「鈴鹿御前」の版間の差分
ナビゲーションに移動
検索に移動
(修正) |
(追記) |
||
113行目: | 113行目: | ||
== 話題まとめ == | == 話題まとめ == | ||
+ | ; 正体について | ||
+ | : 作中において盗賊、鬼、天女……と正体に諸説あるとされているのは時代や地域によってその正体が違うためと思われる。 | ||
+ | : 鎌倉時代に成立した『保元物語』では「盗賊・立烏帽子」として伊賀の武士に捕縛されたとある。また『弘長元年公卿勅使記』では立烏帽子の崇敬した神社の神が鈴鹿姫であるともされるが、どちらの資料でも立烏帽子が男女どちらかまで描写されていない。 | ||
+ | : 室町時代前半の『太平記』『耕雲紀行』などでは「盗賊・立烏帽子」と「鈴鹿姫」が同一視され坂上田村麻呂の英雄譚に登場して討伐されるが、その時に着ていた立烏帽子を投げたものが鈴鹿山の鏡岩になったとある。室町時代後期になると『鈴鹿の草子』『田村の草子』が登場し16,7歳の「天女・鈴鹿御前」として登場する。これら御伽草子では烏帽子は被らずに玉の簪や十二単など、盗賊としてイメージが薄れている。また大嶽丸を討伐する英雄譚ではあるが、娘をもつ母や田村麻呂への愛などにも焦点が置かれている。 | ||
+ | : 一方、江戸時代の東北では熊野詣が盛んであり、旅の宿のある鈴鹿から東北ゆかりの田村麻呂の登場する『鈴鹿の草子』が入り、東北各地の伝承も混じったため『田村三代記』として成立した。『田村三代記』では天竺から日本を転覆させるため伊勢鈴鹿山に来た「第四天魔王の娘・立烏帽子」として登場する。立烏帽子と同格の鬼神である蝦夷の大嶽丸と連合されると大変であると、朝廷は田村利仁を向かわせるものの田村利仁は16,7歳の立烏帽子を討てず、逆に立烏帽子から田村利仁の祖父は星の子供で祖父が龍の交わり生まれたのが利仁の父であり、その父が奥州の鬼である悪玉姫と交わり生まれたのが利仁であると出自を告げられる。立烏帽子は田村三代こそ日本の悪魔を鎮める観音の再来であり、自身も大嶽丸に何度も手紙を無視されたから倒したいが女であるため男がいないと無理である、ならば日本の悪魔を共に倒そうと言い二人は契りを交わす。近江の高丸に常陸鹿島まで逃げられた際は神通力で飛ぶ光輪車で移動し、十二の星を降らせ星の舞をさせ利仁の放った矢を千の矢に変え降らせたなど、その後も大嶽丸討伐まで魔王の娘として大活躍する。 | ||
+ | : このように鈴鹿峠の盗賊や鈴鹿山の女神や天女、魔王の娘と様々なのは時代や地域、さらには御伽草子や奥浄瑠璃などの形態の違いにより鈴鹿御前に求められる役割まで違ったためである。 | ||
+ | |||
; 三振りの宝剣 | ; 三振りの宝剣 | ||
− | : | + | : 鈴鹿御前の三振りの宝剣である「大通連」、「小通連」、「顕明連」は御伽草子や奥浄瑠璃などに登場する架空の刀であるため実在はしないが、伝承や写本の違いなどにより表記や由来は様々である。 |
− | : | + | : 『鈴鹿の草子』『田村の草子』では三振りの宝剣は天竺真方国の阿修羅王が大嶽丸に贈ったものだが、坂上田村麻呂に味方した鈴鹿御前の謀略により大通連と小通連は奪取に成功し坂上田村麻呂を勝利に導いた。しかしもう一振りの顕明連は大嶽丸が天竺の叔父に預けており、その神通力を持って大嶽丸の復活を許してしまう事になる。 |
− | : | + | : 『田村三代記』では始めから鈴鹿御前が所持していた描写が多く大通連は文殊菩薩の化身(または文殊菩薩の打った智慧の剣)とされ、小通連は普賢菩薩の化身(または普賢菩薩の打った慈悲の剣)とされる。顕明連は近江の湖に棲む蛇の尾より取れた剣とされ、旭日に当てれば三千大千世界を見渡すことができるという。釈迦如来とその二脇侍である文殊菩薩と普賢菩薩が宝剣のモチーフであり、「顕明」や「三千大千世界」など三振りの宝剣に仏教の影響が見受けられる。 |
: これらの違いは盗賊、第四天魔王の娘、天女と変化していく過程で物語中の鈴鹿御前の役割の変化に併せるように、三振りの宝剣の役割も変っていったものと思われる。もっとも彼女を祀る鈴鹿峠の片山神社には「鈴鹿流薙刀術発祥之地」の碑が建ち、祇園祭の鈴鹿山の御神体も大長刀を手にしていることから、信仰の上では刀剣より薙刀を振るう印象が強く浸透している。 | : これらの違いは盗賊、第四天魔王の娘、天女と変化していく過程で物語中の鈴鹿御前の役割の変化に併せるように、三振りの宝剣の役割も変っていったものと思われる。もっとも彼女を祀る鈴鹿峠の片山神社には「鈴鹿流薙刀術発祥之地」の碑が建ち、祇園祭の鈴鹿山の御神体も大長刀を手にしていることから、信仰の上では刀剣より薙刀を振るう印象が強く浸透している。 | ||
