抑止力
抑止力
カウンターガーディアン。
集合無意識によって作られた、世界の安全装置。
人類の持つ破滅回避の祈りである「アラヤ」と、星が思う生命延長の祈りである「ガイア」という、優先順位の違う二種類の抑止力がある。
どちらも現在の世界を延長させることが目的であり、世界を滅ぼす要因が発生した瞬間に出現、その要因を抹消する。カウンターの名の通り、決して自分からは行動できず、起きた現象に対してのみ発動する。その分、抹消すべき対象に合わせて規模を変えて出現し、絶対に勝利できる数値で現れる。
抑止力自体はカタチのない力の渦だが、具現化する際はカタチを伴う。無意識がカタチになったものである為、発生しても誰の目にもとまらず、誰にも意識される事はない。
大抵は「一般人」を後押しするカタチで抑止力は発現する。対象である要因を消し去るだけの力を得るが、取って代わる事のないように倒すため以外の力は持たされず、また当人には自分が抑止力によって後押しされているという自覚はない。そういった、結果的に滅びの要因を排除した人間が人々の目にとまると、「英雄」と呼ばれるわけである。
他に人間の後押しでは手におえない場合は自然現象として発動し、滅びの要因を周囲ごと消し去る。過去には大陸を沈めたこともあるという。
抑止力の排斥例
- 根源への到達
- 全ての魔術師が目指している「根源」への到達は、抑止力が発現する対象となりうる。
人間の手にしてはいけない力、無への回帰への要因であるため。
ただし、過去に根源へ辿り着いた例もあり、根源の到達そのものが対象なのではなく、それを求めるヒトの在り様が対象になっているとも言われる。
人間が生き・発展していくことは「完成することを目指す」行為だが、その反面、本当に完成してしまっては生きる意味がなくなってしまうため、生物が本能で持っている「生きたい」という無意識の欲求が、完成を拒んでもいる、という矛盾を抱えているがゆえ。
- 実際に排斥されかかった人物:荒耶宗蓮
荒耶は抑止力の存在を知っていたため、それを回避するために動いていた。ゆえに「されかかった」であり、最終的に荒耶を倒したのは抑止力ではない。
- 朱い月のブリュンスタッドの策動
- 月世界の王。地球を掌握せんと動いていたが、抑止力の存在を知って方法を変える。
その結果に生まれたのが真祖。
- 人理の破壊
- 過去にさかのぼってのやり直しを行うことは人理の深刻な破壊につながり、歴史が丸ごとひっくり返ってしまうため、抑止力の対象になりうる。
- 「過去を改変する」という行為は非常に難易度が高く、聖杯戦争のような大規模魔術儀式でないと実行不可能なため、「通常なら有り得ないサーヴァントの召喚」という形で介入が行われることが多い。
- 実際に排斥されかかった人物:沙条愛歌
恋人の為に人理ごと歴史をひっくり返す気満々だった為、特に抑止力の対策はしていなかった。
ブリュンヒルデやオジマンディアスといった桁外れに強力なサーヴァントが召喚されるという形で介入が行われたが結局は全て彼女に返り討ちにされ、最終的に彼女を止めたのは別の要因であった。
- 地球的規模での人類の大量殺戮
- 非常にわかりやすい形で「現在の人間の世界」を破壊してしまうため、当然抑止力の対象になる。
- こちらも聖杯クラスの奇跡でないと実行不可能なため、強力なサーヴァントの召喚による介入がメインとなる。
- 第三次聖杯戦争でアインツベルン家がアンリマユを召喚し聖杯が汚染された場合、それ以降の聖杯戦争でアンリマユの受肉が確定的になった際には抑止力が働く。
- ただし『stay night』『Zero』本編のように受肉の確率が五分五分程度の場合は火急の危機ではないとして抑止力は発動しない模様。
- 神霊クラスの降臨
- 上記のアンリマユもそうだが、物理法則が確定した現代で神霊クラスの存在を降臨させることも危険なため抑止力の対象となる。
- 実際に排斥された人物:マックスウェル、「人造の神(ネオ・フューラー)」
『帝都聖杯奇譚』では総統とマックスウェルの目的が「人造の神(ネオ・フューラー)」を復活させる事だったため、マスターを持たないEXランク宝具を持つサーヴァントである坂本龍馬が召喚され、最終的にはキャスター以外の全サーヴァントと聖杯の力により抑止の守護者が直接現れ、キャスターと「人造の神(ネオ・フューラー)」はこれに討たれた。
- 権能の地球上での行使
