などと表現される。女性としては長身の部類で、歩く姿はトップモデルを思わせる。清楚であるのに堂々としている。華やかなようで、その実、強い芯が通っている。非常に目立つ容姿だが、目立つことを嫌う橙子は視線避けのルーンを刻んだ装身具を使い、普段は目立たなくしている。
非常に多才で、様々なものに興味を持つ、好奇心旺盛な研究者タイプ。
ただし、手段が目的にとってかわる傾向があり、結果よりも過程を重要視して多くの無駄や遊びをしてしまう。手段のための効率は考えるが、目的達成のための効率は二の次になりがち。天才ではあるが、その才能は蒼崎の後継者としては余分なものだったと青子には評されている。目標に没頭して成果を愛さず、未来のことは考えないのに、今あるものには何にでも興味を持ち、面倒見がいい、とも。
自身が多方面に興味を持つのと対照的に、自身に向けられる興味は面倒なものと考えている。人混みは嫌いではないが、人のいない場所の方を好む。廃墟となった旧校舎を仮の工房と定めるが、他にも廃ビルや廃工場、廃棄された遊園地を候補に考えていた。
愛用の眼鏡を割って蒼崎家を出奔して以来、眼鏡をかけるかかけないかをスイッチとして性格が変わる、人工的な二重人格者となっている。「着用時は人当たりがよく女性的」「外すと残酷で男性的」。物事の優先順位を組み替えるだけで、本物の多重人格のように記憶の断絶や考え方の食い違いが起こるわけではない。どちらも橙子であり、本物偽物の区別は無い。
他人の持ち物を横取りし、ぶっ壊したがるという癖がある。幼い頃から青子は散々迷惑してきたとか。
音楽の趣味は対外的にはプログレ派としているが、実際は演歌好き。
能力
希代の人形師。本人の戦闘能力は高いものではないが、人形を始めとする複数の使い魔を使役し、それを補っている。ただし、作中ではルゥ=ベオウルフという切り札があり、無意識にベオの戦力に依存しているため、人形の戦力を重要視していない。
『空の境界』で使用された護身用の「鞄」も三咲市に持ち込んでいるが、作中で使用される機会はなかった。
  • ルーン
様々なルーンを修得しているが、ルーン自体が「対人に効果を発揮する呪い」「一工程(シングルアクション)の魔術」であるという大前提があるため、基本的には大威力になりえない特性を持っており、戦闘には向いていない。作中で用いたのは、対象を炎で包む「炎のルーン」、姿隠しの魔術を解除した「退去のルーン」、防御に用いた「勝利の加護のルーン」など。
ルーンはむしろ予め何かに刻んでおくなど、トラップ的な使い方に向いている。公園のレンガの地面に「太陽のルーン」(協会に届け出ていない橙子独自の形状記憶ルーン)をびっしりと三十万個余り刻み、久遠寺有珠のプロイキッシャー「夜の饗宴(ディドルディドル)」を封じたり、工房に切り札として「原初のルーン」のレプリカを宿した三枚のルーン石を配置し、刻まれたルーンを一千万規模に膨張させるという効果で青子の迎撃に使ったりしている。
理由は不明だが、橙子は「二小節以上の魔術を習得できない」とされており、ルーンを使うのは一工程だからという事情があるらしい。
  • 魔眼
左目は生まれ持った「魅了」の魔眼。投射型で、暗示を行う。視界内にあるものに無差別に効果を与えるということはなく、完全な制御下にあり、目蓋の開閉というスイッチによって任意に効果を発揮させることが可能。この魔眼は改造されており、魔眼の中に魔眼を作り、合わせ鏡のように魔眼の効果を無限に増殖させている。「積重魔眼」「合わせ鏡の底なしの穴(クラインキューブ)」などと表現される。
魔眼の効果や強さ自体は変わらないが、普通の魔眼が単発銃であるなら、これは無限の弾数を有したマシンガン。単発をレジストできても、怒涛のように押しよせる全ての視線を防ぐことは不可能。ただし、術者も無限に等しい魔眼の力を制御しなければならないため、「行動」を禁じることに特化している。積重の効果を使わなければ、普通の暗示も可能。
なお、眼鏡をかけていることから分かるように、現在の橙子はあまり視力がよくない。昔の視力はよかったが、魔術の修行を頑張りすぎて視力を落とした。視線によって効果を発揮する魔眼の力も、比例して弱くなっている。
  • 魔術刻印
橙子は蒼崎の後継者ではないため、自身の魔術刻印を持っていない。
しかし、橙子に戦いを挑んだ魔術師から刻印を奪っており、様々な系統の複数の刻印を有している。本来、魔術刻印はその系統の後継者にしか力を貸さないが、橙子に刻印を奪われた魔術師は未だ生きて(無理やり生かされて)おり、橙子は間接的にその力を使っている。通常は刻印は身体に直接刻まなければならないものだが、他人の魔術刻印はどうあっても拒否反応を抑えられないため、背後の空間に固定して浮かべている。
蝶の羽根のようにも、とりどりの花のようにも見えるそれらは、「守護の獣(トーテムポール)」と表現された。身体に刻んだ場合と違って、魔術の発動に一手間余分にかかってしまうという欠点はあるが、どれほどの数を有しても刻印による痛みを感じないというメリットもある。