; 坂上田村麻呂との剣合 | ; 坂上田村麻呂との剣合 | ||
− | : | + | : 原作の回想同様に鈴鹿御前が坂上田村麻呂と剣合したシーンは、室町時代前期の『太平記』や『酒呑童子絵巻』にも記載されている。『酒呑童子絵巻』では、彼女との剣合の際に坂上田村麻呂が用いた刀が「血吸」であり、剣合の後に伊勢神宮に奉納した血吸が源頼光に渡って酒呑童子を斬ったという、言わば源頼光の振るう刀「童子切安綱」自体の由緒を高めるための脇役エピソードでしかなかった。彼女が坂上田村麻呂と互いに助け合いながら数々の鬼神を退治し英雄としての功績を紡いでいくのは、室町時代後期に『鈴鹿の草子』『田村の草子』など鈴鹿御前と坂上田村麻呂が中心の御伽草子が成立してからになる。 |
== リンク == | == リンク == |
2015年12月1日 (火) 05:27時点における版
セイバー
- 真名:鈴鹿御前
『Fate/EXTRA CCC FoxTail』に登場する、「剣士」のクラスのサーヴァント。
制服に携帯電話、鞄を携えた女子高生風の少女。戦闘時は白拍子風のミニスカ装束に立烏帽子を纏う。
- 略歴
- 坂上田村麻呂と共に活躍した伝承上の女性。
- BBの依頼で、マスターである坂神一人と共にサクラ迷宮第七階層に侵入したマスター達やNPCを殺戮し、言峰綺礼や臥藤門司、 殺生院キアラとアンデルセンを殺害した。
七階層にやってきた岸波白野にも襲い掛かるがキャスターに阻まれ、剣戟と共に互いにマスターとの惚気話(捏造あり)、相手の恋愛観の批判と激しい女の戦いを繰り広げる。
- 人物
- 衣装は羽織のような水干に緋袴風のミニスカートという和装の、白拍子と女子高生の制服を混ぜ合わせたかのような独特なもので、出会った当初の白野はサーヴァントと認識できず、キャス狐からは「コスプレですかねぇ」と評されている。
喋り方も見た目同様に軽くて明るい若者風で、悪く言うと軽薄。
だが相手のマスターを狙う合理性と冷徹な思考、敵の戦術を分析する洞察力も同時に併せ持つ。
マスターである一人を「カレシ」と呼び、本人曰く「運命的出会いから告白、デートと恋のラブ値上昇中」。
更にキャスターの獣耳を見て、一人の反応を分析した結果、新たに狐耳と尻尾を生やした(一人は当然そんなサービスは求めていない)。当然、キャスターは自分のアイデンティティをパクられたため激怒している。
- 能力
- 三振りの宝剣を保有し、それらを用いた三刀流の剣術を操る。一振りは手に持って直接攻撃に使い、残りの二振りはセイバーの周囲で宙に浮いて展開され独立して攻撃や防御を行うという、間合いを問わずに手数で相手を追い立てていく戦闘スタイルをとる。
ただしキャスター曰く剣術としては雑らしく、防戦一方とはいえステータスが低いキャスターでもある程度凌げるレベル。
それ以外にも変化能力や魅了の魔眼など多彩な能力を持つが、魔眼は「フツーのウィザードなら抵抗できて当然」と本人に評される程度の効果で、好んでいない。
ステータス
クラス | マスター | 筋力 | 耐久 | 敏捷 | 魔力 | 幸運 | 宝具 | クラス別能力 | 保有スキル | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
セイバー | 坂神一人 | ? | ? | ? | ? | ? | ? | ? | ? |
宝具
- 文殊智剣大神通恋愛発破天鬼雨(もんじゅちけんだいしんとう れんあいはっぱ てんきあめ)
- 種別:対軍宝具
由来:文殊菩薩の智慧の剣「大通連」。 - セイバーが保有する三振りの宝剣のうち、黄金色の一振り。普段はセイバーの周囲で宙に浮いて展開され、独立して攻撃や防御を行う第一刀『大通連』の真名解放。数え切れないほどの宝剣が上空に同心円状に何重にも展開され、剣の豪雨を勢いよく降らせる。
- 才知の祝福(さいちのしゅくふく)
- 由来:普賢菩薩の慈悲の剣「小通連」……なのだが大通連と同様に文殊菩薩の智慧の剣として設定されている。
- セイバーが保有する三振りの宝剣のうち、白銀色の一振り。普段はセイバーの周囲で宙に浮いて展開され、独立して攻撃や防御を行う第二刀『小通連』の真名開放。
登場作品と役柄
- Fate/EXTRA CCC FoxTail
- セイバーのクラスで登場。メインヒロインであるキャス狐のライバルとして立ちふさがる。
- ちびちゅき!