- 上記の神霊クラスの降臨同様、物理法則の確定した現代で「そうだからそうなる」で力を行使する権能も抑止される。
- ギルガメッシュ曰く、『天地乖離す開闢の星』を本気の全力全開で地球上で行使すると抑止力に目をつけられ、排斥されてしまうとか。
ガイア
星の抑止力、世界の抑止力とも言われる。星の意思の無意識部分であり、言わば本能。世界の存続のためならば人類の破滅も問題としないが、現在は世界の大部分を支配領域とする人の世を崩壊させるほどの事態は星の破滅も招きかねないため、結果的に人も守るために発動することもある。
- 精霊種
- 自然(星)の触覚。自然霊。ガイアの抑止力の一つ。
規模の小さいものは「妖精」と呼ばれ、基本的に人間には知覚できない。人間に知覚できるまで規模が大きくなると、「精霊」と呼ばれる。ただし「妖精」という言葉の使用例は多数あり、レッドキャップやゴブリンといった肉体を得ている幻想種としての妖精や、あるいは人間の空想が生み出してしまった悪魔に近いものもいるため、「妖精」と呼ばれる存在全てが抑止力というわけではない。
精霊規模のものは空想具現化を可能とする。
また、神霊が極度に信仰を失うと神秘の力が弱まり、精霊にまで格落ちすることもあると言う。 - 真祖
- 星が生み出した、人間を律するための霊長の敵対者。受肉した自然霊であり星の代弁者。通常、自然霊の一種として扱われ人間と自然の調停者として人間の無意識からも容認されているが、吸血衝動という欠陥を抱えていたため次第に数を減らしていった。
- ガイアの怪物
- 現在登場しているものはプライミッツ・マーダー。ガイアの抑止力の一つとされるも、詳細は不明。
“霊長の殺人者”であり人類に対する絶対的殺戮権を有するとされる。
現在は死徒二十七祖の第一位として数えられている。
- 救世主
- 星の抑止力により作り出され、英雄と並んで人の世を崩壊から救う者。『空の境界』にて蒼崎橙子が語っているが詳細不明。
- 救世主と言えばセイヴァーなるクラスも存在する、がこれもまた関係性は不明である。
アラヤ
霊長の抑止力、世界の抑止力とも言われる。「人類の無意識下の集合体」「霊長という群体の誰もが持つ統一された意識」「我を取り外してヒトという種の本能にある方向性が収束しカタチになったもの」とされる、霊長の世界の存続を願う願望。アラヤの由来は人の無意識である阿頼耶識(アラヤシキ)から。
人を守るために人を縛る、人間の代表者であり最強の霊長。しかし人間としての感情はなく、時には万人を幸せにする行為にさえも立ちはだかる。
アラヤ側の抑止力によって英雄になった人間は、その死後にアラヤに組み込まれるとも言われる。
尚、近代以降に英雄が存在しないのは、文明の発達により人類が人類自身を簡単に滅ぼせるようになったためである。
例えば、企業の会長が財力を使ってアマゾンの森林の伐採量を増やせば地球は滅亡する。そのようにいつどこでも人類/地球がピンチに陥いる可能性があるため、「世界を救う、なんて程度の事じゃあ現代では英雄とは呼ばれない」という状態となっており、抑止力によって、誰も知らない内に世界を救っている(滅ぼさないように行動する)者は非常に大量に居る。
- 霊長の守護者
- 「人類という種を守る」というアラヤの抑止力の中にあって、英霊がその役目を担っているものを、「守護者」「霊長の守護者」「抑止の守護者」と呼ぶ。ただし、全ての英霊が「守護者」なのではない。名のある英霊は神性が高いなどの理由で、アラヤではなくむしろガイアよりの存在になっている為である。
「守護者」として該当するのは、「英霊を英霊たらしめている信仰心が薄い(つまり知名度の低い)英霊」、あるいは「生前に世界と契約を交わし、死後の自身を売り渡した元人間」である。
アラヤとの契約を交わすには、生きている内に自分の無力さを嘆き自分以上の力を求めること、そして人類の継続に役に立つ者であることが必要。
「人類の自滅」が起きるときに現界し、「その場にいるすべての人間を殺戮しつくす」ことで人類すべての破滅という結果を回避させる最終安全装置。自由意志を持たず、単純な『力』として世界に使役される存在。当該する人物の言葉を借りれば、「体のいい掃除屋」「道具」であるらしい。
なお、英霊であるため条件が合えばサーヴァントとして召喚されることもある。
- 超能力