青子人形

橙子が青子に刺客として放った人形の内の一体。青子そっくりの容姿をしているため、「青子人形」と呼ばれることになる。そんな容姿にしたのは、単なる嫌がらせ。
自動人形(オートマタ)であり、自動詠唱永久機関(オルゴールエンジン)を搭載して動く。オルゴールは人形自身を呪い、その呪いを魔力に変換し動力源として稼動する。自身を呪うことで永久に動き続ける呪いの人形。基本的に呪いは人形自身に向けられているが、人形の周囲は呪いによって汚染されており、近寄った相手にも呪いを振りまく。魔術師であれば抵抗できる程度のものだが、一般人には効果がある。詠唱は音波によるセンサーを兼ねており、人形は視覚ではなくコウモリのような音響反射によって外界を知覚している。このため、暗闇でも問題なく行動できる。
呪いの永久機関は供給量こそ理論上無限だが、一度に供給できる魔力量には上限がある。人形が魔力を使いすぎれば、オルゴールを回すための魔力にも支障をきたすため、過度の魔力消費は人形の停止を意味する。しかし、人形は目的(青子殺害)のために自身を省みることはないので、必要であれば自らの停止を厭わない。
戦闘用の自動人形として、様々な機能が搭載されている。むしろ過積載と言うべきで、橙子の趣味が如実に反映されている。
両腕を蛇腹のように細かく分割することで、10メートルほどの長さに伸張できる。直接的・物理的な攻撃手段。右手には攻撃・接触した相手の魔術回路を混乱させ、術式の構築を妨害するジャミング機能が備わっている。ジャミングは青子いわく「駄機能」で、一人前の魔術師相手であれば通用しない。本来なら回路に人形が接続した際、逆に人形の方が侵入されて敵魔術師に返り討ちにされる類の稚拙なものなのだが、青子が半人前なので有効だった(無論、橙子は青子の力量を見切ってこの機能を搭載している)。ジャミングは人形が健在な限り有効。
両目は対象を病いにかからせる呪い「ガンド」を投影する水晶製。奥の手として心停止の病いを与える「フィンの一撃」すら有し、物理的干渉力を持たないはずの呪いで破壊力を伴うほどのものを繰り出す。ただし、これもまた青子いわく無駄な機能で、「ガンドに物理的破壊力を持たせるくらいなら、他の魔術(例えばゲマトリア一節分)でやったほうが早くて効率的」らしい。
二足歩行から多足・六足歩行への変身が可能。二足歩行時の人形は小刻みな加速と減速ができず、狭い場所では全速移動ができないといった欠点があるが、多足であればその欠点は解消される。ただし、魔力の消費は多くなる。「構造的にありえない変形」と言われた。
有珠いわく、使い魔というより衛兵(センチネル)。
これら様々な機能により、青子の見立てでは「日本円なら1億に届きかねない」という高級品らしい(希少なアンティーク品だと仮定しての見立ての為、実際の製作費は不明)

