人智統合真国 シン

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人智統合真国 シン
副題 紅の月下美人
異聞深度 E
年代 BC.0210
シナリオ担当 虚淵玄

概要

Lostbelt No.3。芥ヒナコの担当地区である中国異聞帯。他の異聞帯と異なり、領域拡大に適さない。

異聞帯について一言でまとめるなら、「秦の始皇帝が不死を手に入れ、世界を統一した世界」

歴史

本来の歴史では始皇帝は晩年は不死の探求に手を出し、不完全ながらも成し遂げていたが荊軻によって頓挫し、そのまま寿命を迎えたのだが、異聞帯では神仙の技術によって不死の肉体を手に入れ、そのまま君臨し続けた。
神仙の技術の応用によって高度に発達した秦は後に他国の侵略に乗り出し、インド、エジプト、ローマと次々に陥落させていった。
その後の経過の詳細は不明だが、800年ほど前に阿茲特克アステカ共和国と北極圏で決戦を行い勝利したのが決定的な天下分け目となり、最後まで残った哈布斯堡ハプスブルグ帝国[注 1]も経済封鎖で陥落し、秦帝国が地球全土を統一した[出 1]
それ以降は宇宙への進出などは考えず、宇宙から「何か」が来た際の防衛設備を地球周辺に建築したのみで、基本的には下記のような住民への政策のみに注力している。

特徴

下記のように「すべてが始皇帝に独占されている」というのが最大の特徴。
住民は技術や文化を持っていないが必要なものは始皇帝から配給されており、個々人が始皇帝と直接会話することも可能。生活のすべてを保証されている代わりに目に見えない形で寿命も管理されており、老衰の兆候がある場合には「下賜」に含まれる薬物の効果で安楽死できるようになっている。
そのためか、住民が自分たちで考えられるようになり思想を形成する「儒」というものを始皇帝は徹底的に忌み嫌っており、「儒」の兆候が見られた村や地区は始皇帝の手によって丸ごと消去されることもある。
また、この世界では過去に偉業を為した人物はコールドスリープされており、有事の際には「凍眠英雄」として解凍され、解決の任を受ける。始皇帝によってすべてが満たされているという異聞帯の特性とこれが合わさることで人々の間には「英雄への祈り」という概念そのものが存在しておらず、「英霊の座」へのアクセスができなくなっている。

技術

ロシアや北欧と比べると技術レベルは非常に高いが、その在り方は非常に歪である。
大半の民衆は原始農耕社会と大して変わらない生活をしているが、神仙のサイバネティクス技術を応用した生化学によって品種改良された麦は「撒けば勝手に生えてくる」レベルであり、それだけ摂取していても栄養バランスは崩れないし、病気になることもないという常軌を逸したもの。
基本的に技術のすべては始皇帝とその周辺が独占している状態であり、機械工学も宇宙に長城を建築したり傀儡兵を量産したり手に入れたばかりのシャドウボーダーを解析して「多多益善号」の量産体制を整えたように技術レベルは非常に高いものの、「大衆に普及させる」という目的がないために小型化が進んでおらず、通信技術に至っては始皇帝がメッセージを送ったり拾ったりする以外の用途がないため、まったく発展していない。
エネルギーについても上記の麦を利用したバイオエタノールを活用しているが、当然ながらそれを使った発電方法は火力。基本的にエネルギーを使用するのは始皇帝のみなので、エネルギー効率は完全に度外視されているがそれ故に環境問題も無視できるレベルに収まっている。