- 「魔術」という神秘に根ざしたある種の技術ではなく、「混血」のようにヒト以外の魔の力を取り入れた結果でもなく、ヒトがヒトのまま持つ特異能力。本来、人間という生き物を運営するのには含まれない機能。俗に言う超常現象を引き起こす回線。
超能力の回線を持つ者は、息を吸うが如く超常現象を引き起こす。本人たちにとってはそれが「出来て」当たり前のことなので、外部(一般常識)からの指摘で初めて自分が異常なのだと気がつく事になる。
魔術と違い、先天的な資質が不可欠とされ、基本的には「一代限りの突然変異」。ただし、近親婚を繰り返すなどして血脈の中に超能力を留めておこうとする一族等の例外はある。また、別の資質だったものが、後天的に変化して、別の超能力を持つに至る場合もある。
高度なものになると、魔術では再現できない。
一見すると超能力=魔術でできないこと=魔法のように思えてしまうが、例えば直死の魔眼がもたらすのは「死」であり、どれほど特殊な過程を経ようと結果(死)が人の手で実現可能な域であるため、魔法の域には至らない。
これを「魔」に対抗するための人類という種の祈りの結晶、つまりアラヤの抑止力と捕らえる考え方もあるが、真偽は定かではない。
- 超能力の例
- アラヤの怪物
- 『歌月十夜』にてロアに語られる抑止力。守護者のこと考えられるが詳細不明。
メモ
- 抑止力については『空の境界』、霊長の守護者については『Fate/stay night』にて多くが語られている。
- ズェピア・エルトナム・オベローンが第六法に挑み、敗れたとあるが、これも抑止力の邪魔が入ったゆえなのだろうか?
- 黒化した間桐桜は抑止力による排斥対象になりうるものだとされている(ガイアではなくアラヤ。力の源のアヴェンジャーが人類に対する呪いであるため、霊長にとっての脅威)。しかし、「誰にも意識されない」という抑止力の特性上、『stay night』の劇中で実際に抑止力が発現したのか否か、したとして何処の誰を後押ししたのか、は答えの出せない水掛け論の類である、ともされている。
- 『鋼の大地』における星の意志は、星に発生した生命自身が星を滅ぼして自滅しようとするのを、それもまた「いいこと」と捉えて赦している。
- 『MELTY BLOOD Actress Again』では星の死の未来に対しての星の意思としての立場を問われたアルクが
「星の滅びなど、結果的にそうなるだけであろう?我が愛し子たちは浅ましくも懸命に生き延びようとし、結果として滅びた。その徒労を笑えるものか。恨み言はあれ罰は与えぬ。」と答えている。
- 『MELTY BLOOD Actress Again』では星の死の未来に対しての星の意思としての立場を問われたアルクが
- ネコアルク・カオスはドクター・アンバーに対する抑止力であるとか。
- 『月の珊瑚』では、遺伝子操作による優秀種の赤子が生まれた直後に「もういい。そこまでして続けたくない、という人類の総意」によって自ら心肺停止するため、意志の及ばない機械的な内臓を持つ優秀種が作られた。
- 『空の境界』で霊長の抑止力の話を聞いた黒桐幹也が、オルレアンの聖女も何かに後押しされた結果ではないだろうかと連想している。
- オルガマリーの推測によれば、正常な時間軸から切り離されている特異点では抑止力が働かないかもしれないらしい。
- 度々同じガイア寄りの抑止力に分類されるものとして、真祖と神霊の戦闘力の比較等の話題が挙がる。が、前者は人を律する星の代弁者であり分身であり、西暦以後物理法則で安定した地球における触覚。要は物理法則の体現者である。
対して後者は、物理法則が未だ存在せず神秘による権能が支配していた神代における擬神化された自然現象。そもそもの存在の有り様や意義が近いようで異なる。 - 神霊は精霊より格上の、太古より星に居た自然霊の類。真祖は星が自身の意図を人類に伝えるべく、星が新たに生み出した新種の精霊に近い生物。より星に近いのは真祖だが、会社で例えるなら、専務(神霊)と常務になった社長(星)の息子(真祖)の関係、とでもいったところか。
- 身も蓋もなくぶっちゃけてしまうと、世間一般で言われる「ご都合主義」「主人公補正」等と呼ばれるものである。しかし、ただの偶然もTYPE-MOON世界でこうも発動すれば確かに見えざる何かの力と定義付けてもよいものと言いたくなろう。
- ギルガメッシュの幕間の物語「天の理」によると、世界を滅ぼす害悪を事前に抹殺する世界の抑止力「セブンスガーディアン」なるものが存在する。