登場作品と役柄

空の境界
主要登場人物の一人。
月姫
物語に橙子は直接登場しないが、青子が遠野志貴に与えた「魔眼殺し」の眼鏡は橙子が作ったもの。これを強奪された腹いせに、妹の魔術協会の口座を利用して勝手に買い物をしているとかいないとか。
MELTY BLOOD
やはり物語に直接登場はしないが、青子の勝利時セリフの中に、前項の口座の件に絡めて「橙子を見かけたら殴っといて」という伝言的なものがある。
Fate/stay night
あるルートのEDで、橙子のことを示唆する会話が交わされ(本編で明言はされていないが、用語辞典では少なくとも「関係がある」とされている)、その人物の作品である人形も登場する。
Fate/EXTRA
ゲスト。スキル・パラメーターアップをする「魂の改竄」を担当……のはずだが、仕事は妹に投げっぱなし。何故か殺し合いには発展していない。
本来の目的は人探し。聖杯に用はないが、聖杯の構築したネットワークに用がある。聖杯を手にしないと生きて出られない聖杯内部なので、「死んでもかまわない自分」を作って来ている。
魔法使いの夜
青子に会うために、故郷である三咲市へと舞い戻る。
ちびちゅき!
青子と相変わらず仲が悪いが、能力がお互いに制限されているので殺し合いに発展しない。
後に気紛れで龍之介達の作品を手直ししたことで、彼らから「師」と一方的に崇められる事に。
2015年の時計塔
旧知の人物より一通の不可解な手紙を受け取り、とある秋の正午に時計塔十一番街ロクスロートを訪れる。

人間関係

蒼崎青子
妹。姉妹仲は悪いどころか最悪。

空の境界

両儀式
使い魔代わり。
黒桐幹也
「伽藍の堂」の従業員。結界内にあった事務所を探り当てたことに驚嘆。
黒桐鮮花
弟子。
荒耶宗蓮
かつて同期にて学んだ魔術師。
コルネリウス・アルバ
かつて同期にて学んだ魔術師。
秋巳大輔
知り合いの刑事。情報提供者。
大輔は橙子に好意を持っているが、橙子の方がそれをどう思っているのか、知っているのか知らないのかは定かではない。

魔法使いの夜

ルゥ=ベオウルフ
青子を倒すための切り札として契約した使い魔。
静希草十郎
「妹の所有物」と見なしており、自分の物にして、破壊したいと思っている。
久遠寺有珠
恩人の娘。好み。
文柄詠梨
幼い頃の教育係であり、初恋の相手。三咲市に戻って再会した際、興味を失った。
周瀬律架
かつての兄弟子。気の置けない友人のような関係。

ちびちゅき!

キャスター (第四次)
彼が作ったおかしな触手を見て、余りに酷かったのでそれを「スクール水着を着たセイバーフィギュア」に作り直す。
それからというもの、彼から尊敬の念を込めて「我が師」と呼ばれている。
雨生龍之介
キャスターと同じく、その造形技術を尊敬しており、「これこそ本物のCOOL!COOL JAPANってやつだよ!」と絶賛されている。

その他の作品

主人公 (EXTRA)
Fate/EXTRAの主人公。度々改竄に訪れる彼(彼女)に助言を授けてくれる。素っ気無い態度で接していたが、最終決戦間近で「これほど欲張りな魔術師はそうはいない」と彼女なりの賞賛をする。
獅子劫界離
Fate/Apocryphaの人物。何と彼に秘蔵の煙草を一箱譲っている。譲ったのが彼女とは明言されていないが、「吸うたびに無常感を抱かせる」ような煙草を好き好んで吸うのは、どれほど「運命」が変転し世界が変わろうとも、彼女一人である。