- キャス狐、アタランテといった他の獣耳属性のサーヴァント達と競演。
- 後にキャス狐の良妻賢部に対抗してギャルサークルを立ち上げるが……
人間関係
Fate/EXTRA CCC FoxTail
- 坂神一人
- マスター。「カズくん」あるいは「カレシ」と呼び、べた惚れしている。
- BB
- 彼女のオーダーに従い、聖杯戦争参加者たちを抹殺している。
- キャスター
- 因縁の相手。似た者同士だが相性は最悪。どれくらい似ているかというと、SG3つのうち最初の2つが同じ。
- 岸波白野
- 因縁の相手のマスター。セイバーから白野への評価は「無能なうえ無個性で無価値じゃん、だっさ!」
- ラニ=VIII
- 敵対関係……のはずだが、下着に関する意見の一致からあっという間に意気投合した。
ちびちゅき!
生前
- 坂上田村麻呂
- 互いに一目惚れした関係。互いに助け合いながら英雄としての功績を紡いでいった。
- 大嶽丸
- 当初は共に日本を征服しようと、喧嘩を売ってるとしか思えない内容の同盟を結ぼうとする。
後に偽りの結婚をして潜入し、彼の護りを内側から解呪し田村麻呂と共に彼を討ち果たした。
見た目はビジュアル系のイケメン。
- 悪路の高丸
- 田村麻呂と協力して、最近ちょっと調子にノッていた彼を撃退した。
一般には「悪路王」といったほうが通じやすい。
大嶽丸とは対照的に、身長10mはありそうな筋骨隆々とした姿。
名台詞
- 「カズくん ごめーん。 今ので絶対倒せるハズだったし!
え~なんか、あいつらカンジ悪くない?」 - 白野に頭上からいきなり斬りかかり、緊迫した空気が流れるが、あっという間にシリアスな雰囲気は崩壊。
モニターしている旧校舎の面々も含めて全員沈黙するしかなかった。
- 「カズくんはあんな獣耳とかどう? えーと……『萌え』?」
- キャス狐の耳を見て、カレシの反応をリサーチ。
若者言葉を多用していてもやはり過去の人間であるため、「萌え」という新しい言葉には馴染みがないらしい。
- 「いきなり嫁ポジション狙うとか。焦りすぎだし」
- キャス狐の逆鱗を突きまくる。それも分かってて。
- 「―――吐いた唾は飲めないわよ、駄狐」
- キャス狐に「雑な剣筋」「何振りあっても捌ける」と挑発されて激怒。宝具を解放する。
- 「草紙 枕を紐解けば 音に聞こえし大通連
いらかの如く八雲立ち 群がる悪鬼を雀刺し
文殊智剣大神通――恋愛発破 天鬼雨!!
――で どう捌いてくれるのかマジ楽しみ」 - 第一刀宝具解放。キャス狐の「何振りあっても捌ける」発言に対して、じゃあやってみろとばかりの剣の豪雨。
- 「貴様を私の臣下としてあつかってやるから私の言うとおり働くがいい
まずは私の代わりに日本を侵略するのだ」 - 大嶽丸に出した同盟の書状(メール)。……ほとんど降伏勧告である。キャス狐からも盛大にツッコまれた。
- 「度重なる無礼に我 激おこ
私の命令を拒否するお前は悪に相違ない
殺してやるから私の元まで参れ」 - 上記の後に出した書状(メール)。さすがに平安時代なのでこんな文章ではなかったと思われるが。
- 「私は結局あんたみたいに人間騙したり殺したり逃げたりしてないし とやかく言われたくないんですけどー」
- キャス狐から散々ツッコまれたことに対する返し。
最大級の地雷を容赦なく踏み潰されたキャス狐のキレっぷりはおばさま呼ばわりや負け犬呼ばわりの比ではなかった。
- 「サーヴァント保有スキル「JK力 A」ここにありっしょ!