文化

技術同様、こちらも非常に歪。
国土のほぼすべてを占める農村には一般的な娯楽といえるものは皆無で、始皇帝から祝い事で配布される「下賜」と呼称される薬物以外には存在しておらず、それらも汎人類史でいうところの酒やタバコ程度のもの。民衆は基本的に自分の村から生涯出ることはなく、子供が好奇心から外に出ることも非常にまれ。
始皇帝が民衆が余計な苦しみを味わわないようにするために、高度な文化活動を「儒」と呼んで忌み嫌っており、文字・詩・歌といったものすら一般には存在していない。異聞帯の住民が「少年」「衛士長」などと呼ばれていたことから考えると、「名前」という概念が存在していない可能性すらある。
子供は農村全体で育てるために親子関係や家族関係もまったく存在せず、子供から見ても誰が親であるのか知らないままである。
始皇帝とそのお膝元である咸陽には「芸術」と呼べるものが存在しており、各地の農村で見込まれた人間は咸陽に召し出され、芸術活動をすることが許されている。だが、そのような経緯で芸術活動をしているために内容は(始皇帝にとっては不本意だが)「始皇帝を褒め称える」もののみで、ダ・ヴィンチちゃんからは「こんなの芸術じゃない」と断言されてしまっている。
さらに、始皇帝は機械の肉体になっているために食物を必要とせず、それ以外の人間は上記の麦を食べれば事足りるため、「食文化」については概念ごと消失している。

異聞帯の人物

芥ヒナコ
この異聞帯を担当するクリプター
蘭陵王
芥ヒナコのサーヴァント。
始皇帝
中国異聞帯の皇帝であり、異聞帯の王。肉体を機械化させる技術を獲得したことによって、不老不死を成し遂げた。
芥ヒナコが溜息を吐き、ポーカーフェイスを保てなくなるほどの野放図か剛胆な英傑。スカサハ=スカディからは論外と言われている。
会稽零式
始皇帝の配下。
傀儡兵の原型となった人造人間。
衛士長
始皇帝に仕える親衛隊のリーダー。
仙道によってその歳は百を越えている。
秦良玉
始皇帝の配下。凍眠英雄の一人。
反乱を討伐したことで名を上げた。
韓信
始皇帝の配下。凍眠英雄の一人。
国士無双と謳われる戦争狂の軍師。

メモ

  • この世界が剪定事象で存在を許されなかった理由は始皇帝の世界統一後に宇宙開発等も行わず、上記の政策で100年後でも決して変わらない平穏のみが続く変化のない世界になったことが原因だと思われる。先の異聞帯である『永久凍土帝国 アナスタシア』や『無間氷焔世紀 ゲッテルデメルング』は先に進むことが出来ない状況下に置かれ、剪定に追いやられてしまった一種のディストピア寄りの世界だったのに対して、中国異聞帯は少なくとも平等で平穏な世界が保証され続けるというユートピア寄りの世界に至ったためである事が話題となった。
    • 後に同じ様に安定によって進化も進展もないユートピア寄りの異聞帯として『星間都市山脈 オリュンポス』と『黄金樹海紀行 ナウイ・ミクトラン』が登場。
      • 『星間都市山脈 オリュンポス』は人々は神々に愛されて高度な技術と安定した幸福な生活を当たり前のように享受する世界であり、中国異聞帯とは絶対者(達)による一方的な恒久平和の実現という共通点がある。
      • 『黄金樹海紀行 ナウイ・ミクトラン』はざっくりと纏めると、人類に該当する霊長類「ディノス」達が知性体として完成され過ぎた故に変化の必要性がなくなった世界であり、一部のプレイヤーからも対比として話題に挙げられている。
      • ただ、絶対の支配者である始皇帝が不老不死を実現・不滅の存在となったために平穏な世界が未来永劫続く中国異聞帯とは、どちらも最もかつ決定的に異なる点を持っている。オリュンポスの支配者であるゼウスは機神の体を維持しているものの不滅の存在ではなく、寿命を削りながらオリュンポスの運営と維持の一切を掌握している上に宇宙艦隊としての原初の役割・本来の目的を持ちいずれ民を捨て地球を離れるため、そしてミクトランはマィヤによって生み出された人工太陽が既に臨海間近になっている上に遅かれ早かれ目覚める星喰らいが存在するために、最終的に滅亡が確定している事が共通している。

脚注

注釈

  1. 原文ママ。ハプスブルの誤字か?

出典

  1. 『Fate/Grand Order』第2部3章5節「白杆の女傑、国士無双」

リンク