名台詞

空の境界

「……ほんと。なんて堕落だ。私は段々と弱くなっていく。
 荒耶。 私の理想の超越者というのはね、仙人なんだ。卓絶した力と知識を持ちながら何もせず、ただ山奥に佇むのみ――――。
 その在り方に、私はずっと憧れていた。けれど振り返ってみたらもう戻れなかった。
 中に物が詰まりすぎた私は、そこに到達できる日がこない。ずっと、そうだと思っていた。
 なあ荒耶。魔術師は生き急ぐ。なんの為だろう。自分一人の為ならば外界とは関わるまい。
 なのになぜ外界と関わる。なぜ外界に頼る。その力で何を成すというのか。アルス・マグナによって何かを救済しようというのか。
 それなら魔術師になどならず王になればいいんだ。
 おまえは人々を生き汚いと言うが、おまえ本人はそうやって生きることができまい。
 醜いと、無価値だと知りつつもそれを容認して生きていくことさえできない。
 自身が特別であろうとし、自身だけが老いていく世界を救うのだという誇りを持たなければとても存在していられない。
 ああ、私だってそうだったさ。だがそんな事に意味はないんだ。
 ―――認めろ荒耶。私達は誰よりも弱いから、魔術師なんていう超越者であることを選んだんだ」
かつての友人から「お前は堕落した」と告げられて返した言葉。
「いいか、今の私は工房に保管してあったものだ。
 おまえによって青崎橙子が完全に殺された時点で目が覚めた。だから、私は生後一時間という事になる。
 青崎橙子は人形師だ。私は何年か前、ある実験の過程で自身と寸分違わぬ人形を作り上げた。
 自分以上の能力を持つわけでもなく、自分以下でもないまったく同一の性能を持った器だ。
 それを見てね、蒼崎橙子は思ったんだ。これがあるのなら、今の自分は必要ないんじゃないか、とね」
アルバの「自分が偽物だと知ることに耐えられないはず」という主張に対して。
決して作れないはずの「自分と全く同じ人形」を作り出す手腕も凄まじいが、それ以上にぶっ飛んだ精神性が見て取れる。
アルバはそんな彼女のことを「自己という唯一性を簡単に捨て去るような怪物」と評し、長年抱いてきた復讐心を喪失した。
「魔術師が無闇に魔法などと口にしてはいけないな」
殺したはずの橙子が、しかもタイムラグもほとんどなく現れたことに混乱したコルネリウス・アルバに対して。
言っていることは正論だが、それ以上に、彼女自身「魔法」に対しては思うところがあるのだろう。
「学院時代からの決まりでね。私を傷んだ赤色と呼んだ者は、例外なくブチ殺している」
怪物に喰われているアルバに言い放った、遅すぎた警告。

魔法使いの夜

「逆だよ。姉だから敵なんだ。 私には青子からあらゆる権利を奪う義務がある」
妹である青子となぜ殺し合いをしなければいけないかと聞いた草十郎に対して。
「おまえね、私をなんだと思ってるんだ。
 脳だけ保存とか、面倒だから百人ひとまとめにした肉塊とか、そんな手抜きなんぞするものか!
 きちんとカフェを用意して、食事も娯楽も睡眠も自由に提供しているんだぞ?
 中には"一生ここで暮らしたい!"なんて騒ぎ立てる莫迦もいるぐらいだ!」
魔術刻印提供者の扱いについて。仮想世界で優雅に暮らしているらしい。倒した相手が有益な素材を提供するなら、命はとらない。むしろ無理やり生かす。