- キャス狐から「立烏帽子」として誇りはないのかと散々問われて。もっとも何を着てもそれが「立烏帽子」スタイルだと主張し、私服のキャス狐も同じ結論なため、やはり似た者同士である。
- 「これなるは 菩薩が鍛えし 小通連
抜かば智慧は文殊が如く――
才知の祝福!! - 第二刀宝具解放。マスターからの「我が侭はここまで 実力を見せろセイバー」という命に答え、本気を出す為に宝具を使用する。
メモ
- ファンからの通称はJKセイバー。女子高生的なファッション及び軽薄な言動から。また上述の通り本来の耳と尻尾ではないのだが狐セイバーとも。
- ただJKセイバーという場合、彼女の登場以前からあるあっちのセイバーの女子高生バージョン等を指すこともあるので少々ややこしい。
- 「立烏帽子を被った姿」「変化を得意とする」といった設定、何よりその宝具から、真名が公開される前から彼女の正体を推測するのは難しくはなかった。実際、劇中でも凛とラニは比較的初期から彼女の真名に目星をつけていた。
- 原作『CCC』にも、その没案にもなかった、漫画版オリジナルキャラクターの一人。コミックス1巻に収録されている制作楽屋裏漫画によると、武内氏の「サプライズが欲しい」という考えから生まれたらしい。
- デザイン・設定を制作したのは武内氏(制作楽屋裏漫画ではデザインも設定もたけのこ氏に丸投げする気な様子だったが、まあ色々あったのだろう)。あの武内氏がセイバー顔じゃないセイバーを書くなんて驚きである。
- 作劇的な観点から見た場合、原作『CCC』に登場し、本作では登場していないランサーの役目を引き継いだキャラクター、と言えるかも知れない。
(特に『CCC』ではセイバーとの関係性において顕著だが)物語序盤を引っ掻き回すライバルキャラのポジション、女子を強調した軽い言動など、共通性も多く見られる。「キャスターが主役の、CCCの物語」において、武内氏の意向である「サプライズ」を満たしつつ、似たような立ち位置のライバル的キャラクターが必要とされた、のかも知れない(一応、キャスターとランサーも「料理好き【愛妻願望】」「ケモミミ派と邪教ホーン派」で対となってはいたが)。- 実際、彼女のSGのうち二つは「独占願望」と「料理上手」で、キャス狐のそれと完全に同じであった。さすがに3つ目は異なると思われるが、彼女の正体である鈴鹿御前を祀る鈴鹿峠の片山神社では瀬織津姫と習合されており、伊勢神宮内宮別宮荒祭宮では瀬織津姫を天照大神の荒御魂としている為、キャス狐の「金毛白面」と揃えてくる可能性はある。
- 彼女と一人が登場するサクラ迷宮第七階層は原作(パッションリップの階層)と違い、鳥居や日本風建築などが存在する和風なイメージになっている。
- 和装なのである意味当然だが、「はいてない」らしい。……ラニの評価だから、たぶん正しいのだろう。
- 温泉にて彼女の真名を看破した際には、ラニは彼女ノーパン同盟の仲間とされた。
話題まとめ
- 正体について
- 作中において盗賊、鬼、天女……と正体に諸説あるとされているのは時代や地域によってその正体が違うためと思われる。
- 鎌倉時代に成立した『保元物語』では「盗賊・立烏帽子」として伊賀の武士に捕縛されたとある。また『弘長元年公卿勅使記』では立烏帽子の崇敬した神社の神が鈴鹿姫であるともされるが、どちらの資料でも立烏帽子が男女どちらかまで描写されていない。
- 室町時代前半の『太平記』『耕雲紀行』などでは「盗賊・立烏帽子」と「鈴鹿姫」が同一視され坂上田村麻呂の英雄譚に登場して討伐されるが、その時に着ていた立烏帽子を投げたものが鈴鹿山の鏡岩になったとある。室町時代後期になると『鈴鹿の草子』『田村の草子』が登場し16,7歳の「天女・鈴鹿御前」として登場する。これら御伽草子では烏帽子は被らずに玉の簪や十二単など、盗賊としてイメージが薄れている。また大嶽丸を討伐する英雄譚ではあるが、娘をもつ母や田村麻呂への愛などにも焦点が置かれている。
