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| :クル王の息子、パーンダヴァ五兄弟の三男として生まれた彼は同時に雷神インドラの息子でもあった。 | | :クル王の息子、パーンダヴァ五兄弟の三男として生まれた彼は同時に雷神インドラの息子でもあった。 |
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− | :他の追随を許さない器量もさる事ながら清廉な性格、様々な方面で「まさに非の打ち所のない」彼だったが、一人の兄が賭け事に敗北したことによって国を追放されてしまう。<br>この時既に、彼の中でカルナとの戦いが避けられないという予感があった。何しろカルナは、パーンダヴァ五兄弟を宿敵と睨むドゥリーヨダナを父と仰いでいた。 | + | :他の追随を許さない器量もさる事ながら清廉な性格、様々な方面で「まさに非の打ち所のない」彼だったが、一人の兄が賭け事に敗北したことによって国を追放されてしまう。<br>この時既に、彼の中でカルナとの戦いが避けられないという予感があった。何しろカルナは、パーンダヴァ五兄弟を宿敵と睨むドゥリーヨダナを父と仰いでいたからだ。 |
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− | :だがそれだけではない。カルナを思う度に鏡に映った己を見るような寒気がする感覚であり、まるで何もかも見通すような口調で怯えてしまったのだ。 | + | :だがそれだけではない。カルナを思う度、鏡に映った己を見るような寒気がする感覚に襲われ、まるで何もかも見通すような口調に、さらに怯えてしまったのだ。 |
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− | :彼自身は兄弟だけでなき父母も、そして民を愛し、愛されている。なのに何処かでソレを冷めた目で見る自分がいる―― | + | :兄弟たちだけでなく父も母も、そして民をも愛しているし、愛されている。それなのに、何処かでソレを冷めた目で見ている自分がいる── |
− | :カルナは冷徹さの中に、人を信じる温かみがあるが、己は穏やかさの中で絶望的なまでの諦観がある。 | + | :カルナは冷徹さの中に、人を信じる温かみがあるが、己は穏やかさの中に、絶望的なまでの諦観がある。 |
| + | :恐ろしい。己の闇が恐ろしい。 |
| + | :徹底的に己を律した。律して、律して、律し続けた。醜く矮小な感情を、このアルジュナが抱いてはならないのだから。知られては、ならないのだから…… |
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− | :『カルナを殺さなければならない』と決意したのは、最初にカルナと顔を合わせた時からだろう。<br>それは神々によって定められた運命ではなく、アルジュナが純然たる敵意と共に選んだ<ruby><rb>業</rb><rt>カルマ</rt></ruby>である。<br>たとえソレが間違っていたモノだとしても、やりとげなければならなかったのだ。<br>もし己の闇を、醜く卑小な感情を暴かれたら、恥辱で死に絶えてしまうのだから。 | + | :『カルナを殺さなければならない』と決意したのはいつからだったか。たぶん、最初にカルナと顔を合わせた時からだろう。<br>それは神々によって定められた運命ではなく、アルジュナが純然たる敵意と共に選んだ<ruby><rb>業</rb><rt>カルマ</rt></ruby>である。<br>たとえソレが間違っていたモノだとしても、やりとげなければならなかったのだ。<br>もし己の闇を、醜く卑小な感情を、あの鋭い眼光で己を暴かれたら、きっと恥辱で死に絶えてしまうのだから。 |
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| :そして内通者によってカルナは馬車から落ち、車輪を動かそうともがく彼に対して弓を構えた。 | | :そして内通者によってカルナは馬車から落ち、車輪を動かそうともがく彼に対して弓を構えた。 |
| :それは古代インドでの戦士の道義に反するものであったが、今やらなければカルナを倒せる機会を失ってしまう。 | | :それは古代インドでの戦士の道義に反するものであったが、今やらなければカルナを倒せる機会を失ってしまう。 |
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− | :カルナも弓を構える際に微笑んでいた。無論、アルジュナへの嘲笑ではなく、ルールを破ってまで己を倒すことへの喜びであったが、それを彼は知ることはなかった | + | :カルナも弓を構える際に微笑んでいた。無論、それはアルジュナへの嘲笑ではなく、ルールを破ってまで己を倒すことへの喜びであったが、それを彼が知ることはなかった。 |
− | :そうしてまで宿敵の打倒を成し遂げ、彼は安堵した。しかし同時に生涯に渡って『悔恨』を抱くことなった。 | + | :果たして、アルジュナの弓は太陽を撃ち落とした。 |
| + | :しかし戦士としての道義に反してまで宿敵の打倒を成し遂げたことで、彼は途方もない虚無にとらわれる。そこに充足感はなく、勝利したという歓喜もない。戦いが終わったという安堵すらもない。<br>──これは勝利なのだろうか。──これは敗北ではないだろうか。<br>放つべきではなかった矢を放ったことは、やがてはアルジュナが生涯に渡って『悔恨』を抱くことに繋がった。 |
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− | :あの日引いた弓の結末に、“人として”、“戦士として”未練を残すがゆえに―――。 | + | :あの日引いた弓の結末に、“人として”、“戦士として”未練を残すがゆえに──。 |
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| == 登場作品と役柄 == | | == 登場作品と役柄 == |