メモ

  • たまに妹の名前で協会からお金を引き出している。見つかる危険性が有るのにそんな事をしているのは嫌がらせの為。
  • 初期イラストは「教育ママ」と評されたりも。というか、青子も『MELTY BLOOD』で「教育ママみたいな女」と言っている。
  • 「魔術師当人が最強である必要はなく、最強のものを作り出せばよい」という持論を持つが、その理論はアトラスの錬金術師とまったく同じものである。
  • 「煙龍」という煙草を愛飲している。台湾製の不味いもので、作った会社はすでになく、物好きな職人がダンボール一箱分だけ作ったというもの。工房・伽藍の堂の備品の中で二番目くらいに価値がある。
    • Fate/Apocrypha』では、獅子劫界離という人物がこの銘柄と思しき煙草をある魔術師から一箱譲ってもらった、と述べられている。
  • 歌月十夜』によれば、三咲町の焼肉屋「大帝都」の食べ放題メニューで二位の記録を持っているらしい。ちなみに一位は青子。
  • 『Fate/EXTRA』に出演している最中は常に眼鏡をかけているが、性格は冷酷な方で固定されている。
  • 橙子その人と明言されているわけではないが、『Fate/Zero』でも橙子と思しき「日本在住の腕のいい人形師」について言及されている。
  • 『プリズマ☆イリヤ ツヴァイ!』では、アイリスフィールが『姉』について語った際、イメージ映像として琥珀ステンノエウリュアレらとともに1コマだけ登場。「姉より優れた妹などいねぇ!!」と叫んでいた。
『魔法使いの夜』関連
  • 『魔法使いの夜』公式サイトのキャラクターページでは、「大の妹思い」(!)で「青子のピンチを聞きつけてアドバイスする為、久遠寺邸にやってくる」(!!)と紹介されている。ぶっちゃけミスリード情報だが、無理やりこじつけるのであれば嘘ではない。殺したくてしかたないほどの「妹思い」(「思い」には「執念」「恨み」という意味もある。慣用的に「妹思い」と言えば、普通なら全く逆の意味になるものだが)で、「ピンチを聞きつけてアドバイスする為」なのも、あくまでアドバイスであって、別に敵対者であることを否定しているわけではない。
  • 有珠に対して「体は好み」と言ったり、ナナカマドの毒を飲ませる際に「趣味」といって口移しをするなどしている。また、番外編「誰も寝たりしてはいいけど笑ってはならぬ」で久万梨金鹿と会った際も、コナをかけるような発言をしている。いずれも眼鏡を外しての男性的な性格の時の言動だが、これが眼鏡を外している時限定なのか、眼鏡をかけている時も変わらない趣味なのかは定かではない。
  • 番外編「はちみつを巡る冒険」では三咲市に戻ってきたのは「4年」ぶり、と記述されている箇所が多数あるが、経歴と青子も含めた年齢から計算すると、「3年」の間違いであると思われる。番外編ではなく本編第九章では「3年」前に出奔したと記述されており、番外編のミスと思われる。
  • 魔術協会で修めた成果は特許という形で残っており、橙子の年収は1万ポンドを越えるのだとか。
    • が、三咲市に来るにあたって、全部売っぱらった。その資産も、大量の人形を作ったり工房に資材をヘリで空輸するなどして、全てすっからかんになっている。
  • パチンコが得意。工房を三咲市に移してからは、ベオの食費を始めとする日々の生活費はパチンコで荒稼ぎをして賄っている。橙子いわく、「どうでもいいゲームは星の巡りがいい」らしい。なお、英国では玄人には好まれないという理由で、パチンコは営業していないらしい。目的は軍資金だが、普通にゲームも楽しんでいる。
  • 橙子が魔術刻印を奪った魔術師は今も生きており、時計塔の橙子の工房にある「術式提供者用・慰安施設」なるところで暮らしている。
    • 施設は仮想世界になっているらしく、中の魔術師は自分が主役になれる物語を楽しんでいるらしい。ちなみに、演目は橙子の趣味でホラー。
    • 中の魔術師から色々と要望がくるので、段々と維持費がたいへんになっているのだとか。いっそ会社を興すか、見切りをつけて解雇するか悩みどころらしい。
    • 当初は橙子にとって、魔術刻印を奪うのは「挑んできたから火の粉を振り払った」というものだった。中には「つまらない単語」を言った相手もいたとか。ようするに戦闘のついでに得られる戦利品でしかなかったのだが、次第に刻印の収集が趣味的なものになってしまう。
    • 有珠によると、「橙子なら刻印の持ち主を生かす手間より、刻印を材料に人形を作った方が効率的で強力」らしく、これもまた手段と目的が逆転した橙子の悪癖の産物である。
  • 律架によると、橙子は性格的に戦闘には向かないタイプ。研究者肌で、戦闘に利益を求めてしまう。刻印を収集しているのが最たる例。敵を倒すことが目的なのに、刻印収集のために敵の命を見逃す、むしろ無理やりに生かすとか本末転倒。残酷ではあるが冷酷ではない。合理的なむごたらしいことができる癖に、相手への思いやりがある。
  • 本編終了時、青子から「三咲市に入るとマダガスカルガエルになる呪い」を受けてしまう。ルーンにはもともと変身術があるので、この呪いはかかりやすかったらしい。十年は解呪できないという凶悪なもの。解呪するためには、かけた相手に呪いを返す必要があるが、呪いをかけたのは魔法で10年歳をとった青子。つまり呪いを返す相手が10年後までいないことになる。
    • 精神をカエルと入れ替えるのではなく、肉体を再構成してカエルにしてしまう、というもの。
      だがこれを逆手にとり、番外編「誰も寝たりしてはいいけど笑ってはならぬ」では「肉体にかかった呪いならその肉体を使わなければいい」という暴論で三咲市を訪れる。『空の境界』の時代で製作可能になっている「自分と全く同じ人形」を使ってのことと思われるが、詳細は不明。