- 一方、江戸時代の東北では熊野詣が盛んであり、旅の宿のある鈴鹿から東北ゆかりの田村麻呂の登場する『鈴鹿の草子』が入り、東北各地の伝承も混じったため『田村三代記』として成立した。『田村三代記』では天竺から日本を転覆させるため伊勢鈴鹿山に来た「第四天魔王の娘・立烏帽子」として登場する。立烏帽子と同格の鬼神である蝦夷の大嶽丸と連合されると大変であると、朝廷は田村利仁を向かわせるものの田村利仁は16,7歳の立烏帽子を討てず、逆に立烏帽子から田村利仁の祖父は星の子供で祖父が龍の交わり生まれたのが利仁の父であり、その父が奥州の鬼である悪玉姫と交わり生まれたのが利仁であると出自を告げられる。立烏帽子は田村三代こそ日本の悪魔を鎮める観音の再来であり、自身も大嶽丸に何度も手紙を無視されたから倒したいが女であるため男がいないと無理である、ならば日本の悪魔を共に倒そうと言い二人は契りを交わす。近江の高丸に常陸鹿島まで逃げられた際は神通力で飛ぶ光輪車で移動し、十二の星を降らせ星の舞をさせ利仁の放った矢を千の矢に変え降らせたなど、その後も大嶽丸討伐まで魔王の娘として大活躍する。
- このように鈴鹿峠の盗賊や鈴鹿山の女神や天女、魔王の娘と様々なのは時代や地域、さらには御伽草子や奥浄瑠璃などの形態の違いにより鈴鹿御前に求められる役割まで違ったためである。
- 三振りの宝剣
- 鈴鹿御前の三振りの宝剣である「大通連」、「小通連」、「顕明連」は御伽草子や奥浄瑠璃などに登場する架空の刀であるため実在はしないが、伝承や写本の違いなどにより表記や由来は様々である。
- 『鈴鹿の草子』『田村の草子』では三振りの宝剣は天竺真方国の阿修羅王が大嶽丸に贈ったものだが、坂上田村麻呂に味方した鈴鹿御前の謀略により大通連と小通連は奪取に成功し坂上田村麻呂を勝利に導いた。しかしもう一振りの顕明連は大嶽丸が天竺の叔父に預けており、その神通力を持って大嶽丸の復活を許してしまう事になる。
- 『田村三代記』では始めから鈴鹿御前が所持していた描写が多く大通連は文殊菩薩の化身(または文殊菩薩の打った智慧の剣)とされ、小通連は普賢菩薩の化身(または普賢菩薩の打った慈悲の剣)とされる。顕明連は近江の湖に棲む蛇の尾より取れた剣とされ、旭日に当てれば三千大千世界を見渡すことができるという。釈迦如来とその二脇侍である文殊菩薩と普賢菩薩が宝剣のモチーフであり、「顕明」や「三千大千世界」など三振りの宝剣に仏教の影響が見受けられる。
- これらの違いは盗賊、第四天魔王の娘、天女と変化していく過程で物語中の鈴鹿御前の役割の変化に併せるように、三振りの宝剣の役割も変っていったものと思われる。もっとも彼女を祀る鈴鹿峠の片山神社には「鈴鹿流薙刀術発祥之地」の碑が建ち、祇園祭の鈴鹿山の御神体も大長刀を手にしていることから、信仰の上では刀剣より薙刀を振るう印象が強く浸透している。
- 坂上田村麻呂との剣合
- 原作の回想同様に鈴鹿御前が坂上田村麻呂と剣合したシーンは、室町時代前期の『太平記』や『酒呑童子絵巻』にも記載されている。『酒呑童子絵巻』では、彼女との剣合の際に坂上田村麻呂が用いた刀が「血吸」であり、剣合の後に伊勢神宮に奉納した血吸が源頼光に渡って酒呑童子を斬ったという、言わば源頼光の振るう刀「童子切安綱」自体の由緒を高めるための脇役エピソードでしかなかった。彼女が坂上田村麻呂と互いに助け合いながら数々の鬼神を退治し英雄としての功績を紡いでいくのは、室町時代後期に『鈴鹿の草子』『田村の草子』など鈴鹿御前と坂上田村麻呂が中心の御伽草子が成立してからになる。