話題まとめ

設定の変遷
用語辞典や各種資料で「型月伝奇フル出場の万能便利屋」「橙子さんはどこにでも現れる」などと言われるように、蒼崎橙子はTYPE-MOONの主要作品にはほぼ何らかの形で参加あるいは関係性を持っているという特異な人物である。そのため、出場作品が増えるに従い、細かな設定の変更・マイナーチェンジが繰り返されている(容姿の変更が顕著)。
特に、『魔法使いの夜』が未発表だった原作小説からPCゲーム版としてリニューアルされた際、それまでに公開されていた設定といくつもの変更が行われている。
  • 【キャラクターデザイン】
    小説『空の境界』における初期の橙子のイラストは、薄いブルーのショートヘアであった。しかし、『劇場版』では武内崇氏によってリデザインされ、青子同様の赤色のセミロングの髪をアップにまとめたものとなった。元々武内氏は、『空の境界』以前の『魔法使いの夜』の登場人物であった橙子のイメージから、「キツめの姉系」として『空の境界』での橙子を描いた。だが『空の境界』を読み進めていくうちに「なんかいい奴じゃね?」と思いなおし、『劇場版』に際してリニューアルに踏み切ったという。なお、このイメチェンの件については、仲が最悪の妹から文句を言われていたりする。
    以後、橙子は赤髪のイメージが定着していくが、『Fate/EXTRA』では青子と共に登場し同席するため、同一系統の色の髪を避けるためか、青髪の旧デザインで登場する。一方、『カーニバル・ファンタズム』のラストのアーネンエルベでのパーティで青子と登場した時は、茶髪になっていた。
    「Character material」では若い頃(まだ視力が衰えていないので眼鏡をかけていなかった頃)のデザインが公開され、黒のロングで描かれている(線画のみはこれ以前にFate用語辞典等で公開されていた)。
    『魔法使いの夜』のゲーム化に際して、キャラクターデザインがこやまひろかず氏の担当になったこともあり、さらにリデザインされている。
  • 【学歴】
    『空の境界』にて、礼園女学院出身であることが語られている。だが「Character material」では、18歳まで学校に行ってなかったと記されている。そして、ゲーム『魔法使いの夜』によれば、普通に礼園女学院に3年間通い、18歳で卒業しているとされる。
  • 【年齢】
    青子との年齢差は「Character material」では2年となっている。ゲーム『魔法使いの夜』では4年の年齢差に変更されている。
  • 【後継者争い】
    『月姫』用語辞典では、「蒼崎の遺産を妹に横取りされたショックで師である祖父をぶっ殺し、魔術協会に鞍替えした人」と紹介されている。このため、「祖父の心変わりで青子が後継者になったのが先、橙子が蒼崎を去ったのが後」と見られていたが、ゲーム『魔法使いの夜』では「橙子が蒼崎を去ったのが先、青子が後継者になったのが後」と説明されている。
    遺産を巡って姉妹が相容れないという点は変わらないが、その経緯は異なっている。
  • 【妹との不仲】
    出くわせば殺し合いの最悪な関係性、という基本は変わらないが、姉妹喧嘩は魔法使いの後継者争いが起こったがゆえであり、最初から仲が悪かったわけではないとされる。「Character material」によると、昔の橙子は不器用ながらに一応青子を気にかけていたらしい。
    ゲーム『魔法使いの夜』では、橙子には昔から、人の持ち物を横取りし、ぶっ壊したがる癖があり、幼い頃から青子は酷い目にあってきたとされ、「Character material」ほど微笑ましい関係ではなくなっている。
    『Fate/EXTRA』では姉妹で同席しているのだが、何故か殺し合いには発展していない。
  • 【祖父】
    橙子にぶっ殺された、とされていた蒼崎姉妹の祖父だが、ゲーム『魔法使いの夜』では生きている。この祖父の肉体は、橙子が幼い頃に文柄詠梨によって破壊されており、今は半ば霊体のような状態になっているらしい。橙子も祖父を倒すことは考えておらず、郵便ポストサイズの狭苦しい「城」の結界に閉じ込めての無力化にとどめた。
    「魔法」への路を拓いたのは、『空の境界』で黒桐鮮花によって「蒼崎の三代目が魔法を作り、橙子は六代目にあたる」と説明されており、この祖父も「代々の蒼崎の中で魔法を継承した内の一人」と目されていた。しかし、「Character material」とゲーム『魔法使いの夜』では、この祖父が魔法への路を最初に拓いたことになっている。
    ちなみに、橙子と青子の父親は魔術の才能がなかった。

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